やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2013年06月15日

【エッセイ】秘密の花園


【エッセイ】秘密の花園 


 終戦の年、私は小学校の三年生だった。女の子は、子どもからは抜け切れず、鋭い少女の部分を併せ持つ微妙な時期だ。
 あの頃は日本中が尋常ではなかった。私の家も例外ではない。疎開のため短い間に二回も引っ越した。まだ若かった両親は、乳飲み子とともに年の近い五人の子育てと、戦争という異常な時代に振り回されていた。
 長女の私はいつも弟や妹の世話と、お使いを割り当てられていた。体の大きな長女の私を親も当てにし、私もむしろそれを得意げに振る舞っていた。
 私の家は戦争が激しくなるまで、仕立物をする洋品店を営んでいた。商品を入れる大きな戸棚があり、一番下の引き出しには、はんぱ物や、余り物のボタンがいっぱい入っていた。
 白いシャツの貝ボタン・茶色の上衣ボタン・黒のズボンボタンなど色も形もいろいろである。それを引き出しごと引き抜いて物陰に広げると、もうそこには私だけの世界「秘密の花園」になった。ボタンたちは魔法をかけられたように、私の思い通りの役者になってくれる。
 貝のシャツボタンを選り出して二列に並べて生徒にする。その前に黒いズボンボタンを置くと男の先生にした。女の先生は白い上衣ボタン。ボタンたちを古い画用紙の上に並べると校庭で朝礼が始まる。シャツボタンの生徒の中には、級長や副級長もいた。よく物忘れをして立たされる子もいた。ボタンの学校には運動会や遠足もあった。
 時には、小箱マッチの空き箱の上に家族中を乗せて船で南の島へ疎開したりした。みんなで魚釣りや、椰子の実を取ったりする。その時、お父さんは水牛の角の大きなボタンで、お母さんは白い大きな貝ボタン、私はワンピースのピンクのボタンだった。
 四月生まれの私は、学校でも家でも活発な頼りになる“いい子”に見られていた。しかし本当の私は“いい子”を演じるのはしんどかった。三年生の子どもらしく甘えたり、わがままを言ったりしたかったのだ。
 私はボタンを擬人化した自分本位の物語の中で、安らぎたかったのかも知れない。そこでは妹を連れなくても遊べたしお使いや掃除は他人に言い付ければよかったから──
 戦争が終わった。家も少し落ち着き、疎開していた画家の一人娘の友達ができた。その友人の家にもよく遊びに行った。
そして両親にいつも監視されているひとりっ子も楽じゃないと知った。心を開ける気の合う友人ができると、いつの間にか私の秘密の花園とはお別れしていた。
 あれから五十年余り経った。子どもたちが自立し、夫も定年になり時間ができた。現在、文章を書く会を知って、自分の世界の楽しみをもてた。もしかしたら、これは形を変えた秘密の花園のつづきかも知れない。

《終》


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posted by maruzoh at 07:00| Comment(0) | ◆澤田節子作品集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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