やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2012年06月26日

俺様とマリア volume.62 ど真ん中からの風景


俺様とマリア volume.62 ど真ん中からの風景


 右手のグリップを解くと俺様は元ゴクの道着の帯を掴んだ左腕を更に高く掲げて、奴の体を真上にはね上げるように肩から浮かした。一瞬の静止の後の急転直下。元ゴクは頭からリングに向かって物凄い勢いで落下を始める。俺様はその体をリバースパイルドライバーの体勢で勢いを殺さぬままホールドすると、開脚をして超合金の頭頂部をマットに突き刺した。

ゴキャグワラガシャアァァァァァンッ!

 青白い火花が散った。

ダッ、ダァン

 雷鳴が轟いたかのような凄まじい衝撃音の中、元ゴクの体がバウンドして大の字になった。あまりの衝撃で波打っているリングの中央、信じられないことに洗面器ほどの穴があいている。エディのおっちゃんとの特訓でも、ダミー人形が壊れちまうほどの威力だったけれど、スーパーヘビー級の元ゴクが相手となると想像以上の衝撃で、技を掛けた俺様も思わず総毛立っちまった。
 驚異と恐怖に静まり返った会場の中、俺様の新必殺技を見事に言い当てたのは、やはり本部席の神龍だった。震える指でリングを指した神龍は粟立った心を落ち着かせるためだろう、大きく息を吸い込んでからこう言った。

「ス、スタイナー・スクリュー・ドライバー。
スコット・スタイナーの必殺技SSDだ。
けが人が続出して封印されちまったあの荒技を、
現代に復活させる野郎が、ま、まさか出てこようとは・・・」

 立ち上がった俺様は大の字に横たわる元ゴクを上から見下ろした。眼を閉じたままの元ゴクはピクリとも動きやしない。超合金製のショックアブソーバーでも、流石にこの超弩級の衝撃には耐えられなるはずがない。いやいや油断は禁物、十八番の死んだふりかもしれない。

(なあに、万が一元ゴクが立ち上がってきたなら、
倒れるまで繰り返し何発でもSSDを喰らわせてやるまでだ)

 そう思った俺様が大きく深呼吸しても、まだ元ゴクは動かない。上から覗き込む俺様の顎から滴った汗がひと滴、元ゴクの額に落ちて弾けた。と、それを切欠にしたかのように、元ゴクがまるで澄み切った朝の目覚めさながら、ゆっくりと眼を開く。ほんの僅かな間の後、元ゴクが笑った。

「夢を見ていたよ、楽しい夢をな。
俺は獄真会館の看板を背負っているんだよ。
そう、獄真の代表として世界最強のレスラーと闘っているんだ。
一進一退の攻防の末、俺は真っ逆さまにリングに突き立てられて・・・
稲妻が、閃光が走ったような気がした。
ありゃあ、一体なんだったんだろうな?」

 静かに話す元ゴクは、憑き物が落ちたように穏やかだ。対する俺様の方も臨戦態勢をもうすっかり解いちまって、凪のような心持ちになっている。

「SSD、スタイナー・スクリュー・ドライバーだよ」

 元ゴクはまた眼を閉じると左右に小さく首を振った。

「ああ、あの技か、道理で。
夢の中でも、とんでもねえ技だったよ。
スタイナーブラザーズの弟、スコットだったっけ?
忘れねえよ、あいつが馳に決めたのは凄かったなあ・・・」

 俺様は笑いながらそれを否定した。

「いいや、違うな。
今、俺様がお前に決めたSSDの方が遥かに、何倍も凄えよ。
あのリングの穴が何よりの証拠だ。
それにな、お前が見たのは夢なんかじゃねえ。
だってそうだろ?
さっきお前は、プライドという名の獄真の看板賭けて俺様と闘ったんだ。
この新宿最強の俺様とな・・・
いい闘いだったよ。
そこにはプロレスへの憎悪や嫌悪なんて、これっぽっちも無かったはずだ。
でもどうだい、お前の好きだったプロレスは、やっぱり凄えだろ?」

 奴は少し照れながらなぜか本部席の神龍の方を見て言った。

「へへへ、正直認めなきゃならねえだろな。
実際、まだ立ち上がることすらできねえんだから・・・」

 元ゴクは神龍に向かって震える両手でゆっくりとバツを作ってみせた。

カンカンカンカン・・・

 それを見届けた神龍がゴングを打ち鳴らす。前の試合のB・Bへと送られたやさしげな音色に比べると、明るく清々しく聴こえたのは俺様だけじゃないはずだ。

「今までに、キックボクシングやマーシャルアーツ、総合格闘技やK−1、
様々な格闘技が爆発的な人気で日本国民を魅了してきた。
でも、それらはなぜかいつも打ち上げ花火のように一過性のブームで終わり、
栄枯盛衰の末、いずれもことごとく表舞台から消え去っちまった。
しかし終戦後、力道山から連綿と紡がれてきたプロレスというジャンルは、
浮き沈みこそあれ、決して途絶えることはなかった。
そこに熱病のような派手さはなくとも、
プロレスは、地に足をつけて一歩一歩進んで、
闘いを通して俺様たちに勇気と感動を与え続けてくれた。
そりゃあ、かつてお前が経験したように心底がっかりさせられたり、
腹立たしさから暴動にまで発展した試合も、確かにあった。
でも、そんな八百長だのインチキだのの謗りを受け止めて、
それを覆しながら、プロレスは前を向いて進んできた。
創り出すより持続させ、発展させる方が地味だけど遥かに難しいんだ。
さっきお前が見たいって言ってた新しい風景だって同じさ。
すっかり新しい世界に飛び込んじまうのは正直簡単なことなんだ。
自分に必要とされるのは飛び込んじまう勇気だけで、
他には何の努力もなく刺激のある毎日が待っているわけだからな。
でもな、目新しいのは大概最初のうちだけなんだ。
その世界だってすぐに同じことの繰り返しになっちまう。
そして、また新しい刺激が欲しくなるんだ。
俺様は思うんだよ、特にマリアと出会った今。
本当の新しい風景ってのは、新しく変わった自分が見る風景なんじゃねえかなと。
これまでも俺様が毎日のように目にしていたはずのものが、
マリアに出会ってからこっち、すべて輝いて見えるんだよ。
おんなじ新宿の街が、まるで違った世界にいるみたいなんだ。
なぜだろうって考えたんだけど、
今の俺様の心にはいつだってど真ん中にマリアがいるんだ。
お前も、きっと同じだよ。
そのど真ん中にお前が据えるのが愛する女か、空手かは俺様にはわからないがな。
でも、誰にだってど真ん中は必ずできる、誰だって変われるんだ。
誰にだって新しい風景が見られるんだよ」

【To be continued.】






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 現代小説 俺様とマリア

posted by maruzoh at 15:23| Comment(0) | ◆俺様とマリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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