やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2012年07月23日

【短編】同窓会


【短編】同窓会


 夫に先立たれて、独りで四人の子供を育て上げた気丈な母は、山里の盆地で一人、晴耕雨読の暮らしをしている。私はいつも心にかけていながらも、忙しい商家の嫁としてはなかなか会えない。旧盆も終わりの日、やっと母の好物を持って出てくることが出来たのだった。「便りのないのがいい便り、というじゃないの」と言いながらも、日に焼けた顔がめいっぱい綻ぶのが、かえって切ない。私自身、三人の子供が結婚、就職、進学とまだまだ心に余裕がない。何回かあった中学の同窓会には一度も出たことはなかった。偶然今夜は三年ぶりの同窓会だった。
 「ねぇ是非出てきなよ。会いたいようー」村の雑貨屋に嫁いだ幼馴染の時ちゃんが、店番しながら前の道を車で通るのを見かけたと電話してきた。泊るつもりはなかったので、婚家にお伺いをたてると「いいよ、泊っておいで」と、いつになく機嫌のいい舅の言葉に,急きょ飛び入りの同窓会になった。
 農村の中学校のことで一学年二クラスしかなかったので、ほとんどは見覚えのある顔だったが、いくら見ても思い出せない顔もいくつかあった。女子の中にはもう娘を片付けただの、孫の話を得々とする者さえいる。男子の中には頭髪が薄くなって可笑しいほどおじさんになってしまった人もいる。
 「やぁ!」。驚くほど大きな声に顔を上げるとK君だった。「あっ!」意外な出来事にひく──やはりどこかで期待していたからなのか突然キューンと胸が締め付けられ、真直ぐ立っていられないほどの衝撃を受けた。「お久しぶりです」それだけ言うのがやっとで、他人にも分かるほど、私は赤くなっていたのではなかろうか。何十年ぶりでみるとK君は当時駅長をしていたお父さんに面影が似てきたと思った。中二、中三と同じクラスで彼はいつもクラス委員長、私は副委員長だった。
 「よっ!ご両人、やっと会えたじゃん」もう先刻から手酌でやってる昔の悪童が冷やかす。「Kは、この前んときもがっかりして帰ったんだからな」「もうそんなに酔っ払っちゃってるの」と応戦しながらも、そうだったのかと心は騒ぐ。「みんな時ちゃんと敏ちゃんみたいに上手くいくとばっかり思ってたがなぁ」。酒の肴になりそうなので心を残して女子の溜まりカラオケの方に逃げる。
 先刻からマイクを握って離さないのは、あのおとなしかった美っちゃんだろうか。田舎の中学校の同窓会は、服装も、人柄もごった煮という感じがする。中学を出てから三十三年という年月はやはり長い。お父さんが戦死したとき、美っちゃんを頭に四人の幼子を抱え土方に出ていたお母さんはお元気だろうか。彼女も中学を出てすぐ病院に見習いで入り、その後資格を取った。が、入院患者と恋愛して農家の嫁になり、今では農協婦人部の役員さんだそうだ。Kの方をチラっとみると昔のように男子の中心になって話しに興じている様子。商家の嫁のくせにカラオケにも馴染めず、どちらかというとこういう場は苦手だ。大騒ぎあり、昔話あり、晩年は寂しく亡くなった先生の話に涙ありと、あっという間の三時間だった。
 K君のことは気にはなったが久しぶり実家の母とも積もる話があって二次会は遠慮した。後から足早に近づいてくる足音に立ち止まるとK君がいた。「風が出てきたみたい」あまりの意外さか、どこかで期待していたのか気が動顚しているようだ。「うれしい人に会えて騒いでるんだなきっと」「そんなー。お子さんは何人ですか」私はあがっているなと自分で思った。「中学生と下はまだ小学生さ。僕は結婚が遅かったからなあ」彼は県庁に勤めるお役人で今課長だという。「本当はね、君が結婚して幸せにやってるのを見届けてから結婚したんだ。あのころは就職したばっかりで、結婚するって挨拶に来た君を無理にやめさせて幸せにする自信がなかったんだよ」。私はあの時「やめてくれよっ!」でも「少し待ってくれ」でもいいから期待していたのに。「おめでとう……お祝い何がいい?」とあっさり言われて打ちひしがれて帰った秋の夕暮れが思い出された。「結婚したかったなぁ、君と……」意外だった。何気なさそうに肩にかけた手をかわして私は駆け出してしまった。彼はどういうつもりだったんだろう。大分お酒も入っていたし──。あれでよかったと思うが少し惜しかったような気もした。交際上手な勤め人の顔を持ってるかと思うと少年のような雰囲気が過ぎるようにも見えた。
 今日は勤めのはず、どんな顔で机に座っているのだろう。肩に残った手の重みを振り払ってアクセルを踏んだ。実家の母の心づくしの山の幸のたくさんの土産を積んで帰る途中、車を停めて、夫の酒の肴にと好物の鰤の刺身を買いたした。

《おわり》




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posted by maruzoh at 06:54| Comment(0) | ◆澤田節子作品集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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