やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。












   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町 誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジャー・ウォブルさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪


2019年05月26日

お取り寄せ救世主 第14回 メシヤ、その名は飯山


14 メシヤ、その名は飯山


 これは、キューセーシュの青年イヤミ君の失策である。明らかに勇み足である。
 世間一般に褒められて気分が悪いなどと言う人は、余程のへそ曲がり以外、そうはいないと思うのではあるが、それが全く身に覚えのない話となれば、話は別である。
 この場面、彼の場合においては、自らを救世主であると認めることによって、当人が極めて迷惑している赤の他人からの電話、つまりは、悩み事の相談、依頼、陳述等に対処し、解決をせねばならぬことになる訳である。
 しかも、その最大の迷惑である難敵は、自分を脅迫まがいに呼びつけた上に、傲慢、不遜な態度を取り続ける目の前の妻なのである。そんな輩に「あなたは、救世主でしょ」と詰め寄られて、「はい、そうです」などと喜んで言ってしまえば、当然の如く、信心したその見返り、つまりは、物理的なご利益を求められるのは必然であり、ご利益はあって当たり前、もし、万が一にも無いようであれば、こんなに頑張りました、努力しましたなどという、そこに至る経過や過程などは、一切、全く無視された上、してもいない約束を、さも既成事実のように言われた上、責を問われ、挙句の果てには、騙されただの、乗せられたなどと喚き散らされて、こんなに被害を受けただとかの損害賠償であるとか、これほどの精神的な苦痛を受けただのの慰謝料であるとか、訳の分からぬ請求を受けるのがオチなのである。悲しいが、これが世の常だ。
 それを彼は、あまりにも軽率に受け入れてしまった。若い、経験が無いと言えばそれまでだが、妻の誘導というにはあまりにも強引な口車という車に無理やり、押し込まれるようにして乗車させられてしまい、後は、ブレーキの壊れた口車に乗ったまま暴走し、奈落に通ずる急坂を転がり落ちてしまうのだろうか。
 いや駄目だ。何の罪も無い若者をこのまま見殺しにすることなど、この私には、決して出来ない。このイヤミ似の前途ある若者を何としてでも妻から守らなければ。そうだ、私はこの身と引き換えにも、こいつを守り通すんだ。などと、安っぽい正義感に、一人悦に入っていた私であったが、既にその頃彼は、妻の一方的な盛り上がりに煽られて、遅ればせながら2人で自己紹介なんかをし合っていた。
「あんたの名前、聞いてなかったわね。でも、人の名前聞くには、私から言わなくっちゃね。電話で、苗字は言ったわよね、そう早坂。でね、名前は、民子っていうのよ。民の子、つまり、民衆の子ね。言うなれば、信者代表って感じよね〜っ。きゃはははは」
 妻が欲しい物をねだる時によく使う、あの無理矢理カワイ子ぶった、彼女には、実に不似合いな笑いであった。
 この笑いにどう対処していいのか分からないのだろう、彼の顔の下半分、主に口の周辺は笑っているものの、上半分、特に眉根の辺りには、かなりの緊張感を浮かべつつ、額の汗を拭いながらもじもじしていたが、やがて意を決したように、彼も名を名乗った。
「あ、あのっ、飯山って言います。飯山浩二。あの、フリーター、24歳です」
「飯山浩二君。いい名前じゃな〜い。イイヤマ、コウジね。あれ?なんかそんな芸能人、いなかったかしら?」
「は、はあ?」
「ほら、欽ちゃん劇団に。ええと、ナニヤマコウジだっけ?」
 余りにもくだらない話なのだが、欽ちゃん劇団さえ知っていそうもない飯山君に変わって、ここはひとつ私が答えることにした。
「西山、西山浩司。イモ欽トリオのワル男くんだよ」
「そうそう、西山よ。ワル男くんよねぇ。そう言えばあの3人、最近見ないわねえ」
「は、はあ・・・」
 間もなく深夜に及ばんとしていながら、全く馬鹿馬鹿しいとしか言い様の無い極めて無意味な会話を続ける2人だったのだが、この阿保らしい会話がまさか、こんな展開に発展しようとは、この時点では、全く私の考えの及ぶ所ではなかった。
「じゃあ、あんたさ、子どもの頃とか、ワル男なんてあだ名、つけられたんじゃない?」
「い、いや、あの、僕、真面目で大人しい子だったんで、とてもワル男だなんて」
「ふ〜ん。確かに、ワル男って感じじゃないわよね。じゃあ、イヤミ・・・、い、いえ、なんでもないわ、こっちの話よ。じ、じゃあ、なんて、呼ばれてたの?コーちゃんとか?」
「いえ、コーちゃんとは。でも、中学くらいから苗字が飯山なんで、飯をメシって読まれて、メシヤマ、なんて言われてましたね」
「ふ〜ん、イイヤマで、メシヤマね。ふ〜ん?メシヤマ、メシヤ、マ?メシヤ?マ。メシヤ!マ!ええっ?メ、メシヤァ?まあっ!メシヤ〜ッ?メシヤなの〜ッ?」
「・・・・・」
「メシヤ、メシヤ、メシヤ、メシヤ〜ッ!あんた、マジ?マジ、メシヤよぉ!メッ、シッ、ヤッ!ちょっと待ってよ、あんた気は確かって、それは、あんたが言う台詞よね、このあたしに。ヒュウ〜ッ!メシヤ、ブラボーッ!」
バンバンバンバンバン・・・
「ゲゲ、ゲホホ、ゲホ、ゲホホホホホホ・・・」
 キューセーシュの飯山君は、興奮して茹蛸のように真っ赤になった妻に、咳が止まらなくなる位まで背中を力任せにバンバンバンバンバンと、まさに怒涛の如く、太鼓の乱れ打ちの如く叩かれて、ただ、ひたすらむせて、悶絶するのであった。

第15回「救世主当選確実マーク点灯」へつづく



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posted by maruzoh at 21:40| Comment(0) | ◆お取り寄せ救世主 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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