やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。












   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町 誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジャー・ウォブルさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪


2019年03月31日

お取り寄せ救世主 第1回 白米を愛する妻


1.白米を愛する妻


「そこいらにいくらでもある一山いくらのダイエットなんかと、一緒になんかしないでよねっ」
 食事中である。
 妻が口を尖らせて、飯粒を機関銃のように噴き出しながら、いつも通り自説を、一切曲げようとしないで、捲し立てる。聴く耳も、一切持たない。
 で、あるからして、当然議論にもならず、私は、ただただ、食卓に飯粒がどんどん降り積もっていくのが嫌で、もう絶えられず、「わかったよ」などと言ってしまうものだから、いつもの如く妻は、勝ち誇ったように、にやりと笑って、卓上及び口の周りに付いた飯粒を意にも介さず、再びどんぶり飯を掻き込み始めるのである。
 しかし、妻は、本当に飯をよく喰らう。米自体が、白米そのものが好きなのである。どんぶり鉢に山盛り2杯超。毎回、3度3度の食事ごとに私の3倍近くは、食べているはずである。呆れるほど、喰らう。
 米さえあればおかずに拘りはないらしく、フリカケ、焼き海苔、漬物、佃煮、生卵、梅干、おかか、シラス、塩辛等が飯のアテとして食卓に並ぶ。
 しかし、基本的に白米自体の味を損ねるようなピラフ、炒飯、カレーライス、カツ丼、親子丼、牛丼、赤飯、炊き込みご飯、おじや、ハッシュドビーフ等は、あまり好きではないようだ。
 しかるに、妻は、ぶくぶくと太っている。実に、肥えている。デブである。
 私たちは、結婚してまだ2年弱の新婚と言っても差し支えの無い時期の夫婦なのだが、既に眼前の妻には、婚前の面影は、微塵も無い。「嗚呼、ぼろを出さずに上手い具合に結婚できたから、これからは、腰を据えて、せいせいと白米を喰いまくるぞ」という具合に、新婚旅行から帰った途端に妻は、豹変し、もりもり食い始めた。
 新婚旅行はヨーロッパに行った私たちであるが、婚前、割とまだおしとやか気味で、夫唱婦随っぽい雰囲気を醸し出していた妻が、こと旅行に関しては頑なに新潟、秋田旅行にしようと、最後まで反対していたのは、今にして思えば、美味しい白米が無いヨーロッパなんぞより、屈指の米どころで食い倒れてみたいと思ってのことに違いない。そのくらい、飯が、好きなのだ。
 しかし、だからと言って、私は妻を嫌っている訳ではないし、話が違うだとか、詐欺だとかと訴えるつもりも毛頭なく、無論離婚しようなどとは考えたこともない。
 確かに、結婚当初は、その変貌振りに面食らいはしたが、結婚の前後で人間が変わってしまうことなど、多少の差異はあれど、自分自身を含め誰にも当てはまることでもあるし、自分の両親を見ても、お互いが、本音で付き合えなければ、夫婦なんてものは、長続きはしないものだと、私は思っている。
 であるからして、ある意味、私に心を曝け出してくれた妻は、可愛いと思うし、私を信頼してくれているのだとも思う。私は、そう、思いたい。
 ただ、太るとなると、当然重くなる訳であるから、何をするにしても、通常人より負荷が多くなる訳であり、往々にして、自分の興味の対象以外は、自然ものぐさになっていく。
 つまり、妻においては、米はそれこそ、一所懸命にして、これでもかと言うくらいに精魂込めて研ぎ、炊く訳であるが、それ以外は、もう、どうでもいいというような次第で、1日の消費カロリーが米を3度研ぎ、炊き、片付けるだけとなれば、おのずと摂取しているカロリーが大幅に上回っている訳で、また更に肥えては、また更にものぐさになっていくという、まさに、反比例、負の連鎖に陥っているのである。
 しかし、妻も、白い飯が好きなだけで、それを食うことが嬉しくて食っているのであって、相撲取りやプロレスラーが練習の一環としてひたすら体重を増加させることを目的として涙を流しながら高カロリーを摂取しているのとは違うのであるから、やはり、女性でもあるし、少しは、気にしているのである。婚前から倍以上に増え、ずいぶんと丸くなってしまった、体型を。
 私も、妻には美しくあって欲しいとともに、こんなに炭水化物ばかりを摂取していれば、糖尿病等の疾病も心配であるから、さりげなくダイエットを薦めたりして、一緒にやったりしてみるのだが、これが、3日と続いた試しが無い。
 何やかやの言い訳をつけては放り出し、その癖、ダイエットをリタイヤしたことによって、危機意識だけは更に増幅して植え付けられてしまうから、ネットでいろいろ検索してみては、蒟蒻の粒やらを白米に混ぜてみたり、マイクロなんとかやらに1食置き換えてみたり、やたら大きなゴムボールに乗っかってみたり、電極で筋肉を何万回も痙攣させてみたり、目についたものを手当たり次第に手を出すのだが、やはり、いずれも駄目なのであった。
 しかし、そんな妻がである。この期に及んで、霊感的なダイエットに、走るとは。食卓で先程聞いたのは、そんな如何わしい話なのだ。
「ウチにね、救世主が来るのよ。言ってみればお取り寄せね」
 一瞬間、私の頭が空白になるほどの馬鹿馬鹿しさ。怒りを通り越して、くだらなさに笑みさえ零れてしまうほどの阿呆加減である。
 当然に私は、そんな眉唾なものには反対したのであるが、前述のように今回も、まさに、相撲の決まり手の如く、体系さながら妻に強引に押し切られてしまった。
 しかしそれでも、事前に相談してくれて、良かった。ある日私が、仕事から疲れて帰ってみたら、訳のわからぬ格好をした救世主を名乗る男が、私の座るべき席で鷹揚にくつろいでいて、肩肘をつきながらテレビのリモコンを手に「よう、おかえり」などと微笑まれでもしたらと思うと、私は思わず、ぶるぶるっと、身震いしてしまうのだった。

第2回「午後10時過ぎのチャイム」へつづく



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posted by maruzoh at 11:07| Comment(0) | ◆お取り寄せ救世主 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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