やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2012年12月11日

【エッセイ】映画村


【エッセイ】映画村


 ここ数年、夏の終わりの二泊旅行がわが家の恒例となった。その日を明日に控えて、荷物の点検をしていると、職場の夫から電話が入った。「いまテレビで太秦の映画村やっているよ」。すぐテレビをつけてみた。
 ある俳優の主宰する時代劇俳優養成所の日常を映していた。大学を中退してきた土建屋の長男とか、家出同然に出てきたという名古屋のきしめん屋の娘とか、好きで好きでたまらない人たちだ。アルバイトの掛け持ちで働いて月謝を払い、自活している。いまどき珍しい根性のある若者たちだが、二年経って卒業のときには入ったときの半分になり、その上厳しい試験にパスしてやっとエキストラからスタートするという話だった。
 今年の旅のメインは、二日めの城南宮、伏見桃山城、万福寺、平等院、醍醐寺三宝院である。初日は京都に着くのが昼近いので、半日は気楽に、太秦映画村と背中合わせの広隆寺に集中することにしていた。
 映画村の門をくぐると、昨日テレビでみた江戸の町にタイムスリップしたような不思議な空間が待っていた。テレビの時代劇でよく観る日本橋があり、橋のたもとの柳に誘われて橋を上りかけると太鼓橋の半分はまったく違う感じの平たい橋になっている。一つの橋を二通りに使い分けている。そこを折れると旅籠の大黒屋あり、松の屋あり、呉服太物問屋越後屋がある。赤い格子のなまめかしい遊郭が並ぶ通りは興味を持って覗いてみるとやはり白塗りの人形が無表情に座っていた。
 南町奉行所の門の前に若侍が座っているので「一緒に撮らせてください」というとしぶしぶ立ってきた。撮り終わると「いま何時ですか」と時間を聞かれた。この人アルバイトでもうすぐ交代の時間らしい。いまここにある写真は義理で私に寄り添い無愛想なところが返って侍らしくて格好いい。夫が一緒に撮った縞の着物のやくざ風の男は「暑くて大変ですね」というのへ「今日はまだいい方です……」と愛想よく喋ってくれたが写真は目をつぶってしまっている。写真は不思議な力もある。
 愛染横丁という立て札を曲がると小さなお堂があり、おみくじがあった。百円で早速引いて見ると,私はいい運が開けるとのこと、近くの小枝にしばってきた。これも何かのドラマに映るかも知れない。
 よく劇中劇や、芝居小屋の場面で使う中村座では、八月最後の日曜日とあって特別イベントをやっていた。同志社大学に留学している張梅林という京劇の本格的女優による歌と踊りのショーがあった。中国語を少しかじっている私は、ただでいいショーをみられて大儲けした気分になった。やっぱりおみくじは当たった。
 広場では江戸の家並みをバックにロケをやっていて人垣が出来ていた。よくみるとどこかで見たことのある顔、多分昨日テレビでみたあの養成所の研究生たちだと思った。こういう時、食事代と交通費だけで演技の勉強をさせてもらうということだった。監督もその道の研究生で、もしかしたらフイルムは入っていないのかも──。にせロケーションも一種のショーだろうが、本人たちは真剣そのものである。このグループから出たという真田広幸のようないい俳優に育ってほしいものだ。
 時代劇でよくみる、お白州や牢屋も画面で見るよりずっと小さかった。向こうから三人連れの舞妓さんがくる。歩き方が不自然だと思ったら、駕籠のそばに立っている駕籠かき姿の俳優に「写真撮らせてください」と二人が並んだ。なんだ素人なのか。ここには、おいらんから芸者、町娘などいろいろな扮装をさせてくれるらしい。一番人気のある舞妓さんが一万八千円とか。私ももう少し若ければ舞妓さんにでもなってみたかったけれど……。
 スタジオの中では、プロの人たちによる忍者のショーをやっていた。殺陣あり、トンボあり扮装も本格的なので、さすがプロだと感心した。目の前で、屋根から宙返りで落ちたりすると、観客の中から期せずして声にならない声が漏れた。
 映画好きの私たち夫婦は、映画の歴史、名作のダイジェスト、撮影機の発達など大いに楽しく、興味深く見た。
 京都には何回か来ているが、いつも名刹めぐりばかりだったので、今回はとても気楽で楽しめた。映画村は昭和五十年、斜陽になった映画会社を支えるため、撮影所の大オープンセットを中心に開放して、映画を裏からも見せることに成功したのだと思う。この人出で確かに新しい京都の名所になってしまったことが分かる。今年の旅行は、一味違った楽しいスタートをした。その上、楽しい写真もたくさん残った。

《終》


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posted by maruzoh at 08:23| Comment(0) | ◆澤田節子作品集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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