俺様とマリア volume.74 神龍のメセージの謎
場外乱闘を終えて再びリング上で対峙した俺様とウェアウルフだったが、今までの戦いで相手の力量が判かっちまった結果、お互いが次の一手を探り合ってなかなか距離を詰めることが出来ない。当初はリングに上がったクリーンな2人に歓声や拍手を贈った観客だったが、一転して不満げなざわめきが漂いはじめた。トレーナーのリンダもちっとも動きの無いリング上に相当じれているようで、背後のコーナーから檄を飛ばす。
「何やってるんだい、坊や。
そんな根無し草のトウシローなんか、B・Bに比べたら屁でもないだろ?
早いとこチャッチャッと畳んじまうんだよ」
おいおい、待てよ性悪リンダよぉ、勘違いもいい加減にしてくれよ。確かにB・Bはウェアウルフ相手に善戦はしただろうけど、あれは奇襲攻撃と捨て身の一か八かが奏功しただけだろ。それをリニューアル後の俺様と一緒にしてもらっちゃあ困るぜ。
確かにエディのおっちゃんと会う前の俺様だったら、B・Bとはいい勝負だったかもしれない。でも、今の俺様がB・Bに比べて唯一劣っていると言えるのは、奴のクソ力くらいのもんだぜ。大体、トレーナーのお前ですら見えていないウェアウルフのスピードをきっちり捉えているのは、この会場の中で俺様だけだってのが判らねえかな。
い、いや違う、もう1人いた、あの男、神龍だ。今奴は片目だし、動体視力で100%は捉え切れていないにしても、奴の格闘センスと知識でそれを補いさえすれば、ウェアウルフの動きはほぼ把握できているに違いない。
そうだっ!その神龍がマリアを通じて俺様に託したメッセージがあったな、何だっけ。そうそう、「神様の声を聞け」だ。そう、その通りだ。しかし、さっきも考えてるうちにゴングが鳴っちまったんだが、神様の声を聞けって、どういう意味さ。
神様、神様、神様・・・
やっぱり判りゃしないよ。神様ってのは天にいるんだろ?ジャンプでもしろって言うのかよ。そんな単純なことじゃないに決まってるよな。リンダに判らないような符丁でのヒントだとしたら、俺様と神龍に共通したモノのはずなんだが、それがちっとも判らねえ。
神様の声を聞け・・・
でも、このメッセージには確かに違和感があるような気がする。うん、確かにちょっと変だ、どこが変なんだろう?
一体、どこが・・・
そ、そうだ、神龍が言うんだったら普通なら「神の声を聞け」じゃねえのかな?そうだろ?今まで何で気づかなかったんだろう。神様ってのは、女の子や子どもが使う言葉じゃねえか、だろう?大人の、しかもマフィアのボスの神龍が神様ってのは、どうにもカッコ悪いぜ。
では、なぜ・・・
ザッ ザシャッ
しまった、メッセージの解読に夢中になりすぎてた。こいつは隙を見つけて一気にダッシュしてきたウェアウルフの間合いだ。ガードが間に合わねえっ。
ドスッ
「ぐはっ!」
強烈、左のボディーアッパー。俺様が顔をしかめて前のめりになっちまったところで、なんと、ウェアウルフの野郎が俺様の左脇の下に頭を差し込んで、左手を頭に巻きつけてきやがった。
こ、こいつはスタイナー・スクリュー・ドライバー、「SSD」の体勢だ。
【To be continued.】
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