やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2012年06月18日

俺様とマリア volume.59 元ゴクの告白


俺様とマリア volume.59 元ゴクの告白 


 兜十蔵博士が造り上げた超合金Zは、金属結晶の原子の並び方の乱れ、すなわち各子欠損のない金属であり、日本の富士の裾野にしか存在しないジャパニウムという鉱物から生成されている。父の遺志を継いだ天才兜剣造博士は、その超合金Zを特殊な過程で更に精製することにより、大幅な軽量化を達成しながらにして、硬度はその4倍という最強の超合金を造り上げた。
 そして眼前で下品な笑いを振り撒いている角刈りの元獄真会館の改造アンちゃんは、その最強超合金を額、拳、肘、膝、脛、甲に装備させ、通常の人体では想像も出来ない破壊力の攻撃をするばかりでなく、同時に急所と言われる部位の補強をもその硬度で為している。

「おい、プオタ野郎、理解できたか?
これでてめえが勝てる見込みは限りなくゼロに近くなったってことを。
今のうちに土下座でもすりゃあ、痛い思いをしなくて済むぜ。
どうだい?
貴方様の仰るとおりプロレスは八百長のインチキでしたって、
手えついて頭下げんなら、許さない訳じゃねえぞ、へっへっへ」

 おいおい、この元ゴクの野郎も、あのリンダに負けず劣らずの性格の悪さだぜ。リンダも元ゴクも恋人はおろか、友だちなんて1人もいねえんだろうなあ。可哀想に・・・

「おい、どうなんだよ。
認めたらどうなんだ、プオタ野郎」

 俺様が土下座なんてするわけは無えだろ。それより俺様には、さっきからちょっと気になっていることがあった。

「お前、プロレスのことを八百長だの、インチキだのって散々言う割に、
技やレスラーの名前だとか結構知ってんじゃねえかよ。
元ゴク、お前本当はプロレス、好きなんじゃねえのか?」

 俺様の不意な質問に元ゴクは一瞬息を飲んだ。が、にやりと口元を歪ませて笑った。

「ああ、そんなこともあったよ、確かに・・・」

 苦り切った表情でぺっと唾を吐き捨てた元ゴクは、まるで忌まわしい過去でも思い出すかのように、俺様に向かって静かに語りだした。

「そうさ、俺は新日本プロレス、猪木信者だったよ。
百獣の王ライオンをトレードマークとしたキングオブスポーツ。
その他団体とは一線を画するストロングスタイルで、
世界最強を標榜して他の格闘技と死闘を繰り返したアントニオ猪木。
あのモハメッド・アリとのがんじがらめのルールの中で引き分け、
ウィリアム・ルスカをバックドロップで葬り去り、
モンスターマンを脳天杭打ちで戦闘不能にした猪木。
俺は猪木に心酔しきっていた。
そして、俺はプロレスこそ最強の格闘技だと信じていたんだよ。
あの試合まではな・・・」

 俺様が道着に刻まれた「獄真会館」の4文字をじっと見つめているのに気づいた元ゴクが、暫しの沈黙の後で小さく頷いた。

「そうだよ、この獄真会館の4文字。
獄真会館世界大会王者ウエラー・ウィリアムスとの試合のことさ。
あれは結果こそ痛み分けの引き分けだったけれど、
リング外でも腕ひしぎを離さない猪木を見て、俺は愕然としちまった。
それどころか激しい憤りを感じたんだ、これがキングオブスポーツかってね。
あれは誰がどう見たってノーコンテスト狙いの逃げだよ。
俺が神様と崇めていた猪木が逃げたんだよ。
俺は裏切られたんだ、猪木に。
いや、猪木だけじゃない、俺はプロレスそのものに裏切られたんだ。
1度そう考えちまうとな、これまで見てきた数々の名勝負が、
実に如何わしくて薄っぺらな物に見えてきちまうんだよ。
それこそ、相手の協力なしでは成り立たない大技や、
ロープに振られて返ってくる姿を見ているだけで、
俺はもう吐き気がするほどの嫌悪を感じ出したんだ。
そして俺は、反対側のコーナーに立った男の歩んできた道を選んだんだ」

 そうだったのか。俺様はふうっと溜息をつくと元ゴクに語りかけたんだが、それが意外なほど優しい口調だったのには、正直自分でも驚いた。

「お前の気持ち、分からないではない。
いや、大事なものに裏切られた気持ちは当人しか分からないか・・・
でもお前は、本当にプロレスが好きだったんだろ?
プロレスが好きだからこそ異種格闘技戦でプロレスを応援したんだ。
だったらわかるはずだよ。
本来のプロレスってのは、もっとこう懐の深いもんじゃねえか?
闘いを通じて生き様を見せると言ってもいいだろう。
だとすれば、あの試合はプロレスではなかったかもしれない。
だからこそ、お前の心に届かなかったんじゃないのか?
自分自身でさえも気づいちゃいないんだろうが、
お前からは今でもプロレスへの未練、いや愛が滲み出てきてんだよ。
なあ、どうだい元ゴク。
あの日の不完全燃焼だったウエラー猪木戦を、
今このリングの上で、俺様とお前で再燃させてみねえか。
焼けぼっくいに火をつけてここで完全燃焼するんだよ。
俺様は負けねえよ、プロレスを背負うんだから。
お前もその胸の4文字を背負うんだ。
終了のゴングが鳴った時、お前にはきっと違う風景が見えているはずだ。
勝っても、負けてもな。
さあ、夢の続きをもう1度見てみようぜ」

【To be continued.】




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 現代小説 俺様とマリア

posted by maruzoh at 12:56| Comment(0) | ◆俺様とマリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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