やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2014年07月13日

【エッセイ】タツ子さん


【エッセイ】タツ子さん 


 福祉会館の部屋に「おはようございます」と入って行くと、タツ子さんは「文筺」の主のようにどっかり坐って迎えてくれた。おそらく出席率は会の中で一番良かったのではないだろうか。
 私が「岳朝」で、この街に女性中心の文章グループがあるのを知り、友人を誘って冷やかし半分に覗いてみたのが出会いだった。あれから六年以上になる。
 すぐ帰るつもりが、昼になり、つい夕方まで居てしまったのを思い出す。余程居心地がよかったのだろう。昼は各々お握りや昨夜の天ぷらや、かぼちゃの煮物などを持ち寄って一日勉強。そしてB5判十ページ前後の文集を毎月出しているのを知った。この快挙をこともなげにこなすフツーの奥さんたちの底力に舌を巻いたのだった。その編集をしていたのが石川タツ子さんとリーダーの市瀬さんだった。印刷は松本さんのご好意であった。三人は毎月、二、三日はワープロ打ちと編集に費やしていたと思う。
 当時、書けば次の月には活字になって「文筺」に載る嬉しさと、本音で喋れる仲間に出会ったことで、急に生活に活気が出たのを覚えている。まるで締め切りに追われる作家気取りで、例会の帰りにはもう次の作品を考えたりした。
 今思えば夫の定年退職や、子どもたちの自立後の不安定や、自分自身の老いの入口を、文筺のお蔭で病気もせず通過できたような気がする。
「いつもお世話になるわね」と言うと彼女は「若い頃、編集者に憧れていたからね。人の文章を打てば勉強になるし、自分の楽しみでもあるのよ」と心を軽くしてくれた。
 タツ子さんは読書家でもあり、ゆくゆくは読書会みたいなこともしたいと話したこともある。そしていつも辞書を持ち歩いていたのも感心したことの一つであった。タツ年生れのタツ子さんは「親が手抜きしたのよ」と笑い話にしたが、名のごとく筆のたつ、また筆まめの人だった。「この頃あなたの出席が多くて嬉しい――」などと、ラブレターをもらったこともある。根本的には努力家で、物も時間も無駄にしなかった。それは包装紙を利用した封筒や、千枚を目標にしたちゃんちゃんこにも現れている。お蔭で随分重宝させていただいた。
 しかし変ったところもあった。酸っぱいものが大嫌いだった。私は逆に酸っぱいものが大好きでハイシーLをいつも持ち歩いているほどである。
「ビタミンCのお菓子だよ」面白半分にからかう積もりが「ギャッ!」と叫んで吐き出して、本気で怒ってしまったのを思い出す。
 タツ子さんがこんなに「文筺」にいれ込めたのも、ご主人がアッシー君を務めてくれた陰の協力に負うところが大きい。そのお返しかご主人の玄人はだしの趣味、手品の手伝いをよくしていたという話を聞いて驚いた。あの何事にも真正面から対峙するタイプのタツ子さんが口を一文字に結んで、超真面目に手品の手許をやっている姿を想像すると、自然に頬も緩んでしまうのである。
 タツ子さんは笑顔のいい人だった。ちょっとぞんざいな感じのする千葉弁で冗談言いながら大笑いするタツ子さんはすてきだった。
 しかし何といっても一番の特徴は、独特の宗教観をもっていたことだった。母親代りだったというお姉さんの死を書いた文章の中で、無信心の私が唖然としたことがあった。夜中に訃報を聞いてから、夜明けを待って駈けつけるまで、写経をして心を落ち着けていたという件りだった。白装束であの世へ旅立つ姿さえ目に浮かぶと書いてあった。
「あの世って、あると思う?」不躾の私の質問に
「半分は信じている」と言う。
「おかしいかな――信じていない?」と聞かれて困った。
「信仰って、ある方が生き易い人にはある方がいいし、ない方が生き易い人にはなくていいんじゃない」と答えたと思う。
 あの時、写経の用紙をいただいた。このたび一度経験してみようかと探したが、どこにも見当たらない。やはり私には無縁なものらしい。今の私は死後の世界は考えられないが、もっと年を重ねたらまた変わるかもしれない。それもまたいいと思っている。宗教というものは誰をも受け入れ、誰をも縛らない、神仏は寛大で優しいものだと思いたい。
 長い時間をかけて、天国への階段を積み続けてきたタツ子さんは、今ごろきっと天国でにっこりしていることだろうと思っている。そう思えば私も少しはほっとするのである。

《終》




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posted by maruzoh at 08:35| Comment(0) | ◆澤田節子作品集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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