やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2013年07月15日

【エッセイ】おわりよければすべてよし


【エッセイ】おわりよければすべてよし 


 テレビの中継で、青森のねぶたを見てから実物を見たいものだと思っていた。
 六月の初め、近くの旅行社で東北三大祭≠フツアーがあることを知った。青森ねぶた・秋田竿灯・仙台七夕が一度に見られる。
 すぐ申し込むと、はるか八月五・六・七日の話なのにもういっぱいだという。がっかりしていると「希望者が多いので、宿のとれる範囲で、もう一台出すことになりました」と電話がきた。
 富士インターの出発は午前六時六分である。一日で長い日本列島を半分くらい行くのだからと納得して、当日は四時に起きた。
 大型バスが定時について、先に申し込んだ人たちは賑やかに乗込んで行ってしまった。ところが続いてくるはずの中型バスがいつになっても現れない。とうとう東京行きの急行バスを二台見送ってしまった。
 取り残されたのは、二人の老婦人と、年のわりには派手なお揃いのアロハのおじいさん二人、そして私たち夫婦である。
 旅行社からスーツ姿の若い店長が慌てふためいて駈け込んで来た。バスが故障して、車体の下から煙が出た。そこまで乗ってきた人たちは警察官の誘導で、いま別の車に乗り換えているので直に着くという。この旅はついてなかったと夫婦でひそひそ語り合った。
 アロハのおじいさんたちは「金返さして、帰るかやー」と言い出すし、二人の老婦人も一人はむっつり無言、一人は対照的に陽気で、朝早過ぎて食べてこなかったのでお腹が空いたと、おにぎりを食べ始めた。
「今回は私が誘ったもんで肩身が狭いよ。口だけじゃないお詫びをもらわなくちゃ……」と恐縮しているイケメン店長をからかっている。
 やっと動き出したのが予定の一時間遅れだった。すべてが俄か仕立のツアーらしい。添乗員は実直そのものの老人だが、二人の運転手はとびきりのハンサムなのが救いだった。
 メンバーは県西部のY市からの、五十歳前後の夫婦四組、この人たちはかなりの元気印。小か中学生の親のグループらしい。時々携帯で食事の指示だの、花火はやるななどと、お母さんしている。あと物静かな夫婦と女友だち二人、そして富士インターの六人の計十八人である。おにぎりさんの情報によると、添乗員のKさんは定年後のバイトだそうだ。
 Kさんは今夜のねぶたを余裕をもって見るには走れ!走れしかありませんと、気の毒なくらい必至の形相である。
 予定に組み込まれているトイレ休憩もサービスエリアを三件飛ばしに飛ばして、しかも時間は十分である。一つの目的のため、お互い「奥の方が空いているよ」などと教えあった。昼食も弁当積み込みで、車中で済ませた。不思議な連帯感さえ湧いて来た。
 二人のドライバーは、ハンサムだけではなかった。スピードを上げつつ実に安全運転で,乗っている私たちも小気味よかった。岩手県辺りで、先発の大型バスを追い越した時には拍手が起きた。休憩所で父さんを気にしながら中年の母さんたちは運転手に差し入れするのを二回見た。私も添乗員にドリンク剤を三本渡してきた。ドライバーにもいったと思う。
 窓の外に海が見えてきた。陸奥湾である。とうとう来た!大きな船や、漁船がたくさん停泊している。時計は五時を過ぎているがまだ日は高い。十時間走り続けたことになる。
 街中に入ると、ハネトと呼ばれる人たちが三三五五、街を歩いている。ハネトは白地の浴衣をたくし上げて、派手なたすきを掛ける。そして花笠をかぶりシゴキを吊るして鈴をつけている。タスキ・シゴキ・オコシは赤・青・ピンク・黄でグループで統一しているようだ。
 親子連れやグループのハネトでバスはなかなか進めなくなった。ここまでくればもう大丈夫と、渋滞のバスの中から、沸き立つような人々のさんざめきを楽しんだ。
 ホテルについて荷物を置くと、山海の珍味も掻き込んで、すぐ街に出た。
 念願の本物のねぶたは、想像以上だった。まずお囃子・大太鼓・笛・ジャガラといわれる手振りの鉦が別世界をつくり出す。続くハネトたちのラッセラー・ラッセラーの掛声と鈴の音、そして圧巻は巨大で美しいねぶた。戦後、急激に大きく華やかになったそうだ。
 赤を基調にした華麗、物語りを凝縮した勇壮、エネルギーを発散させる情熱の結晶だ。
 桟敷に座って見るどころか、ラッセラー、ラッセラーと一緒になって叫んでいた。久しぶりに大声を出してしまった二時間だった。
 次の日の竿灯、その次の日の松島や七夕もよかったが、私にはねぶたが一番心に残った。
 帰り大雨や雷にも見舞われたが、全員元気に二千三百キロ走り続け、思い出深い旅となった。バス会社からはお詫びのつもりか、一日一本のペットボトルと仙台の笹カマ一箱ずつ配られ、おわりよければすべてよしの旅だった。

《終》


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posted by maruzoh at 05:53| Comment(0) | ◆澤田節子作品集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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