やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2012年03月13日

俺様とマリア volume.5 冒険の始まり


俺様とマリア volume.5 冒険の始まり 


 深夜の続き、朝の手前。春を待つ歌舞伎町午前4時は、善と悪の境目さえも凍てつく、ただの温かみのない空間。明けない夜は無いと人はよく言うが、この街の裏通りに巣食う者たちは、せっかくの朝の光をまるで拒絶するようにして、ようやく眠りにつき始める。そんな街の片隅、俺様もそれに習うようにして、やっと浅い眠りについた。

 BAR『バーディクト』のクローゼットの奥、コートやダウンジャケットの間から潜り込む小部屋は、追われた者を特別料金で泊める歌舞伎町の隠し扉。俺様がさっきシェルターって言ったのはこういう理由なのさ。
 俺様の助平な思惑通りに、俺様とマリアは三畳しかないスイートルームのダブルベッドで夜を越えるになったんだが、笑いとばしたいほどに怯えているマリアを、俺様はどうしても抱く気になれなかった。
 俺様は、何通りかのシミュレーションを頭に浮かべては、その度に恐らく足を引っ張る事になるであろうマリアの寝顔にキスをして、13回めのキスをした頃に俺様の神経をさかなでる鳩時計が4回鳴り、シミュレーションに見合うだけの体力を温存する為に俺様は無理やりに眠りにつくことにした。
 そして俺様は、8回の鳩の叫びで壁の向こうに見えないはずの太陽を感じ、眠らないはずの街で眠りから目覚めた。

「マリア、お目覚めの時間だ」

 マリアは本能的に胸の前にシーツを手繰り寄せると、

「お、おはよう・・・」

 と、震えた笑い声で応えた。俺様はおどけて、ギターでペール・ギュントの朝を爪弾いたが、マリアには不評らしく、マリアは背中を向けて身支度を始めた。あんなに怖がっていたくせに、女とは不思議なもので、マリアはたっぷり化粧に30分を費やした。おかげさまで13通りのシミュレーションのうち、ナンバー5とナンバー8が使用不能となってしまったことを、当のマリアは知るよしもない。
 更に俺様は、マリアの髪をポニーテールにさせる為の説得に18分を要しちまった上に、革ジャンとジーンズとスニカーをはかせるのに22分の時間がかかり、化粧も合わせると、なんと都合1時間10分もの貴重な時間を、小便と一緒に下水の配管に流し込むことになっちまった。
 冗談じゃねえよ。この馬鹿女の見栄や外見の為に、寝ずに考えた13通りのシミュレーションは、ただの徒労となりつつある。でも、なぜか俺様は、そんなマリアが愛おしくって、愛らしくって、何回もキャップをかぶり治すマリアを、鏡の後ろからギューッと強く抱きしめちまった。『バーディクト』特性の防弾革ジャンの上からでも、マリアの柔らかさは充分に感じられた。

「いくぞ・・・」

 俺様たちは軽くキスをすると、たった一つだけ残ったシミュレーション、作戦ナンバー1、コードネーム「正面突破」の作戦通りに、ドアを蹴破るようにして人気(ひとけ)のなくて眩しい、まるでゴーストタウンのような午前9時過ぎの歌舞伎町の裏路地に躍り出た。

「なるたけ、広い通りを行くぞ!」

「えっ?狭いほうが見つかりにくいんじゃ・・・」

 走り出した俺様は、やはり走るマリアに諭す。

「違うね。狭いとこで二重三重に囲まれた場合、身動きがとれねえ。
脱出するには、広い方が絶対に有利だ。
もちろん、見つかりやすいというリスクは負うがな」

 俺様は、遠方からの狙撃は無いと踏んでいた。マリアから聞いた神龍のチョーしつこくて残忍な性格からすると、万が一俺様が捕まっちまった場合、神龍はマリアの目の前で俺様をなぶり殺しにしなけりゃ気がすまないに違いない。ということは、神龍からの子分どもへの命令は、「生け捕りにしろ」ということになる。

「とりあえず、靖国通りに出るまで走るぞ!」

 俺様は元コマのあった辺りの裏手から区役所通りに出て、そのまま靖国通りまで走るという、最も単純明快な「正面突破」を選んだ。兵力はむしろ大久保やJRや西武新宿駅前に向いているだろうと踏んだんだ。
 しかし、兵力が少ないからって、そう簡単にいくとは思っちゃいない。見つかるのは承知の上、強行突破あるのみだ。こんな時間になっちまったのを幸いにして、最短距離で人だらけの靖国通り界隈の通勤ラッシュに紛れ込もうって腹だ。そのまま3丁目辺りまで走り抜けられたら、路駐のバイクでも直結させて2ケツで逃げることも可能かもしれない。
 そんな俺様の甘い考えは、だみ声の男の声で、霧散した。

「いたぞーっ!2人連れだ――っ!」

「!」

 マリアがビクッと反応する。

「そうら、おいでなすった!振り切るぞマリア!」

 俺様はマリアの手をぎゅっと握り締めると、心の加速スイッチを、カチッと押した。

【To be continued.】




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 大衆娯楽小説 俺様とマリア

posted by maruzoh at 08:16| Comment(0) | ◆俺様とマリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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