俺様とマリア volume. 31 1回戦 ヴァーサス デュラン・黒川
デュラン・黒川は、根っからのボクサーのようだ。テレビなんかでやってる総合格闘技とかに比べて、はるかに制限の少ない・・と言うよりもルールなんて全く無い裏社会の最強決定戦に、敢えてグローブとマウスピースつけて、おまけにリングシューズまで履いてんだから。ただ、ほぼヘビー級の体格(ガタイ)に見たとこ6オンスのグローブってのは、ちょいとばかり効きそうな感じだな。
「シュシュッ シュシュシュシュッ」
(ほ〜う、シャドウもいい線いってんじゃん)
シュタタタタタタタッ シュタタタタタッ
フットワークもかなりなもんだ。なぜ裏の賭け拳闘になんかくすぶってやがんだろ。これなら日本チャンプ位なら軽いんじゃねえの?確かに国内に同じ階級の対戦相手がほとんどいないとなれば、飯を喰うのも楽じゃない事情は分からないわけじゃないけど、思い切って一か八か海外にでも進出してみるだけのレベルのボクサーだよ、お前さんは。
(でも、やっぱり花ちゃんの迫力と比べちゃうと、見劣りしちゃうんだよなぁ。
それに、特訓を終えた俺様にとっちゃ、その程度のスピードじゃ・・・)
デュラン・黒川を見て、そんなことを考えていた俺様に大会の進行係が歩み寄ってきた。
「Eノイズさん。
時間がありませんので早くリングコスチュームに着替えていただけませんか」
俺様はTシャツの袖をまくりながら鼻で笑ってやった。
「へん,コスチュームだぁ?
俺様は、根無し草のバンドマンだぜ。
産まれついての喧嘩屋にゃ、Tシャツにジーンズ、そしてブーツが正装さ。
俺様はもう、いつだってオッケーだぜ。
新宿チャンプ、さあ遊んでやるから掛かってきな」
身も心も臨戦態勢に入って、俺様の副腎皮質からアドレナリンが溢れだして、体中を駆け巡り始めた。
「おらおらおらぁ!
早くGONGを鳴らせえぇぇぇ!」
俺様の叫びに気圧されまいと、リングアナが思いっ切りゴングを打ち鳴らした。
カアアァァァァァァァァァァン!
「だっしゃあぁぁぁっ!」
ザザザザザザザザザッ
「シュッ シュシュッ」
ザシャァッ!
ブンッ ブブンッ
うおおおぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉっ!
ゴングと同時にデュランに向かって猛ダッシュをした俺様は、それに合わせてきた左ジャブとワンツーを、急ブレーキを駆けてから頭を振ってかいくぐると、全く触れられもせずに奴の懐に入ってみせる。お客は大喜び。大歓声だ。
「シュッ シュシュッ シュッ シュシュッ」
デュランは矢継ぎ早にアッパー、左右のショートフックと接近戦用のパンチを繰り出すんだが、これが俺様の神技的なダッキングとウィービングでかすりさえもしない。
うおおおぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉっ!
またまた大歓声。どうだい、すげえだろ?名伯楽のエディのおっちゃんと2匹の野良犬特訓で、対ウェアウルフ用にリニューアルした俺様の動体視力と反射神経は?
デュラン・黒川に焦りが出る。そりゃそうだろう。こんなに接近してるってのに1発のパンチも当たりゃしないんだから。
シュ シュ シュ シュッ べろ〜ん
今度は1・2・3・4の左右のパンチを頭の動きだけでかわすと、俺様は舌を出してみせた。
「悪いなチャンピオンのデュラン・黒川くん。
この程度のパンチなら、俺様には蝿が止まりそうに見えるんだよ」
「くっ、くそぉっ!」
ブンッ ブブンッ ブブブンッ!
唸りを上げるボディ、アッパー、フック、ストレート、最後に打ち下ろし気味のロングフックを、俺様は泳ぐように余裕綽々ですり抜ける。
「へへへへへ、無駄無駄。
じゃ、こんなのはどうだい?」
ややつんのめり気味のデュランの背後に、俺様は一足で一瞬のうちに回り込む。そして脇の下に両手を差し込んでおいて、その両手を奴の首の後ろでロックする。肩関節を極めながら首を前方に倒し気道を圧迫する、拷問技「フルネルソン」の体勢だ。
「ぐ、ぐぐぐぅぅぅ・・」
拳でぶん殴ることしか知らないボクシング一筋のデュランは、身じろぎも出来ずに呻るばかりで、もはや為す術が無い。口の端からは細かな泡が漏れ始めた。
「おいおい、これでギブアップだなんて言わないでくれよ。
ここからが仕上げなんだからさ。
そりゃあぁぁぁっ!」
俺様はクラッチした両手を離さずに、デュランの体をへその上に乗せる様に思い切りブリッジをして、急角度で後方に反り投げた。デュランの後頭部が硬いマットに突き刺さる。
「う、うわあぁぁぁぁぁ・・・」
グシャゴワキィィィッ!!!
うおおおおおおぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!
デュランの断末魔の叫びの後、場内は割れんばかりの歓声に包まれた。これぞ藤波辰爾のドラゴン殺法!飛龍原爆固めこと元祖ドラゴンスープレックスホールドだぁ!
【To be continued.】
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