やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。












   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町 誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジャー・ウォブルさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪


2020年01月19日

ユメミダケ心中 第12回 男の承の参


ユメミダケ心中 第12回 男の承の参


 征一が、ふうっと息を継いだ。
 その気体は、科学的に言えばただの二酸化炭素の塊なのだが、ずっと胸の中にわだかまっていた何かを、意志の力で押し出したかのようにも見え、さっきまでつき続けていた通り一遍な溜息とは、明らかに異質なものであった。
「全て、うん、全部がお見通し、だったんですね」
 癖なのか征一は、またぽりぽりと頭を掻きながら言った。
 恭子だけでなく、征一もまた、なぜか知らぬが流暢に話せていた。本人にも不思議だった。
「確かに、僕はあなたを欺いていました。貴方の言うとおりです。
 最初は死ぬ気なんか、全然ありませんでした。利用してたと言うのが正しいかもしれません。
 実は、母が死に掛けていたんです。で、嫁を連れて来いと懇願されたんですが・・、いえ、ははは、そんなこと言い訳にもなりませんよね。
 でも、その母が急に死んでしまって、一人きりになってしまって。その時、死んでもいいかなって心が揺らいで、ここまで来たのは、嘘じゃありません。
 ええ、本気でした。なぜなのか、自分でもわからないんですけどね。
 でも、貴方のさっきの言葉が・・、貴方、言いましたよね、さっき。保険をかけてた、そう、嫌われるように仕向けていたって。
 どきんとしました。僕も、おんなじ、だったかもしれないと思ったんです」
 恭子が、少しだけ眼を大きく見開いた。
 征一は、また、どきりとした。
 それまで三白眼だとばかり思っていたけれど、それは上目遣いにする恭子の癖がそう見せたのであって、意外と、黒目が大きいんだなぁ、と征一は思った。
「僕は今まで、とにかく、周囲との係わり合いを拒んできました。孤高の存在を気取っていました。
 自分は変わり者だと、周囲と価値観の相容れない存在だと、周りもそう思っていたし、僕もそう思っていました。
 中年オタク、それも毒キノコオタクですからね。でも、それは違うんです。嘘なんです。
 確かに毒キノコは好きです。でも、それが何物にも優先する訳ではありません。
 毒キノコというのは、僕が僕であるためのアイテムに過ぎないんです。毒キノコ愛好家、毒キノコオタク、毒キノコマニア、毒キノコフェチ。
 それは、そんな風な存在になれと、僕が決めて、僕自身に言い聞かせてきただけなんです。
 なぜかは、簡単です。僕の存在理由なんて、そんなものしかなかったんです。共通の土俵では、怖くって、勝負なんかできないんです、僕は。
 それでも勝ちたいって思ってるなんて、貴方の不戦敗より、よっぽど未練がましくって卑怯なんですよ」
 最後はフェードアウトするようにそう吐き捨てた征一は、グラスに少しだけ残ったビールを飲み干すと、膨らんだ上着のポケットに手を突っ込んだ。
 掴み出したのは、毒キノコ、ユメミダケであった。
 征一は無造作にそれを4本七輪の網の上に放り出して、恭子とユメミダケを交互に見つめると、ごくりと唾を飲み込んだ。
 真っ赤になった練炭が、チリチリとユメミダケを責め続けている。

第13回「男の転の壱」へつづく



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posted by maruzoh at 18:21| Comment(0) | ◆ユメミダケ心中 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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