やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2012年02月27日

ケンと シロと そしてチビ 第21回


ケンと シロと そしてチビ 第21回 


「クロは子どもを産むために、雨露をしのぐ屋根があって、
それでいて安全な場所を探していたんだそうじゃ。
元々住んでいた街中には屋根があるところは多いんだろうが、
自動車やらなんやらのいろんな危険と隣り合わせらしいから、
確かに、子どもを育てるには不向きかも知れんのう。
ところが、夢中になって探しているうちに、
いつしか街中から離れてしまったらしいんじゃ。
それで、迷いに迷って、こんな山まで流れ着いてしまったと、
そう言っておったなぁ。

しかし、人気(ひとけ)のないこんな山の中じゃあ、
残飯の入ったゴミ箱だってそうそうあるわけじゃない。
山の中、食い物にこと欠いたクロが、
水っ腹で過ごした夜も一度や二度じゃなかったらしい。
その点、あの祠はと言うと、信心深い人間たちのお供えが、
途切れることなんてことは、まずないからのう。
いい所に目をつけたもんじゃよ。
まあ、子を持った母親は、誰でもしたたかになるんじゃろ。

あの日以降のわしとクロなんじゃが、
散歩の度、祠の周りで朝夕日に2回ずつ、
何となく話をするようになったんじゃが・・・
クロの奴と来たら、何かにつけてわしの『飼い犬根性』が、
気に食わないと言うんじゃよ。
飼い犬根性って・・
わしから言わせれば、飼い犬が飼い犬根性持たずにどうする!
・・と なるんじゃが、クロから見たワシは、
ご主人様の顔色ばかりを伺って自分からは何もしようとしない、
ただただ安穏と暮らすことだけが目的のダメ犬ということになるらしい。
そんな流されてばかりのわしが、クロには我慢ならんらしくてのう。
例えばクロ曰く、こうじゃ。

『あたしは、あんたが食えば死んじまうって言ってたお供えを
こうして毎日食べているけどさ。
どうだい?ちっとも死にやしないじゃないか。
それどころか、見てご覧よ、少し太ってきたくらいだよ。
結局さぁ、あんたは人間に騙されて
いい様に使われているだけのただの番犬、
つまりは、人間様の道具に過ぎないってことなのさ』

『そんなことはない!
俺はトーサンにも、カーサンにも愛されてるんだ!』

わしはクロに いつもそう反論したさ。
でも、クロはそんなものは妄想だと譲らない。
わしを利用するためにトーサンとカーサンは、
愛してる振りをしてるって言うんじゃよ。
あのやさしいトーサン、カーサンをそうまで言われたんじゃ、
そりゃあ、わしだって黙っちゃおれんだろう。
いつだって、喧々諤々の大喧嘩さ。
で、口角泡を飛ばす激論のその真っ只中、
いつも決まって トーサンの指笛が鳴っちまうんじゃ。
本当に、いつだって・・・
だからわしらはいつだって、
「フン」とそっぽを向きあったまんま別れたんじゃ。
そう、ふたりで笑って別れたことなんて、一度だってなかったさ・・・

家に帰るとわしも少しは反省してのぉ。
次の散歩では、笑って話そうとそう誓って家を出ても、
クロのあの顔を見てしまうとのう、やっぱりダメじゃった。
わしとクロは水と油なのかと思ったもんじゃわい。
最初はいい雰囲気で和やかに話していたとしても、
ふとしたきっかけで結局はまたいつもの繰り返し。
感情的に怒鳴り合って、お決まりの喧嘩になってしまうんじゃよ・・・」

 俺さまは、ククク・・と笑っちまったよ。

「そりゃあ確かに、仲がいいんだか悪いんだか、
どうにもわからない複雑奇妙な関係だなぁ」

 俺さまのそのの言葉に、じじいはこれまた悪戯そうに笑ってこう返したんだ。

「ふふふふ、そうじゃのう。
でも、わしとクロのふたりの間柄は、
誰かさんと誰かさんに、ちょっとだけ似とりゃあせんか?」

 俺さまの脳裏に数ヶ月前の月夜の晩、残飯を漁るスカしたシロと背中の毛を全部立てている俺さまの姿が浮かんで、そして消えた。

「シロとクロ・・・
猫と犬の違いはあれど、不思議な魅力を持ったふたりのノラ。
それが、こんな山の中の部落に・・・
ワシとチビ、それぞれふたりに訪れたんじゃからのぉ。
これも、何かの因縁かも知れん。
実は、シロがこの家を初めて訪れた時から
わしには、そんな気がしていたんじゃよ・・・」

 シロとクロなんて、でき過ぎていやがるが、でも、じじいとシロが出会った最初っから仲良くしていたってのも、今の話を聞いてみると、なるほどと合点がいく。じじいはきっとシロにあの日のクロを重ねて見ていたに違いない。そうか、じじいは、懐かしかったんだ。じじいのシロに対するあの態度ってのは、懐かしさだったのか。それに気づいた俺さまは、なぜかとても嬉しくなっちまった。

「チビ、笑わないで聞いて欲しいんじゃが・・・」

「わ、笑ったりしてねえよ」

 じじいの話を聞いて、俺さまは知らず知らず、にやけちまっていたのかな。俺さまは、ひとつ「エヘン」と空咳をすると、急に神妙な顔をしてみせた。

「それにしても、男と女ってのは、不思議なもんじゃ。
あんなに喧嘩ばかりしておったのに、なぜなのかのお。
自分でも気づかぬうちにわしの中で、
クロの存在が日に日に大きくなっていくんじゃよ。
なぜかわからんが、好きになってしまったんじゃ。
本当は、もっと長いこと会っていたいんじゃ。
トーサンの指笛を聞いた後もずっとずっと・・・
でものお、世間が狭くて純情じゃったワシには、
その思いを伝える術も、勇気も持ってはいなかった。
だから、ワシらはやっぱりその思いに気づきながらも、
毎回会うごとに喧嘩しては、指笛と共に帰ったんじゃ。
指笛を吹くトーサンを恨んだのは、あの頃だけじゃよ。

そして、そんなワシの思いを知ってか知らずか、
出産を間近に控えたあの日の夕暮れの祠、
ぱんぱんのお腹のクロは、突然わしに、こんな風にのう、
切り出してきたんじゃ。

『ねえ、アンタ。
お願いがあるんだけどさぁ』

クロにしちゃあ妙に殊勝な態度だと思ったもんじゃったが、
続きを聞いてワシは、我が耳を疑ったよ・・・

『アンタさぁ・・・
このお腹の子たちの、父親になってくれないかい?』

正直言ってワシには、クロの言っている言葉の意味が理解できんかった。
ワシは、しばらくの間ただ、ぼおっとしてしまったよ。
そんなワシを見つめたままクロは、こう続けたんじゃ。

『い、家を、飼い主を、捨ててさ・・・
アタシと、こどもらと一緒に家族になってさ、
一緒に旅に出ないかい?
もう、面倒な鎖なんか捨てちゃって、自分の思うままにさぁ』

クロのとんでもない告白にワシの頭の中は真っ白になっちまって、
トーサンの指笛が3回も鳴ったってのにちっとも気づかないままじゃった。

『ほら、ご主人様がお呼びだよ。早く行かないとどやされるよ。
す、すぐに返事が欲しいだなんて、アタシは言わないからさぁ。
せめて、お腹の子が旅立てる頃までには、返事を聞かせておくれよ。
そ、そうだ。
口に出して言いづらいんだったら、こうしよう。
今の話、オーケーなら、祠の右に。駄目なら、祠の左に。
桜の小枝を1本、置いといとくれよ、いいね、きっとだよ』

クロの言葉にあわててトーサンの元に駆け出したワシじゃったが、
到底頭の中の整理なんてつくわけもなくって、
クロの顔がただぐるぐると回っては消えていったよ。

クロ、こどもたち、トーサン、カーサン。
家、家族、鎖、自由、旅、祠、小枝、右、左・・・

そして、ワシはその晩からしばらくの間、そんな言葉を戦わせながら
眠れぬ夜を過ごすことになってしまったんじゃ・・・」

《つづく》





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 児童小説 ケンと シロと そしてチビ


posted by maruzoh at 08:58| Comment(0) | ◆ケンと シロと そしてチビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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