やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2013年09月15日

【エッセイ】女ごころ


【エッセイ】女ごころ 


 今日は私たち文章サークルの熟女八人と、毎月読後感を寄せてくださる万年青年七十五歳の先生との、弥次喜多道中である。先生は同窓会に出席したついでに、いつもの公民館での勉強会に参加してくださり、いい機会だからと伊豆長岡への一泊旅行になったのだった。
 こういう時いつも大活躍してくれるのがさくらさんである。今回も宿の交渉から車の運転まで彼女に負うところが大きかった。お茶の先生をしているというのに開けっ広げで、お酒も飲めないのに酒席の座持ちがいいという不思議な人である。
 こんな特別な日でも、朝九時半から正午までお勉強する。昼食後、先生の車とさくらさんの車に便乗して、途中葛城山の観光をしながら夕方近く宿に着いた。
 夕食は大広間にズラリと並んだ和・洋・中華のバイキングだった。バブルが弾けたあとの人件費節減なのだろう。ギターを抱えた二人組が、ラテンから歌謡曲までリクエストに応えて雰囲気を盛り上げてくれる。ここでもさくらさんは蝶々のようにひらひら気軽に飛び回って、メロンやピータン、白きくらげの酢の物など珍しい料理のある場所を探して教えたりする。
 グループの名で取ってあったのは大きな部屋が二つである。食事のあと誰いうとなくまた先生の部屋に集まってしまった。
 長い食事中の観察で、先生と四人はかなりいけるくちと見た。二人はまあまあで、一番お喋りなさくらさんと私がまったくの下戸とは皮肉なものである。
 明治生まれの親に育てられたいまの熟女たちは、時代の風に吹かれながらも普段は自分を抑えているので、こういう時にはかなり解放されるらしい。いける組のかえでさんが大きなバッグを引き寄せて、手品のように金箔入りの中びんのお酒をドンとテーブルに載せてにやりとした。いける組五人は目を輝かしてあっという間に金箔とともに空けてしまった。かえでさんが二本めを取り出した頃、まあまあ組と下戸組は大きな露天風呂があるというので初めて風呂に入るために立ち上がった。
 月はなかったが、広い露天風呂で手足を伸ばすと、手足の先から日頃の疲れが流れ出ていくような気がした。
 部屋に戻ってタオルを干す時、さくらさんのタオルが桜色をしているのに気が付いた。間違って他人の使ったタオルを使わないための用意をしてきていたのだった。意外な一面を見た気がした。人間というのは外から見るのとは反対の一面をかなり持っているものだと思った。
 先生の部屋に合流すると二本めも空で、さすがにおひらきのムードになっていた。十一時も過ぎたようだ。先生は一人で十畳を占領するのは悪いと思われたのか、盛んに「こっちも使ってくださいよ」とおっしゃる。「立候補!」と手を上げるのではと思っていたさくらさんは無言。みんな一せいに無口になってしまった。重ねて先生は「私は昨年前立腺をやってから……」とまで、にこりともしないで付け加えてくださったのに「ワハハ」とはしたなくも笑ったのは私だけで、ひとりで浮いてしまった。
 気まずくぞろぞろと隣の部屋に移動すると歩く所を残して、縦に六つと横に二つふとんが延べられていた。「せっかく、ああいってくださるのに悪くない?」と先生の同郷のあやめさんは身内意識が働くのか……。「私はだめよ!お年の上の方から三人ぐらいどうかしら」なんとさくらさんは浴衣で寝乱れるのを恐れてか持参のパジャマに着替えて、一番奥のふとんに潜り込んでしまった。古希を迎えた女学校の同級生の松子さんと杉子さんは横に敷いた二つにすばやく滑り込み早くも狸寝入り。私は真ん中あたりを確保して座り込んだ。「もみじさんどう? 正真正銘の独身だから……」とからかうと、顔を二、三度ぶるぶると振って「そんな気ないよ!」と真顔でいう。三年ほど前に夫を亡くし自分も病気の後遺症のある人に心ない冗談を言ったと反省してふとんに潜った。遅く風呂に行った人たちが帰ってきたらしい話し声を夢うつつに寝入った。
 七時十分前に目覚めると、まだみんな魚河岸の鮪のように眠っている。どうやらみんなここで寝てしまったらしい。一人でせいせいと朝風呂に入った。疲れるといびきをかく癖のある私はかなり他人を悩ませたらしい。
 八時の朝食十分前になっても先生は起きてこられない。あの十畳で大の字になって眠られたのか、くの字になってか……。七十五歳で朝から夜中近くまで八人の美女を相手にご活躍、いささか心配になってきた。すみれさんと二人で起こしに行くと何度めかのノックでやっと起きてこられた。
 流行にのせられ、熟女とか猛女とかいってもほんとはみんなかわいい女なのである。

《終》


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posted by maruzoh at 08:42| Comment(0) | ◆澤田節子作品集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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