俺様とマリア volume.45 掟破り
逃げ水さながら。まるで渋谷王者を嘲笑うかのように、ウェアウルフの片足を手繰ったはずのB・Bのその手は虚しく空を切り、捕らえたはずのウェアウルフは、何事も無かったかのように更にその2メートルほど後方で身構えている。超高速のステップバックなんだろうが、エディのおっちゃんと特訓した俺様でさえ、瞬時には捉え切れなかった。
「強者は強者を知る」。以前エディのおっちゃんに言われた言葉どおり、B・Bの顔から余裕の笑みが消えた。B・Bは体勢をより小さく構えると、その巨体からは考えられないような軽快なステップワークを駆使し始める。対するウェアウルフは・・・
ダダッ!
俺様は息を飲んだ。これぞあっという間という表現がふさわしい速度で、ウェアウルフが一気に間合いを詰めた。B・Bは即座にこれを迎撃、左右のショートフックからアッパーを矢継ぎ早に連射する。
シュシュシュッ シャシャシャッ
ところがこの超高速パンチの連打が、かすりもしない。ウェアウルフの動体視力とウィービング、ダッキングが完璧すぎる。しかも、しかもだ。恐らくこの超高速の攻防で、この闘技場内、気づいているのは対峙する両者と俺様の三人だけなんだろうが、ウェアウルフはパンチの打ち終わりにぺろっと「舌」を出してやがるんだ。そう、これは俺様が1回戦のデュラン・黒川戦で格の違いを見せ付けるためにやった挑発行為そのまんまじゃねえか。しかもデュランとB・Bじゃ、パンチの速さがクソほども違うんだぜ・・・
焦りの出たB・Bのパンチがやや大きくなったのを、ウェアウルフが見逃すはずが無い。
ブウウゥン ダッ
右のロングフックをダッキングでかわした勢いそのまま、一足でB・Bの背後に回りこんだ。
(おいおい、これも俺様が1回戦で使った手じゃねえかよ・・・)
俺様は1回戦、ここから華麗なドラゴンスープレックスで勝利を飾ったんだが、ウェアウルフは敢えて間合いを取ったまま、肩をトントンと叩いてみせる。完全にコケにされたB・Bは、もはや冷静でいられる筈が無い。怒り、いや、それ以上に奴の心を占めているのは、かつての幾多の闘いでは味わったことが無い恐怖だろう。
まるで上級生にいじめられた下級生が泣きながら反撃をするように、追い詰められたB・Bはウェアウルフに比して明らかに勝っているであろうパワーだけを頼りに、振り向きざま相撲で言うぶちかまし、ショルダータックルを仕掛けた。
ザシャアァァァッ
ガシッ
闘技場内の誰もが我が眼を疑った。ウェアウルフが左手1本でB・Bのタックルを受け止めている。あのB・Bの巨体が身じろぎも出来ずにいるんだ。俺様は思わずモニターの画面を引き寄せて見ちまった。するとどうだい、受け止めたウェアウルフの爪が、B・Bの右肩に深く食い込んでいるじゃねえか。ウェアウルフがにやりと笑ってから血まみれの左手を引き抜くと右腕でがっちりとフロントネックロック。苦痛に歪んだB・Bの太い首を抱え込んでから右腕を自分の首に巻きつけてると左手でB・Bのスパッツを握り締めた。
畜生、俺様に見せつけるような今までの攻撃パターンからして、ここでウェアウルフが繰り出す技といったら、あの垂直落下式DDT以外ねえだろうよ。
【To be continued.】
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