やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2013年04月24日

【エッセイ】生きること、死ぬこと


【エッセイ】生きること、死ぬこと 


 吹く風に、ふと秋を感じた朝の出来事であった。夫が現役の新聞記者だった頃の市の収入役で、個人的にも付き合いのあったNさんが交通事故で亡くなったとの電話に唖然とした。翌日、その葬儀に夫が出掛けた三十分後に、古い知人の訃報がまた届いたのだった。六十一歳だという。メモをとる手が震えた。午後は町内の公会堂でヨガ教室のある日だった。主婦ばかりなので忙しい盆はお休みで久しぶりの集まりだった。
「妹が亡くなったのよ」
 いつも並んで座るOさんの声に耳を疑った。妹さんのご主人が肝臓がんでもう一年も入院している話しは聞いていた。
「ご主人でしょう?」
「それが妹の方なの。看病していた病室で倒れてね。検査してみたら、心臓は肥大しているわ、胃に潰瘍はあるわ、そのうえ貧血で即入院だったの。これでよく看病してたもんだって……」
 そう言いながらOさんはわっと涙をあふれさせた。聞いている私も生前、顔を知っているだけに、相手の顔がにじんで見えてきた。後から聞いたのだが、そのちょうど十日後に病されていたご主人が息を引き取ったという。妹さんは五十七歳、ご主人は五十六歳だった。
 人は生まれたからには必ず死ぬ。例外はない。世界一の長寿国になった現在でも、生物学的にも、子供たちの自立という社会的意味からも、六十歳は大きな山なのかも知れない。他人ごとのように思っていた還暦が、自分に本当にやってきた途端、あまり年の違わない人の死が束になってやってこられては、呑気者の私も冷静ではいられない。死神とやらに明日つかまっても不思議ではない。自分には関係ないと思い込んでいた老いや死は、無理に見まいと両手で押さえ込んでいただけで、今は指のすき間から深い暗い渕を覗いてしまったような気がした。しかし私は少なくとも後二十年はボケずに長生きしたいものだと思っているのである。
 F市に住む二男から「翔の運動会にこない?」と誘いがあった。孫の翔が幼稚園最後の運動会で鼓笛行進のシンバルを打つという。当日は台風で順延になっていた用事が午前中二つも重なっていた。どうしようかと迷ったが、夫とともに二十キロ離れた会場へ車をとばした。もう昼食は終わって午後一番のお目当ての行進にやっと間にあった。体は大きいが、いつもふざけてばかりいる翔が、緊張して顔を紅潮させ力いっぱいシンバルを打つ。上手い下手は分からぬが一回も間違いなく終わってくれたことではほっとした。
「まるでおサルさんのおもちゃだね」
「そうそう、ああいうおもちゃ、家にもあったわね」
 夫と軽口を叩きながら、ついこの間生まれたと思っていた子が……と感無量になった。
 夕日に向かって車を走らせながら「幼稚園の運動会はいいねぇ」と夫は二人の生活では見せない顔になる。無理して出てきて好かった。子育ての終わった定年後の二人だけの暮らしに、四人の孫たちは時々インパクトを与え、話題を提供してくれる。
 時は一瞬の休みなく進み続ける。見方を変えれば生きることは死への一直線の行進でもある。しかし私たちの命が子から孫へ繋がっていくという潜在意識があって、次の世代の中に永遠の命を託すから楽天的に生きられるのかも知れない。孫に対する文句なしの可愛さも、責任がないからというより実はその中に永遠をみるからではないだろうか。
 誰にもくる老い、それに続く死だが、どうせ避けられないものならば、必死で戦ったり打つ手もなく受け入れたりしないで、仲良く付き合い、老いさえ新しい体験として楽しんでしまうのはどうだろう。心と身体を柔軟にすると若い時には見えなかったものも見えてくるかも知れない。
 月並みだが、よく生きることがよく死ねることだという気がする。出来ればこんな雑文を集めた小冊子が一冊残ればいいなと思う。人は成長の過程で自分のルーツに非常に関心を持つ時期がある。子や孫がそんな時、自分にはこんなへんなおばあさんがいたのか──と楽しんで読んでくれれば満足である。そうすれば私の身はやがて亡びようと、子の、孫の、そしてその子の心の中に生き続けられるような気がする。

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《終》


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posted by maruzoh at 07:57| Comment(0) | ◆澤田節子作品集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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