やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2013年11月04日

【エッセイ】夏期保育


【エッセイ】夏期保育 


 「子供たちが明日を待ちきれなくて……。今から行ってもいいでしょうか」。二男の嫁からの電話である。彼女は下の子の男の子が幼稚園に入ったのを機会に、前に勤めていた会社にパートで通いだした。仕事の関係で七月二十一日から二十五日まで、七歳と五歳の孫を預かってほしいと頼まれている。こちらも二人だけの生活がたまに活気づくのもいいかな、内心こころ待ちにしていた。でも今日はまだ二十日、まあいいか「いいよ、いつでもおいで──。」
 それから二時間もしないうちに、大きなリュックに何やら一ぱい詰めて水着を入れた手提げをそれぞれ持って、嫁の運転する車でやってきた。
 梅雨が明けきらないで、もういく日も太陽をみていない。狭い家の中ですぐ運動会だ。用意しておいた「王様の剣」のビデオも見てしまった。「図書館で、本と紙芝居借りてこよう」。雨がやっとやんだので二人を連れ出した。図書館は歩いて五分とかからない。
 団地に住む孫たちは小川が珍しく、道に沿った小川に笹舟を流すと目を丸くした。「作って──」と笹の葉を持ってくる。かわるがわる飽きずに何度でもねだる。その間も時々通る車に気が抜けない。
 童話三冊と紙芝居を二巻借りてきた。「さあ紙芝居の始まりだよ」というと「わたしがやってあげる、おばあちゃんお客さんになって」と取られてしまった。今年一年生になった茜がはじめて見る紙芝居をよどみなくすらすら読み、会話は会話らしく、間の取り方も申し分ないのに驚いた。「すごいねぇ」「姉ちゃんはうまいんだよ」。体は一年生姉をしのぐ大型の五歳の弟も、一目置いている。「紙芝居屋さんになれば?」とからかうと「あめ売ったり、自転車引いたりしなければならないからいや」と真面目に答えた。「幼稚園の先生になりたい」という。この前来た時、この子は「くの一」になるんだといっていた。クラスの中ではやっているくの一とびが上手いからだという。「やってみようか」とちょっと腰を落としてヒタヒタとすり足で走りピタリと止まって見せた。その前に来た時は、セーラームーンになるといっていた。「翔くんは、何になるのかな」。「ボクは──マンに決まってるじゃん」わたしの知らないテレビのキャラクターらしい。子供は一時もじっとしていない。一つのことに熱中して、すぐ飽きる。汗びっしょりで夢中で遊ぶ。急に増えた一日だけで私はもうくたくた。あと五日が思いやられる。
 次の日も雨。家の中は満艦飾だ。三日目は雨がやんだ。夫も休みだし電車にあまり乗らない子供たちを連れて片道一時間半の小さな旅に連れ出した。これは思いのほか子供たちを喜ばせた。この時ばかりは孫の方から一人ずつ手をつないでくる。柔らかい子供の手の感触が、忘れていた息子たちの子供ころを思い出させた。ああ、こういうのもいいもんだなあと、うっとりするような安らぎを感じた。
 デパートに入ると子供たちはいきいきする。駅ビルの外の見えるエレベーターはとうとう二往復してしまった。久しぶりの太陽に、可愛い帽子と赤と紺の靴を買ってやった。そして色紙と怪獣とハート型のシール。昼はデパートの食堂のお子様ランチでもう二人は大満足。帰りの電車は空いていたので靴を脱いで窓に向かって座り大旅行気分。久しぶりに私たちも楽しい一日だった。
 次の日は急に真夏になってしまった。今までの長雨とバランスを取るかのごとくギラギラした太陽に、洗濯物は一気に片付いたものの、身の置き場のない暑さ。夫は出勤なので買い物をかねて近くの神田川へ川遊びに連れて行った。昨年から浅瀬の水遊び場ができて、水がすぐ上から湧いてくるので、きれいで冷たい。機嫌よく遊んでいるうちに尻もちをついてしまい、お姉ちゃんはスカートとパンツがびしょびしょ。弟は昨日かった帽子を流してしまい、私が荷物を放り出して下流に走りやっとこさつかまえた。ぬれた帽子やスカートで「涼しくていいや」と三人でベンチに座ってソフトクリームを食べた。
 晴れ出したらいい天気が続き暑い日が続く。「水着持ってきたからプールへ行こう」とせがむが金づちの私がこの爆弾のような二人を一人で連れて行く自信がない。何かあってからでは遅い。部屋を涼しくして子供用アニメを見せたり、お絵かき、綾取り、折り紙、夜は花火までやって、やっと暑い夏期保育は無事終わった。
 孫は来てよし、行ってよしというがまさに名言だ。しかし定年後の静かすぎる生活にインパクトを与えてくれたのも事実。ずっとこうじゃたまらないというのも事実。そして次に会うとき、二人の将来の希望が何に変わっているかも楽しみだ。

《終》


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posted by maruzoh at 07:52| Comment(0) | ◆澤田節子作品集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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