俺様とマリア volume.57 DDT試し斬り
「へへへ、まずはこいつでどうだっ」
ダッ ダダダダッ
一旦2歩ばかり後退りした元ゴクのアンちゃんは、コーナーポストを背にした俺様めがけて猛烈な勢いで突っ込んで来た。直角に曲げられた右腕の前腕部が俺様の顔面を狙う。ネプチューンの三つ又の槍、初期型のアックスボンバーだ。1983年6月2日蔵前国技館での第1回IWGP優勝戦、エプロンサイドでロープ越しにハルク・ホーガンのアックスボンバーを被弾したアントニオ猪木はリング下で昏倒。舌を出して失神KO負けの憂き目に会い、世界統一とその制覇という野望を木端微塵に打ち砕かれたという曰く付きの荒業だ。
ザザッ ガアアァァァンッ
一瞬の隙を突いて元ゴクの右脇の下辺りからコーナーを転がり出た俺様は、背後で物凄い音を聞いた。とても人間が繰り出した技によって起きる衝撃音とは思えねえ。振り返ると勢い余って飛び出したんだろう、ターンバックルに乗り上げるようにする元ゴクの向こうで鋼鉄製のコーナーポストがへこんでやがる。何てえ硬度だい。
元ゴクはにやりと笑ってゆっくりと振り向くと、また先ほどのように通せんぼスタイルでジリジリとにじり寄ってくる。
「おい、プオタ野郎。
ほら、この腕を取ってだな、てめえの十八番、
泣く子も黙るって言う垂直落下式DDTをかけてみたらどうだい。
へへへ、ただしだ・・・
この超合金仕様の頭部にダメージを与えられる自信があればの話だがな。
へへへ、ふはははははは・・・」
気に入らねえな。でも実は俺様も先程からそれを考えていた。本当に投げ技は効果がないんだろうか。いくら超合金仕様って言ったって、それを支えているのは生身の体なんだぜ。まさか超合金製の脳って訳じゃあるまいし、垂直落下式DDTクラスの破壊力ならダメージがないはずない。
「ほ〜う、その表情から察するに、
まだ投げ技に一縷の望みを持っているってのか?
てめえも大概物分りが悪いプオタだな、無駄だよ、無駄。
納得いかねえってか?
だったらこうしてだな・・・
ほら、ご自由におかけください、ってのはどうだい?
ふはははははは・・・」
あまりにもフザけた元ゴクの態度に、俺様のこめかみにじゅん菜のような青筋が浮かび上がった。売られた喧嘩は買う。なめられたら徹底的にやり返す。俺様はそうして今まで生きてきたんだ。半チク改造野郎にここまでコケにされて黙っていられるか。
「この小僧があんまり調子に乗るんじゃねえぞ。
おもしれえ、かけてやんよ、DDTを垂直落下式でな。
見事に立ち上がって見せてもらおうじゃねえか。
所詮は6丁目のモグリの医者にカネ積んで作ってもらったインチキ野郎だろ?
超合金におんぶに抱っこのお前の化けの皮、
俺様が今ここでひんむいてやるよ」
余裕の表情の元ゴクが笑いながら両手を脱力して突き出した。リング上の異様な光景に客席がざわめている。
「へへへ、俺が立ち上がったら必殺技の看板、降ろしてもらうぜ。
さあ、垂直落下式DDTの試し斬りの始まりだ」
俺様はされるがままの元ゴクの右腕を首に巻きつけると、右腕を元ゴクの首に、左腕を道着の帯にかけた。そして、大きく、ゆっくりと鼻から息を吸い込む。
「うっしゃああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
気合一声。元ゴクの体が引っこ抜かれるように抱え上げられて、垂直の状態で静止した。神龍が本部席から立ち上がるのが見える。
「喰らえっ!」
ガガガゴグワアアァァァァァァンッ!!
ジャストミ―――ト。完璧のタイミングで元ゴクは脳天からリングのど真ん中に突き刺さった。
【To be continued.】
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