やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。












   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町 誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジャー・ウォブルさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪


2019年04月07日

お取り寄せ救世主 第3回 魚眼レンズ越しのイヤミ


3.魚眼レンズ越しのイヤミ


 埼玉県、東武東上線坂戸駅から徒歩10分ちょっと。築18年、家賃7万6千円の2DK賃貸マンション、その302号室で、もう1度「ピィン ポォーン」と呼び鈴が、いつもよりおよそ3割り増し程度の荘厳さで鳴り響く。
「お、おい。また、ピィンポォーンって・・・」
「神様、来たんじゃないの?そうよ。 きっとそうに違いないわ」
「だって、もう10時を回ってるんだぞ。常識が無いにも、程があるだろ」
 そう、もう、かなり遅いのである。夫婦間の不毛な議論で晩飯の時間が長引いたこともあり、ダイニングキッチンの時計の針は、既に10時12分を指していた。アポなしの訪問、しかもそれが初対面だったとするならば、非常識この上ない時間帯と言わざるを得まい。
「でもね、きっと神様には、下世話な人間界のルールなんて、関係ないのよ。人間じゃないんだもの。そうよ、そうだわよっ。あたし、完全にわかったわ。あんたが言う通り、初対面でこんな時間に尋ねてくる、そんな非常識な人間なんて、まずいないわよ。でも、現実には、何者かが尋ねてきて、ピンポンしてる。じゃあ、ドアの向こうの人間じゃない生物は、何なの?野良犬、野良猫じゃないのは当たり前、でも、野良アライグマ、野良ハクビシン、ましてや野良ミシシッピーアカミミガメでもないわ。と、なれば、これはいったい誰よ?そう、神様よ、神様に違いないわ」
 つまり、こういう理屈なのである。こんな非常識な人間はいない=人間ではない何者か=神様。この実に妻らしい、自分勝手で短絡で飛躍しまくった三段論法は、ある意味、私の頭の芯を無性に揺さぶり、感動させた。私は、この螺子の飛んだような妻を心の底から愛しく思い、それと同時に、自分は彼女のブレーキ役たり得るべく、努めて冷静にならねばと、そう心に誓った。
「しかしだな、非常識極まりない人間かもしれないよ。もし、これが、神様で無く人間だったとしたら、犯罪を犯したり、人を騙したりするような輩かもしれんぞ。最近、またオレオレ詐欺とか、流行ってるんだからさ」
「何言ってるのよ。直接家までやってきて、ピンポンするオレオレ詐欺なんて、そんなの1度だって聞いたこと無いわよ。でも、あんたの言ってることも理解できない訳じゃないわ。あたしは、この通りか弱い女性だし、危険すぎるわ。あんた、ちょっと見てきてよ」
 妻は、でんと座って腰から下は全く動く気配さえなく、茶を啜ったまま、顎を玄関の方に杓り上げて見せた。
 わかってる。面倒なこと、と言うより、3度の飯の支度、片付け以外の面倒なことは、一事が万事、何から何まで、全てが、私の担当なんだ。
 私は、湯飲みを置いて席を立つと、ダイニングから玄関に続く狭くて短い廊下を妻の手前、無表情を気取って歩いていったのだが、その実、内心は、かなりの不安と動揺でゆりかごの様に揺れていた。
 妻の夢を壊したくなかったので、敢えて言わないでいたが、不法投函のチラシで救世主でございなんて言ってる輩は、どうせ、心霊商法のインチキ営業マンか、カルト教団の勧誘に相場は決まっている。チェーンは絶対開けずに、ちょっとでも怪しければ110番。質問なんてもっての外。興味を持った風に見せかけてもいけない。そういった意味では、妻が自ら玄関に行かなくて助かった。この場は、妻のものぐさに感謝しないと。
 さて、私はまず、玄関のドアに付いた丸い覗き穴から、ドアの向こう側の人物を覗くことにした。
「?」
 確かに妻が言った通り、
犬、猫、アライグマ、ハクビシン、ミシシッピーアカミミガメのいずれでもなく、私が想像した霊感商法の営業マンでもなさそうだった。
 そこにいたのは、Tシャツ姿の細身で長髪の男。覗き穴の魚眼レンズ越しに見ると、誰もが間抜け面に見えるものだが、この男の精彩を欠いた容貌というのは、どうだろう。
 日本人には間違いないのだが、しかし、見様によっては、まあ、イエス・キリストっぽい感じにも見えないこともない。
 でも、どこかで、会った気が・・・。何処でだろう?いつだろう?う〜ん、思い出せない。
「・・・・・・・・・」
 あっ、そうだ!会ったんじゃない、読んだんだ。漫画の登場人物だよ。イヤミだよ、イヤミっ。故赤塚不二夫先生のマンガで「シェー」ってやる、あのイヤミに似ているんだ。
 覇気のないオタク系の引っ込み思案なイエス・キリストみたいなイヤミが、今、ウチの玄関の向こうに、ただぼーっと立っている。

第4回「見た目は、とても大事」へつづく



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posted by maruzoh at 08:11| Comment(0) | ◆お取り寄せ救世主 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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