やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2012年04月05日

俺様とマリア volume.24 名伯楽登場


俺様とマリア volume.24 名伯楽登場 


 ゴールデン街のバー「GBH」での俺様と神龍の一件は、今新宿のその筋では最もホットな話題となって、あっという間に街中を駆け巡ったようだ。そのおかげであれ以来、何処に行っても、誰に会っても、「なんてもったいないことしたんだ」だとか、「なんて恐れ知らずなことをしたんだ」だとか、飲み屋の親父やお姉ちゃん、果ては定食屋のおばちゃん連中にまで1日中いらぬ説教を食らい続けるものだから、俺様はもういい加減うんざりしちまっていた。
 そんなでっけえお世話に辟易した俺様は、人を避けるために新宿でも割と人通りの少ない4丁目の裏路地にいる。新宿4丁目って言うと甲州街道の南側。JR新宿駅の新南口の辺りを言う。
 その4丁目の交差点近くに、現代的な建物のタイムズスクエアと向かい合って、時代に取り残されたような徳川家縁(ゆかり)の天龍寺がある。この名刹の裏通り、新宿高校との間の路地に安ビジネスホテルがいくつも並んでいる。ビジネスホテルって言やあ聞こえはいいが、昔で言う木賃宿並ってのもいっぱいあって、相部屋素泊まりなら1000円台なんて看板も結構目に付く。
 俺様はなんとなくその辺をうろついて、適当なヤサはないもんかと物色していたんだが、

ドサッ! ゴロゴロゴロ・・

 突然ホテルの入口から足元に転がってきた黒い塊に驚いた。

「出て行きやがれ、この田舎モンがっ!
よくもまぁ、1銭も持たずに泊めてくれなんざ言えたもんだ。
ウチは商売で宿屋をやってんだよ、一昨日来やがれってんだ!」

 安宿の女将はそう捲くし立てると、凄い勢いで玄関を閉めちまった。俺様が足元を見下ろすと、どうだ。宿の女将に蹴り出されて罵倒されていた黒い塊が俺様の脚にしがみついてきて、か細い声で切れ切れにこう言った。

「た、助けてくれ、兄ちゃん・・・
も、もう、丸2日メシを喰ってねえし、
3日も布団で寝てねえんだよ・・・」

 頭陀袋かゴミ袋と思っていたのは、なんだい、おっさんかよ。ホームレス・・とは、ちょっと違うようだな?でも、えらく汚え親父だぜ。親父は俺様の目をじっと見つめて、懇願するように両手を合わせると、涙を浮かべてこう言った。

「兄ちゃん、都会は、恐ええなあ・・・
招待されて、産まれて始めて東京の新宿に来たっけが、
着いて間もなく置き引きに遭っちまってなぁ。
何処に連絡していいかも分からずに、もう3日も彷徨ってんだ。
ああ、腹減ったなぁ・・・」

 はあ?ま、迷子かよ。しかしいくらなんでも、普通3日も新宿彷徨うかってえの。お巡りにでも道聞きゃいいじゃねえかよ。田舎モンにも程があるぜ。呆れるを通り越して、天然記念物並みの貴重な存在だよ。でも・・・

「兄ちゃん・・」

 マリアとの出会いもそうだったけど、こういう風に困ってる奴のことを、どうしても放っちゃあおけねえんだよな、俺様は。

「おっちゃん、そりゃあ災難だったなぁ。
俺様も腹が減ってきたとこだ。
一緒にメシでも喰いに行こうぜ」

「えっ?い、いいのかい?本当に?
兄ちゃん、ありがとな・・・
ありがと、本当にありがと・・・」

 おっちゃんの顔がぱあっと明るくなった。涙声で「ありがと」を繰り返すおっちゃんを抱き起こすと、俺様は甲州街道に向かった。確か4丁目の交差点の角に吉野家があったよな。うん、オレンジ色の看板が見えた。

「おっちゃん、牛丼でいいか?」

「兄ちゃん、本当にありがと。
俺、牛丼大好きだよ」

 おっちゃんは結局、牛丼大盛に卵、お新香、味噌汁をあっという間に平らげると、非常に恐縮そうにもじもじしながらお替りを申し出て、更に牛鍋丼並盛りを1杯ぺろりと喰っちまった。

「ところでおっちゃん、
招待されて、どこかに行くはずだったんだろ?
新宿の何処だい?連れてってやろうか?」

 俺様の問いかけにおっちゃんは、うんうんと頷きながらしんみりと言った。

「本当に兄ちゃんは、いい人だなぁ。
迷惑の掛けついでに、そんじゃあお願いしようかな。
このお礼は必ずさせてもらうからよ」

「礼なんか気にすんじゃねえよ。
で、どこ連れていきゃいいんだ?」

「ああ、確か神龍さんの事務所って言われたんだけど、
鞄ごと地図を置き引きに・・・」

「何、神龍だと?」

 思わず俺様はおっちゃんの声を遮っていた。カウンターの向こうのバイト君が、俺様の殺気にビクッと反応した。

「あ、ああ、俺、神龍さんに呼ばれたんだよ。
よかったよ、兄ちゃん、神龍さんと知り合いかい?
色んな人に神龍さんのこと尋ねたんだっけが、
なぜかみんな、青い顔して逃げちまうんだよ・・・」

 俺様は苦笑いしながらおっちゃんを見た。

「おっちゃん、悪いな。
知っちゃあいるんだが、神龍とはあんまりいい知り合いじゃねえんだよ」

 この時、おっちゃんの瞳が鋭く光るのを俺様は見逃さなかった。

「兄ちゃん、ひょっとしたら今度のトーナメントに出るんじゃねえか?
さっき兄ちゃんに担がれた時に分かったよ。
こいつはファイターだって、しかも超一流の。
実に柔らかくて張りのある、いい筋肉だった。
それでいて必要以上に体脂肪を落としちゃいない。
減量が常のボクサーとは根本的に違う。
さりとて、総合のようでいて総合でもない。
ならば残された選択肢は1つ。
こいつはまさしく、リアルプロレスラーだ!」

「お、おっちゃん・・・
あんた一体何者なんだ?」

「へへへへ、俺かい?
俺は、格闘技のトレーナーさ。
周りからは、エディさんって呼ばれてる。
静岡の片田舎でジムをやってるんだが、
神龍さんの要請である男の臨時トレーナーに雇われたんだよ」

「ふふふ、名伯楽エディさんを気取ってる訳だ」

 エディのおっちゃんは頷いて、続けた。

「しかしだな、兄ちゃんがそのトーナメントに出るってんなら、
こんなに世話になってる俺が反対コーナーに立つってのは、
あんまりにも義理を欠いたことになっちまうよな。
なあ、そうだろ、兄ちゃん・・・」

【To be continued.】




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 現代小説 俺様とマリア

posted by maruzoh at 10:52| Comment(0) | ◆俺様とマリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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