やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。












   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町 誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジャー・ウォブルさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪


2019年09月29日

お取り寄せ救世主 第31回 物憂げな眼ざめ


31 物憂げな眼ざめ


 9時の始業に対して、起床が毎朝5時15分というのは、坂戸から職場のある川越までの通勤時間がドア・トゥー・ドアで30分程度の私にとって、あまりにも早過ぎると誰もが思うだろう。実際のところ私自身は、8時からの朝ドラを見終わってからでも、時間的には十分間に合うはずなのであるから、妻がダイエットの一環として毎朝欠かさずにラジオ体操や乾布摩擦、または、ウォーキングやランニング等をしており、夫唱婦随、私もそれに付き添っているというのであれば、「なるほど」と得心もいくのであろうが、実は、そうではない。いや、むしろ正反対、逆である。
 妻が目覚ましをかけることなく、毎朝、この時間に目を覚ますのは、いや、目覚めてしまうと言うのが正確であるのだが、実は、驚くべきことに空腹に耐えられぬのである。
 で、その影響で妻のセットする炊飯器のタイマーの時間が、結婚当初の7時から、2年の間で5分単位で徐々に早くなっているのだ。今日現在、5時15分。このままでは、4時台に突入するのも時間の問題である。
 そして空腹の妻は、誘蛾灯の蛾の如く飯の甘い匂いに誘われて、炊きあがり10分前には炊飯器の前に正座にて待機し、炊きあがりと同時に丼に山盛り2杯超の朝食を始めるのだ。しかも、放っておけば、3合全部食べてしまうものだから、自身の朝食の確保の為に、私もこの時間に起きねばならぬのである。
 しかし飯山君は、余程疲れていたのだろう。居間のソファーベッドに横たわった彼は、そんなキッチンでの白米の争奪戦にも微動だにせず、静かな寝息を立て続けていた。
「おい。飯山君の分、ちゃんと残しておくんだぞ。茶碗、2杯分くらいは」
「わかってるわよ」
 我が家にお客が泊まったなんてのは、そう言えば新婚時代以来だから、ここ最近のいつもの調子の食事に付き合わせてしまっていたら、飯山君は、さぞかし度胆を抜かれただろう。ぐっすり眠ってくれて、助かった。
 しかし、飯山君は、朝ドラが終わって私がネクタイを締め始めても、まだ、ひたすら眠ったたままで、ぴくりともしない。それは玄関に行きかけた私が、心配になって、息をしているか確認に行ったほどに、眠りこけていたのだった。
 私は後ろ髪をひかれる思いで、職場に向かったのだが、わがまま一辺倒で、時として常識というものが欠落しがちな妻には、これだけは守れという言づけをしておいた。
「飯山君に目玉焼きとか、簡単でいいから何か作ってあげるんだよ。米だけあればフリカケと梅干だけでいいっていうのは、お前ぐらいなんだからな」
「うん、わかってる」
「それと、いいか?軟弱そうに見えても飯山君とて一匹のオスだ。何かの間違いがないとは限らないんだから、気をつけるんだぞ。も、もし、万が一にでも、そんなことになったら・・・」
 妻は、テーブルを人差し指1本でゆあんとさせて言った。
「心配性ねえ、大丈夫よ」
 私は、ゆよんと戻るテーブルを目で追って答えた。
「まあ、それもそうだな。それにお前なら、力づくで、何とかなるんだろう。体重だけなら、倍近くあるし。い、いや、俺はそんなことを言おうとした訳じゃないんだ。そうそう、飯山君は、例の電話騒動で相当疲れていたんだ、精神的にも、肉体的にも。そこへ持ってきて俺たちが、興味本位と言うか、欲得づくで、救世主だ何だって彼を焚きつけて、その気にさせて、挙句、触れられたくない過去にまで立ち入って、ああだこうだと無責任なことを言ってしまった訳だ。可哀想なことをしてしまった、と思う。だから、彼が目覚めてから、いくら夢みたいな話をしたとしても、決して頭ごなしに否定したり、笑っちゃいけないよ。優しく、受け止めてあげようじゃないか」
 私を見つめていた妻が、珍しく、殊勝に頷いた。昨晩のことを、妻なりに反省しているのだろう。私は、こんな妻が大好きだ。
「じゃあ、行ってくるからね。遅くとも9時半には起こすんだぞ。で、11時にはここを出さなくちゃだめだ。飯山君、練馬で1時からバイトって言ってたから。じゃ、行くよ、頼んだぞ」
「行ってらっしゃい」
 妻の声は、優しかったけれど、少しだけ、不安を宿しているような気がした。真相を知ってしまった妻は、飯山君に対して、果たしてうまい具合に対応ができるんだろうか。
 玄関のドアがコトリと閉まって、私は職場に行く為、昨日サンダル履きで駆け下りたあの階段に向かったのだった。

第32回「大団円 神様は本当にいるのかもしれない」へつづく



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posted by maruzoh at 17:08| Comment(0) | ◆お取り寄せ救世主 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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