やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2013年08月14日

【エッセイ】すてきな三人


【エッセイ】すてきな三人 


 七十歳になって、医療保険が一割負担となった。そんなに有難くもないと思っていたのに、一月も経たないうちに、階段を踏み外して整形外科に早速お世話になってしまった。三種類の内用薬と、五枚入りの貼り薬を六袋もらって千三百五十円、二回目は七十円だった。
 少し前まで七十歳は古希の祝をしたというが、いまでは稀どころか、ざらである。とはいえ、現代でも七十辺りが本当の老境に入る時期なのか、大きな曲がり角であるのをつくづく感じる。
 心身の衰えは仕方ないとしても、新しいことがよく覚えられない、物忘れが激しい。上げたつもりの足が上っていなくて段差でつまずく。
 子どもたちも、もう四十代で親の出る幕はない。社会的にも曲がり角である。丈夫・元気が取り柄だっただけに老いを自覚することが多くなった。
 毎月十日くらいであったが六十八歳まで三十年以上続けた仕事をしていた。制度が変わって終わった時には、寂しさより無事終えることができた開放感の方が大きかった。
 しかし老いも悪いことばかりではない。老いた人がみな成熟するとは限らず、老醜も、老害もあるがすてきな老人や、
悠々と自分流に人生を楽しんでいる人も大勢いる。それは人生に成功した有名人より、ごく普通にさりげなく暮しているの市井人である。そういう人を見ていると年を取るのも悪いもんじゃないと気が楽になる。もしかしたらそれが後から来る人たちへの老人からの贈り物かもしれない。
 私には身近に三人のすてきな先輩がいる。そろって今年八十歳だが三人三様にいきいきと見える。
 Oさんは、公会堂でやっているシルバー・ヨガの先生である。私はそこの落ちこぼれ生徒なのだが、開脚前屈など足許にも及ばない。日常は七人の大家族の朝食と夕食の仕度をしている。ヨガの仲間と月一回、日帰りで近くの温泉に行く。午前中は温水プールで水中ウォーキングをする。午後は昼寝や井戸端会議になる。Oさんはさらりと自分の愚痴も言うし、人の話も聞く。相談にも乗る。
 今回私が足を痛めて買い物に出られなかった時にも茹でた葉や、家庭菜園の野菜をいただいて、とても助かった。
 Aさんは演劇鑑賞団体で知り合った。友人に誘われて入ったグループにいた人で、もう二十年以上にもなる。あの頃から続いている会員は私とAさんだけになった。長い間には当番が回ってきて一緒に入り口でもぎりをしたり、腕章をつけて会場係をしたりして自然に親しくなった。
 Aさんは六十歳を過ぎてから油絵を始めた。今はパッチワークに凝っている。もともと美的センスがあるからか、作品は素晴らしい。褒めちぎったお礼か、ペンケース二つ、口紅入れ、セカンドバックをもらった。どれも長い間重宝している。私の宝物である。
 旅行好きのご主人の土産はいつもパッチワークの材料になる布切れだったそうだ。そのご主人を八十三歳で亡くし、いれかわりのように三人姉弟の年の離れた末っ子の長男が二人の子どもを連れ、離婚して帰ってきた時は怒りながら泣いた。私も見たことのない息子さんに腹を立てると「みんなで甘やかして育てたバツよ」とかばうのだった。
 次に会ったときは「「あなたに愚痴ってさっぱりした。やるっきゃないものね」と、高校生のお弁当のおかずの話をしていた。その子たちも今年で二人とも社会人になった。今でデモ天気がいい戸素敵な手作りのバックを籠に入れ、自転車でかいじょうにやってくるお洒落な元気者だ。
 Nさん、夫の先輩の奥さんである。市内から車で一時間はかかる山村に住んでいる。夫がパソコンのパワーポイントとかを借りに行くというので「そんなに遠くまで借りに行かなくても買っちゃえば」というと、「三十万する」とのこと。すぐ運転手を買って出た。家に着くとすぐ八十歳の先輩と七十三歳の夫はパソコンに向かって夢中である。
 苦にしていた初対面の奥さんとの二時間はあっという間に過ぎてしまった。若い頃、演劇グループでご主人と知り合ったという。もと教師だったご主人はパソコンを教えるのにも
「プロだから一時間片手だせっていうのよ。五十円かって言うと、バカ五千円だって年金を巻き上げるの」と笑わせるるパソコンで俳句を投稿するのが趣味だという。
 十二年間飼っていた犬の死の話をした時には「じいっといて死を見届けたわよ」とゼスチュア入りで涙ぐんだ。三回目訪ねた時、新しい犬小屋の屋根に小さな鯉のぼりがたててあった。東京生まれの東京育ちがこの田舎にどっしり腰を据えて溶け込んでいる。
 私が三人の年齢になるまで、まだ十年ある。あのような八十歳なら年を取るのも悪くないなと.明るい気持ちになるのである。

《終》


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posted by maruzoh at 08:30| Comment(0) | ◆澤田節子作品集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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