やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2013年01月08日

【エッセイ】お上りさん ―都庁見学記―


【エッセイ】お上りさん ―都庁見学記― 


 JR御殿場線と小田急線を結び付けて、静岡県沼津市から新宿へ乗り入れる特急「あさぎり」が今年三月開通した。一度乗ってみたいものだと思いながら、全席指定というのがわずらわしくて実現しなかった。
 十一月の連休、一週間前から予約して夫と楽しみにして出掛けた。目的は元気な孫の顔をみに行く気楽な旅である。最新型のルックスは新幹線にも負けないスマートさ。速さではかなわないが新しいだけに内装もすばらしい。その上、いま現在のニュースが出入り口の上に電光で絶えず流れている。窓も大きく思いがけず紅葉も楽しかった。所要時間一時間五十五分。運賃はバーゲンのニッキュッパ(二九八〇)に似ていて微笑ましい。
 新宿に着くと、息子のところへ行く前に新都庁を見ていこうと意見は一致。夫が駅の売店でフイルムを買いながら
「祭日だけど都庁やっている?」
 と聞くと、女の子は
「都庁はありますけど……」
 とジロリ。
「あたしたち、田舎もんに見られたのよ」
「いいよ、その通りだから」
 夫は平気で人ごみに押されながらフイルムをカメラに装着している。押し出されるように駅前に出るとバスが待っている。見ると「都庁」とある。乗り込みながら夫は運転手に
「都庁やってますかね」
 と声をかけている。運転手は私たち夫婦の大きな土産の荷物をちらりと見ていった。
「展望台はやっていると思いますよ」
 まるで外国映画に紛れ込んだようなビル街に降り立つと、まず固まりのようになっている列を見つけて駈け出した。
「ここでいいのかい?」
「とりあえず並んでから聞いてみようよ」
 休日のオフィス街で人影も目立たなかったのに、どこから湧いてくるのか私たちの後ろにどんどん列が伸びていく。やっぱりここでよかったらしい。さすが東京だと感心した。少し落ち着いて見まわすといかにも田舎から出てきたような人はひとりもいない。国会の牛歩戦術のような進み方で五分ぐらいすると、立て札があって「ここで、待ち時間約二十分です」とある。まだ二十分も待つのか。係員が四列に並ばせる。止るとビル風というのか、ホコリっぽい乾いた風が休みなく吹いてじっと立っているのも楽ではない。やっと建物の中に入ることができた。
 中はすばらしい大理石で、つい手を出して触ってみたくなる。すべすべして、ひんやりとした感触は、この世界的建造物を象徴するような重さを持っていた。エレベーターの定員は十八名で、白手袋をした係員がグループに切っていく。私たちのグループは男性が多く、女性は一番後ろの私と、中ほどの紺のスーツの髪の長い人だけだ。男性ばかりの中で色白でスッキリした服装はいかにも都会的に見えた。手持ち無沙汰にそれとなく観察すると真珠のイヤリングも、襟元の白に青い水玉のスカーフもよく似合っている。やがて私たちの番が来て乗り込むと
「四十五階まで五十五秒でのぼります」という説明に「へえ!」と思っているうちに、耳の奥がキューンとしたかと思うとサッとドアが開いて展望室の大きなホールに吐き出された。あっという間の二百二メートルだった。
 私はすぐ窓際に駆け寄った。こんなに晴れているのに、図で説明している風景の建物は半分ぐらいしか見えず、あとは霧かスモッグの中である。
 都庁が完成した当時、連日テレビで放映され見慣れてしまったせいか、初めて見る感激が薄いのは不思議だった。テレビには世界のどこまでも追いかけていって.珍しい知識を与えてくれる一方、臨場感を半減させてしまう面もあるものだ。
「やっぱり、めえねえべえ」
 という若い女の声に横をみると、驚いたことに先刻の紺スーツの奥さんではないか。ガラスに顔をすりつけるようにして一緒に「めえねえ、めえねえ」と何かを探しているのはダンナさまか。どこかの役場に勤める共働きのご夫婦のようだ。
「あのべえべえ言葉は群馬あたりかなあ」と夫はいっていたが、私たちも早い変化に心のたがが外れて「そうずらー」なんていっていたかも――。記念に売店で絵はがきを買い、またあっという間に二階に下ろされた。
 二階には文献と映像による東京都の歴史などを紹介するコーナーがあり、とても分かりやすく興味深かかった。二階からはエスカレーターで下りながら、大蛇のような四列を横目で見て外に出た。
このあとは息子の家を訪ねて孫に逢うだけである。

《終》


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posted by maruzoh at 08:02| Comment(0) | ◆澤田節子作品集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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