やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。












   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町 誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジャー・ウォブルさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪


2019年06月02日

お取り寄せ救世主 第15回 救世主当選確実マーク点灯


15 救世主当選確実マーク点灯


 目の前に起きている事象に心底夢中になり、興奮の極みに達するとなぜか私の妻は、一番身近な人物の背中を叩くのである。通常の女性なら「あらぁ、いやねぇ」とか言いながら色気を孕んで、男性ならば「こいつぅ、やったなぁ」とか逞しさを醸し出すその仕草も、妻にかかってしまうと、最早、危険極まりない悪魔の所業と化している。
 バンバンバンバンという重低音の音源に目を移せば、キューセーシュの飯山君のか細い背中をその丸太の如き太い腕で、あたかも競輪のラスト1周を告げる銅鑼、ジャンよろしく、真っ赤な顔に白眼で狂ったように、まさに一心不乱に連打している。その姿は、申し訳ないが我が妻ながら、とても常人とは思うことが出来ない。
 一方、何の予備知識も無いままいきなり背中を叩かれ、一向に止む気配のないまま叩かれ続ける飯山くんは、誠、いい迷惑である。なんと彼は、むせにむせ返って咳が止まらず喉をヒューヒュー言わせて、半ば呼吸困難に陥り真っ青な顔をしているではないか。下手をすればこれが今後の健康被害に及びかねない恐れもあり、ここは私が、夫と言う立場上、早急に連打を静止させねばなるまい。私は、叫んだ。
「た、民子、止めろ!お前、飯山君を見ろよ!ぐ、ぐったりしてきてるじゃないか・・・」
 口元だけが馬鹿笑いをして、白目を吊り上げた、まるで丸々と太った九尾の狐のような狂気の表情の妻が、私の絶叫に、ふと、我に返った。
 真っ赤な妻は振り上げた手を虚空で静止させて、その手と、キューセーシュの飯山君の真っ青な顔を「大切なメシヤを誰がこんなにしたの?まさか、あたしぃ?」という具合に、さも驚いたようにして、交互に見比べた。
 しかし、この顔色の、赤と青のコントラストの妙と言ったら・・・
「げほ・・・、けほほ・・、けほけほ・・・」
 私は気付けにと、グラスに満たした冷たい水を2人に薦めた。それを一気に飲み干した妻は、落ち着きを取り戻したものの、被害者の飯山君は、暫く、あのテーブルに突っ伏したまま、ゆあーん、ゆよーんという揺れにまかせたまま起き上がれない。
「ごめんね、メシヤマちゃん。あたし、夢中になると、どうも周りが見えなくなっちゃうみたい。相当叩いちゃったみたいだけど、大丈夫?」
「はひ・・・」
 思いがけずにやさしそうな言葉にキューセーシュの飯山君は、やや赤みを取り戻し青から紫へと変色した顔を上げたが、メシヤマちゃんって、なによ、それ?さっきまでアンタ呼ばわりされていたはずの飯山君は、ついに妻の中での救世主当選確実マークの点灯により、どうやら対応並びに処遇が、三段跳びに改善されたようである。
 しかし、だからと言って知り合って間もない、しかも、恐れ多くも救世主として崇め奉ろうとする相手に対して、いきなりあだ名にちゃん付けという、この図々しさは、如何なものか。馴れ馴れしいにもほどがあるだろう。
 そんな私の思いは、当然妻には伝わらず、妻は相変わらずの独善的かつ自己中心的な考えを、キューセーシュの飯山君に説き始めた。
「メシヤマちゃんもさあ、今はまだ、なり立てほやほやの救世主な訳じゃない?だから、当然、教義だとかなんてまだ無いわよね。で、やっぱり必要なのは、奇跡だと思うのよね、奇跡。この奇跡でね、がばっと世間の耳目を集めるわけよ。ねえ、わかる?ほら、なんてったっけ?40人の盗賊みたいな名前の、アフロの人。インドかどっかの、ほら、アリババ・・・、じゃなくて・・・」
「インドの聖者、サティヤ・サイ・ババだろ?」
 私は、敢えてうんざりしたように言ったが、妻は相変わらず知らん顔だ。しかし、いくらなんでもアリババとサイ・ババを一緒にしたら、罰が当たりそうだ。
「そうそう、サイババよ、サイババ。手から灰とか出したりすんでしょ?あの人」
「は、はあ。灰、ですか?でも、僕、今までそんなの出たことありません・・・」
 妻がにやりと笑う。
「灰なんて出したところで2番煎じ、駄目よ。それに、灰なんて、のべつ出てきたところで1円にもなりゃしないわよ。もう、部屋の掃除が大変になるのが関の山よ。ちっとも目立ちゃしないし、時代に即してないわ。今風のやり方、しなくっちゃね。現代人は、関心があるものへの具体的なご利益、これが1番なの。特に女性は、ね。で、そこでね、このあたしがね、例えば、ダイエットを始めとして、金運、探し物なんかのモニター兼広告塔になる訳よ。で、あのテレビショッピングの番組みたいに使用前、使用後とかしてさ、
世間にアプローチするって、このアイデア、どう?」
 随分と横幅と重量のある広告塔があったものだ。基礎工事が、とてつもなくたいへんだ。

第16回「奇跡モニター作戦」へつづく



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posted by maruzoh at 17:41| Comment(0) | ◆お取り寄せ救世主 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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