やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2012年02月25日

ケンと シロと そしてチビ 第19回


ケンと シロと そしてチビ 第19回


 初冬にしては暖かなお昼前の日差しの中。これまで毎日、腐るほど会ってきたはずなのに、俺さまはまるで初対面みたいな妙な緊張感でじじいと向き合っていた。じじいは、明らかに話しにくそうだった。

「おいおい、チビにそうかしこまれちまったら、
わしもちょっと恥ずかしくなってしまうわい」

 じじいの奴ったら、自分で切り出しといて、なに照れてやがんだよ。年寄りがもじもじしたってちっとも可愛くねえよ。じじいは暫くそうしていたけれど、神経質そうに動く俺さまの髭に気がついてかようやく話し始めた。

「人間も、犬も、そしてもちろん猫ものお。
歳を取って年月を経るにしたがって、
それまで気づかなかったものに気づいたり、
新しく何かを見つけたりするもんなんじゃが、
本当のことを言うとなぁ、チビ・・・
それは決していいことばっかりじゃ、ないもんなんじゃよ。
特に、ワシのようにほかの犬の倍近く生きていたりすると、
あぁ、見なけりゃ良かった、知らなければ良かったと、
そんな風に思うことも、実のところ、かなりあるもんなんじゃ。

そうじゃのう・・・
その出会いと言うのも、ワシが10歳を超えたころじゃったから、
ほかの犬の一生にしては、おまけの部分と言ってもおかしくもない、
今にして思えば、そんな、余分な出会いじゃったのかもしれないのお。
あの頃のワシときたら、10歳を超えてもまだまだ元気そのものじゃった。
トーサンも定年退職をしたばかりで、暇をもてあましていたようでのお。
朝夕2回ずつの散歩ばかりじゃなく、いろいろ遊んでくれたもんじゃ。
でも、やはりわしとトーサンのお気に入りと言ったらあそこ。
そう、例の河原から続く桜並木の土手。
あそここそが、当時のワシらの一番の場所だったんじゃよ。

秋から冬、冬から春にかけての桜並木。
ワシもトーサンも、日々移り変わるあの土手と河原が大好きじゃった。
そして、その、とある日の、とある出会いというのは、
春の日の河原、桜のつぼみがほころび始めた頃、訪れたんじゃ。
トーサンは、いつも河原に着くと「ふあ〜ぁ」と大きく伸びをしてから、
お気に入りの大岩に腰掛けてポケットから出したタバコを、
空に向けてぷか〜りとやり始めるんだ。
ワシはというと、河原で鎖をはずしてもらった後はいつも、
トーサンの指笛の合図までは、河原をはしゃぎながら駆け回っていた。
その日のワシも相変わらず、桜の木の下に行ってつぼみを眺めたり、
流れる川を覗き込んだりしながら、
指笛の合図が聞こえるギリギリの距離まで足を伸ばしていったんじゃ。
あの河原の入り口に祠があるじゃろ?
そうそう、お供え物やお神酒がおいてある古〜い祠じゃよ。
ワシは、その時あの祠の辺りに、ごそごそと動く影を見つけたんじゃ。
よく見るとその黒い影は、どうやら犬のようじゃが、
こともあろうに、お供え物の団子に喰らいついているじゃないか。
ワシはびっくりしたよ。
チビもトーサンに言われてると思うが、
その時までのワシは、神様や仏様のお供え物を食ったりしたら、
そりゃあひどいバチが当たるって信じていたし、
お供え物にちょっかいを出す度に、
トーサンにさんざん叱られてきたからなぁ。

『お、おい、止めときな!
そいつを食べると、バチが当たって、し、死んじまうんだぞ・・』

その台詞が、ワシが奴に掛けた最初の言葉だった。
そして、

『ご忠告ありがとう、でも、いいんだよ。
こいつを食わなきゃバチが当たらなくとも、
あたしゃどのみち、飢え死にしちまうんだからさ・・・』

これが団子にむしゃぶりつく奴とワシとの初めての会話だったんじゃ」

《つづく》





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 児童小説 ケンと シロと そしてチビ


posted by maruzoh at 08:50| Comment(0) | ◆ケンと シロと そしてチビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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