やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。












   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町 誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジャー・ウォブルさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪


2020年04月26日

ツノナシオニ 第5回 別離


ツノナシオニ 第5回 別離


 僕は、やっと帽子を被り直したお父さんの方を向いて、何か言おうとしたのだけれど、どうしてもかける言葉が見つからなくって、息を吸い込んだまま、金魚みたいに口をパクパクさせていた。
 お父さんも、僕やクラスのみんなにかける言葉をさがしていたんだろうけど、結局「先生、クラスの皆さん。息子を、よろしくお願いします」とだけ言って、よせばいいのに、ていねいに帽子までとってお辞儀をしたものだから、クラスのみんなは、またキャーキャー言い出してしまった。
 先生は、なにも応えなかった。黒板の前でクラスのみんなを庇うようにして、両手を広げたままの先生は、なんにも応えられなかった。
 お父さんは、僕に向かって
「太郎、じゃあ、元気でな」
 と言って、悲しそうに笑った。お父さんの赤い顔がもっと赤くなって、涙をこらえているのが僕にも分かった。
 お父さんは、やさしい分だけ涙もろいんだ。僕も鼻の奥がじーんとしてきて、みるみるぼくの眼に、涙が溢れてきた。僕はお父さんの子だから、泣き虫なんだ。
 僕らは、オニだけど、泣き虫の親子なんだ。オニが怖いなんて、人間が勝手に作り上げた嘘さ。僕の顎の先から落ちていく雨だれみたいな涙が、僕の足元にいびつな丸をいくつもいくつも作っている。
 お父さんは、入ってきた時と同じように、頭を下げてくぐるようにして廊下に出て行った。ピタンパタンと大きなスリッパの音が、どんどん教室から遠ざかっていく。
「お・・・」
 スリッパの音が小さくなって消えてしまっても、クラスは静まり返ったままだった。僕は、みんなが僕を食い入るように見つめているのを背中で感じていた。
「お父さん・・・」
 僕は、まだお父さんと話しもしていない。せっかく会えたというのに、あの大きな手で頭もなでてもらってさえいないんだ。
 お父さんと会って話したいという気持ちと、もうこんなクラスに、みんなの前にいたくないという気持ちが、僕の背中をポオンと押した。
 僕は、力いっぱい振り返った。クラスのみんながビクンと反応して後退りをしたけれど、僕は気にも留めずに、お父さんの歩いていった方向に一目散に駆け出していった。
 お父さん。お父さん。お父さん。
 待ってよ、お父さん。

第6回「抱擁」へつづく



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posted by maruzoh at 18:17| Comment(0) | ◆ツノナシオニ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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