やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2013年10月05日

俺様とマリア volume.87 ディーン安武という男


俺様とマリア volume.87 ディーン安武という男 


 池袋の東口脇と北口を線路下で繋ぐ地下通路がある。昔は昼でも薄暗くって、どんだけ清掃したところで小便の臭いが抜け切らないような、小汚くて、それにかなりヤバイ通路だった。それがいつからか「ウイロード」なんていう洒落た名前がつけられたと思ったら、照明を増やしてすっかり明るくするわ、爽やか色のペンキで化粧直しをするわ、ポリが立って笛を吹くわで、あっという間にケンゼンな通路と化しちまった。
 この地下通路の東口側出口を左に向かった辺りに、いかにも古き池袋って感じの雰囲気のエリアがあった。明治通りからたったの1本裏道に入っただけだってのに、パチンコ屋にポーカーゲーム屋、各種風俗店にストリップ劇場、キャバレー、スナックがひしめいているような通りで、名画劇場の文芸座から向こうなんて街灯1つ無くってまさに真っ暗。その先のホテル街の角々では、夜な夜な立ちんぼが立つという実に怪しげな一帯だった。
 ところがだ。地元の連中がここに地下通路に因んで東池袋ウイロード商店会なんて名前をつけたものだから、豊島区や池袋警察も「これ幸い」とばかりにそれを後押しして、このエリアの大掃除、害虫駆除が盛大に始まった。職質が半端じゃなく増えて、まず真っ先に立ちんぼがいなくなった。看板も出ていないような地下のゲーム屋やDVD屋が次々にパクられた。風俗店がどんどん締め出された。パチンコ店はみな大手の系列店に代わった。あの文芸座までが立派なビルに収まっちまった。
 それまでは夜ともなれば地元の人間だって1人じゃ寄り付き難いような危険なエリアが、見る見るうちに健全且つお洒落に変貌して、いつしか東池袋ウイロード商店会は女の子同士でも普通に飲み食いができる街になっちまった。今でもあの頃を偲ばせているのは、ストリップの「ミカド劇場」くらいかもしれない。
 ちょっと前置きが長くなっちまった、本題はこっからだ。開発の進んだ東口では唯一取り残されていたこのウイロード界隈の成功が、池袋の西口の商店街の親父連中を大いに刺激したことから話は始まる。着工から3年近く経った東京芸術劇場が、いよいよ来年10月に池袋駅西口徒歩3分の場所にオープンすることになって、親父たちはこれまでの下町のがさつで危険なイメージから芸術に見合うだけの高尚な商店街に成長させるべく、連日連夜無い知恵を絞りながらの会合を開いていた。
 そこに現れたのがディーン安武だった。

ガラガラアァァァァン

「キャァッ」

 平成X年、劇場通り、アゼリア通り、みずき通りが交わる池袋西口五差路の信号待ち。見るからにガラも頭も悪そうな腰パン2人組が、実にくだらない話で盛り上がっていた。背の高い金髪が飲みかけの缶ジュースを飽きたとばかりに無造作に投げ捨てると、後方を歩いていた女子高生の制服を直撃した。まだらに染まった制服を見て女子高生は、蹲って泣き出しちまった。ところが2人組は話に夢中で振り返ろうとすらしない。誰かが注意でもすればいいってのに、周囲の大人たちは見て見ぬ振りを決め込んでいやがる。最低だぜ。その時だった。

「君たち、そちらのお嬢さんに謝りたまえ」

 短く刈り込んだ髪にカーキ色のベレー帽。まるでボーイスカウトみたいな出で立ちの男が、時代錯誤も甚だしい「お嬢さん」だの「たまえ」だのの死語を連発して割って入った。若き日のディーン安武だった。

「何だ、てめえ」

 ようやく振り返った2人組に全く臆することなく、ディーンは毅然と言い放った。

「私たちは、池袋西口自警団。
来年10月の東京芸術劇場開館を機に、
この池袋西口を文化的で品位のある街にすべく立ち上がった有志だ。
今の君たちの行為を見逃すわけには行かない。
彼女に謝罪をした上でクリーニング代金相当を支払いたまえ」

プッ

 小太りで茶髪の男が、腹立たしげにディーンに口の中のガムを吐きつけた。

「てめえ、ポリでもねえくせに偉そうな口利くんじゃねえぞ」

 ディ−ンは無表情でガムを見つめてから拾い上げると、ポケットから小さな袋を取り出してそこに入れた。目に付いたゴミを拾い集めてるんだろう、タバコの吸殻や丸められたチラシが納められていた。

「私は私の住むこの街、池袋西口を愛している。
しかし残念だが、私の愛するこの街には足りないものが2つある。
それは秩序と、そして正義だ。
最近、君たちのように自由と無秩序を履き違えている輩が多いが、
私は秩序こそが真の自由を生むと思っている。
また、私は正義こそがこの街を、誇りある街に成長させてくれると信じている」

 金髪がディーンの胸ぐらを掴んで凄んだ。

「うぜえよ、てめえはよぉ。
ぱーぱーぱーぱー、何言ってんだかさっぱりわかんねえよ。
ボーイスカウトがキャンプやりてえんなら、ははは、バ〜カ。
レッドアローで秩父でも行っとけや、ボケ」

 ディーンの眼がギラリと光った。

「秩序の維持の為に、これから正義を執行する」

【To be continued.】




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 現代小説 俺様とマリア

posted by maruzoh at 18:26| Comment(0) | ◆俺様とマリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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