やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2013年04月10日

【エッセイ】子離れ日記


【エッセイ】子離れ日記 


   十二月十五日(土)
 土曜日の夕方のスーパーは活気に満ちて入る。買い物かごは、もう一杯になっているのにまだ、何か買いたりないような気がする。生きのいいなま物を買ったが、やっぱり若い者には肉が一番のご馳走だと思い直して、またステーキ肉を二枚買い足した。一と月半振りに帰る上の息子の好物だけを集めたら、刺身に、ステーキ、大根のなますに里芋の煮付け、油揚げの味噌汁というヘンな献立になってしまった。
 三年半ともなると、一人暮らしも慣れたのか以前のように、ドカッと、洗濯物を担いでこなくなった。ほっとするよりむしろ物足りない。「ただいま帰りました」他人行儀に挨拶するので「早く上がんな!」と子供のころと同じ口調でいう。就職が決まったのを、電話でと思ったが、けじめをつけるため報告に帰ったという。風呂から上がった息子の胸に夫にもない胸毛が生えているのを眩しく見た。


   十二月十六日(日)
 十一時近くなって、二人の大きな息子がごそごそと下りて来た。小柄な主人の背丈を遥かに追い越した二人が、狭い階段をきゅうくつそうに前後して下りてくるさまは、母親としても、ちょっと頼もしい。若さが眩しくもあり、心配でもある。
「昨夜、二時まで喋っちゃもんで──」
「何をそんなに喋ることがあるのよ」
「まあ、いろいろとね──」
 ギターを弾くと「聞いちゃいられない!」
 といい、下手な作曲をすると「ダサイ!」「古い」と言い合う。カインコンプレックスって、こういうのを言うのかしらと心配になるほど角を突き合わせていた二人だったのに──。青春の暴風圏を過ぎつつあるのだろうか。成長することによってできたスキマをやさしさで埋めあう余裕をもてる大人になって欲しい。

               
   十二月十七日(月)
 脱ぎ捨ててあったズボンに、ついでにアイロンを掛けていると「ありがとう!。脱いでおけば、アイロンが掛かっているなんて、天国だなぁ」という。こんなこと言える子じゃなかったのに、やっぱり自由の代償は大きいらしい。ポケットのサイフには八千円しか入っていない。まだ一週間あるというのに。
「計画性がないのねぇ」
「就職のことで行ったり来たりしたから。でも部屋にまだ一枚あるから──」
「いま、二人で大変なんだから……いい?」
「分かってる、どうにかなるから──」
 帰る時には、またいつも通り大きな紙袋に一杯の荷物ができてしまった。
「じゃあね」
 と、あっさり靴を履きかけるのに
「一枚入れといた」
 と口を滑らせた。
「感謝! 感謝!」
 上がりがまちに座って送り出す私の肩に手を乗せて
「孝行するよ!」
「当てにしないで待ってますっ」
 カッカッカッ、力強い靴音が遠ざかっていくのを複雑な気持ちで聞いた。

《終》



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posted by maruzoh at 07:21| Comment(0) | ◆澤田節子作品集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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