俺様とマリア volume.73 驚異のトペ・コンヒーロ
ガシャアアァァァァンッ!
コンクリートの床で背中をしたたかに打ち付けられてまだ動きの鈍いウェアウルフを、俺様は渾身のハンマースルーで眼の前の鉄格子に投げつけた。あまりの至近距離に、反転して背中で受身を取ることも出来ないウェアウルフは、顔面を両手で覆って鋼鉄の中に突っ込んでいく。辛うじて顔面からの激突は回避できたものの、ウェアウルフの上腕にはかなりのダメージがあったに違いあるまい。
タッ ドガシャッ!
俺様は振り返る途中のウェアウルフの横っ面にすかさずオカダ・カズチカ級の打点の高いドロップキックをお見舞いする。弾かれたウェアウルフの頭部が鉄格子に激突して、額の右、テンプルの辺りに鮮血が滲んだ。ウェアウルフが喉を鳴らす。
「ぐるるる・・・」
よっしゃ、場外では完全に主導権を握った。へへへ、この狼野郎。頭脳戦じゃあ人間様の方が何枚も上手だってことを思い知ったか。
追撃を狙わんと後頭部の髪の毛を鷲掴みにしようとした俺様だったが、流石に場外での戦いは分が悪いと理解できたのか、なりふり構わず転げるように逃げ出したウェアウルフは、俺様との距離4メートルほどの間合いを保って場外で対峙した。四つ足に近い低い姿勢だ。
鮮血を滴らせたウェアウルフがニヤリと笑った。と、その瞬間だった。その場跳びでエプロンに飛び乗ったウェアウルフが3本のロープを、まるで梯子を登るようにして一瞬のうちにトップロープまで駆け上るとスワンダイブ式に大ジャンプ、な、なんと、コーナーポスト最上段に着地しやがった。いや、着地というよりも、獲物を見下ろす猛禽類が止まり木に止まったと言った方がいいだろう。
エアウルフの次の一手は早かった。一瞬呆気に取られちまった俺様の心の隙を衝いて、コーナーポスト最上段から俺様めがけて前方回転しながら急降下で舞い降りてくる。E難度の空中殺法トペ・コンヒーロだ。
グガグワシャアッ ゴッ
「くはっ」
この攻撃を顔面から胸板でもろに受けた俺様は、ウェアウルフの全体重を支え切れずに広報に転倒。コンクリートの床に背中と後頭部を強烈に打ち据えられちまった。あまりの痛さに目から火花が散った。本当なら、そのまま頭を抱えて転げまわりたいところだが、そんなことしてた日にゃウェアウルフに追撃をしてくださいと言ってるのも同然な訳で、俺様はジンジン痺れている体とまだグラグラしている視界を悟られないように後方に一回転してウェアウルフと向き合った。
ちっ、どうやら一時俺様に傾きかけた流れも、これでまた五分と五分に戻っちまったようだ。場外乱闘に慣れちまったウェアウルフ相手には、この鋼鉄製の鉄格子とコンクリートの床は俺様にとってもリスクが多すぎる。リング上を指差した俺様にウェアウルフがゆっくりと頷いた。
【To be continued.】
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