やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2013年03月05日

【エッセイ】タブー


【エッセイ】タブー 


 NHK学園文章教室の「練成」にたまたま載った私の文章を見て「もしかしてあなた?」と声をかけてくれたのがMさんである。市の登録調査員の研修会の会場であった。こんな身近に同好の士がいたことに喜んだり驚いたり。以後、提出作品が返ってくると喫茶店で交換して読み合う間柄になった。
のちにもう一人仲間ができたが大きな商店の奥さんなのでいつも忙しく店先での立ち話の友人になった。
 昨年の秋、ローカル紙の記事でこの街にも女性の文章同好会があるのを知った。覗いてみたいなと思ったが一人ではき遅れして、Mさんに声を掛けてみた。
 見学という名目で参加させてもらった印象は、熱心で、真面目で、前向きなみなさんの姿勢に感心した。こういう世界があったのかと目から鱗の思いだった。とうとう昼をはさんで午後まで長居してしまい、初めてという気がしない不思議な出会いとなった。
 その帰りに車のドアを閉めながら助手席のMさんは溜息と共に言った。「文章の題材に老いとか孫がタブーだとは思わなかった」と。悪いけど私は思わず噴き出してしまった。というのはMさんの作品は八割がた老いと孫の話だからである。
私はどうも腑に落ちないがこの二つは主観が先立つということだろうか──。
 私はなぜ下手な文を書くのか。お金のためでは勿論ない。読者がMさんとSさんだけで他に応募した経験もない私は名誉の為でも売名のためでもない。
 感動や、喜び悲しみを、写真とは違う意味で記録して確認したいのだと思う。五十二歳で車の免許を取った時、三回続けて車のこと教習所の出来事を書いた記憶がある。いま読み返してもおかしいほど熱中し燃えていたものだ。その時の一番の関心事を書かずにはいられない。孫の可愛さも日々変わってしまう。
 また書くことによって、自分自身の精神分析をしている面もある。いつも動いていて多様化する社会、年を重ねていく自分、子どもたちが成長し嫁を得、孫が生まれ複雑化していく人間関係。自分というものをしっかり持っていないと流され続けて終わってしまいそうな人生。不安な中を整理して納得したいのだ。
 そして何より大きな理由は自分を表現したい、表現した自分を認めてもらいたいのだ。
 文を書くのが好きな人は大抵本好きである。いい文を書くにはいい文を読むことが一番と、他人の書いたものに興味を持つし、自然に批判の目も育つ。書くことは話すのと違って消えてしまわないので、いい加減やごまかしが出来ない。歴史物など勘違いや思い込みは許されないので、資料をじっくり読んで改めて文字にすると簡単には忘れないという効用もある。
 Mさんは家の前で車を下りる時「私は義母を看ているから時期的にも会に入れてもらうのは無理だけど、自分流に老いと孫のことを書き続けると思うよ」と言った。私も「それでいいと思うよ、また楽しみにしてるから合評会続けようね」と応えた。Mさんは「私、文に書くとすごく気持ちが楽になるんだもの」と手を振った。
 彼女はいま八十五歳の寝たきりに近い姑さんを抱えている。
定年まで建設会社の営業畑を歩いてきた外面のいいハンサムなご主人と三人暮らしである。夫は外でいい分、家の中ではわがままだったし、若いころは何度か女性問題もあった。他のことでは理性的でしっかりものだった姑も、息子に関してだけはいつも理不尽にかばっていたという。それはいまも心に澱のようにたまっていて、看病に疲れると時々顔を出す。彼女は書くことでストレスを放電しているのだろう。そして看病の間に次々訪れる三人の子どもたちの孫たちが忙しくも楽しい救いなのである。
 私は核家族で育ち、結婚してからも核家族である。老いというものを間近でみていない。Mさんの文によってやがて避けられない自分の問題となる老いへの不安や、重さ、厳しさそして対処の仕方や心がまえを学んでおこうと思う。
 私たちは親を看る最後の世代で、子に看てもらわない最初の世代なのかも知れない。価値観の大きな変化、明治維新、第二次大戦の敗戦につぐ変化に当たるほどバブル崩壊の後遺症は後を引くような気がする。もう主観だけで老いや孫を語れる時代ではない。タブーからはずれてもいいのではないだろうか。

《終》


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posted by maruzoh at 08:06| Comment(0) | ◆澤田節子作品集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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