俺様とマリア volume. 18 リンダの本性
花ちゃんが、倒れた。
まるで、花びらが散るように、花ちゃんは倒れちまった。はらはらと、ゆっくりと宙を舞うように。でも、苦痛に歪んだ表情の本当の理由は、どてっ腹にめり込んだ2発の凶弾のせいじゃねえ。
「リ、リンダ・・どうして・・・」
蹲(うずくま)る花ちゃんの視線の先には、手のひらに隠れるくらいの小さな銃を握り締めて、立ち昇った硝煙に顔を背けるような仕草のリンダがいた。
「この青春馬鹿どもの役立たずが・・・」
リンダは舌打ちしながらそう言うと何かの合図なのだろうか、左手をさっと上げた。
「リン・・ダ・・・」
腹を押さえて立ち上がろうとする花ちゃんだけど、さすがの花ちゃんだってそいつは叶うはずがねえ。首だけを何とか上げて、尚もリンダを見つめる花ちゃんの瞳から、大粒の涙がボロボロと零れ出した。
「リ、リンダ・・・
おいらのこと、愛してるって、言ってくれたよな・・・
おいらと一緒に暮らしたいって、言ってくれたよな・・・
リンダ、あれは嘘だったってのかい、ああ、リンダ・・・」
さっきのリンダの合図でやってきたんだろう。黒塗りのベンツが猛烈な勢いでこっちに向かって来て、リンダのすぐ後ろに停まった。
キキキキ―――ッ!
後部座席のドアが開けられてシートに乗り込む前、リンダは何かにふと気づいて車の下から何かを拾い上げた。ぺしゃんこになっちまったプレゼントの花束だった。そのほとんどの花が落ちちまった花束を手にしたリンダは数歩歩み寄ると、真っ赤に染まった花ちゃんの腹の辺りにそれを投げつけて言った。
「折角だけど、こいつはお返ししとくよ。
しかし、ステゴロの花も錆付いちまって、ザマぁ無いね。
もてないこと以外は、とんだ評判倒れだったよ。
じゃあね、お人好しのハナチャン、クククク・・・」
「こ、この野郎っ!」
俺様はぶち切れそうになって、リンダに殴りかかろうと1歩足を踏み出したけれど、その瞬間リンダの背後、ベンツの車内から4つの銃口が俺様にぴたりと照準を合わせたのが眼に入った。
「ぐ、ぐうぅぅぅぅ・・・」
どうにも動きが取れなくなっちまった。全く以って、かっこ悪いことこの上ねえ・・・
「焦んじゃないよ、ギター弾きの坊や。
神龍さんからのきつ〜いお達しでね。
そっちのお2人さん、特にマリア嬢は、
無傷で生け捕りにしなきゃいけないんだよ。
銃声で騒ぎも大きくなっちまったみたいだし、お楽しみは次にしとくよ。
ただし、覚えときなよ、いいかい?
今の状況がそうであるように、
お前ら2人をただ消しちまうだけだったら、
神龍さんなら、いつだって、どこだって、簡単にできるってことをね。
ククク・・ククククク・・・」
そう言い残すと、リンダはベンツに乗り込みドアをバタンと閉めた。リンダを乗せたベンツは、タイヤを派手に鳴らして猛スピードで瞬く間に走り去っていった。
俺様たちは、あっけに取られてそれを見ていたけれど、はっと気がついた。
花ちゃん、花ちゃんを病院に連れてかなきゃ。
【To be continued.】
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