やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2012年02月24日

ケンと シロと そしてチビ 第18回


ケンと シロと そしてチビ 第18回 


 昨日はついつい調子に乗って、年甲斐もなくはしゃぎ過ぎちまったらしくって、やっぱりじじいは、だいぶくたびれているようだ。朝飯こそカーサンの手前綺麗に平らげたものの、じきにお天道様もすっかり上りきる昼だってのに、犬小屋から首だけを出して、まるで亀みたいにして寝そべってやがる。これじゃあ、特訓前のじじいと何にも変わりゃしないぞ。でも、そりゃあ、確かに疲れもするだろう。なんたって、1年振りの散歩だっただものなぁ。

「おい、じじい! 大丈夫か?
まさか昨日の無理がたたって、くたばっちゃいないだろうな?」

 南天の木陰から飛び出した俺さまの声にじじいの耳がピクンと反応して、そして、ゆっくりと瞼が上がっていく。ほとんど見えてない目じゃ、開けてても閉めてても大差ないんだろうが、きっとじじいにとっちゃ、自分は起きてるぞっていう意思表示なんだろうな・・・

「おう、チビか、おはよう。
いやぁ、昨日は楽しかったのう。
チビの作戦も的中して、ワシも年甲斐もなく興奮してしまったよ」

「そりゃぁ、けっこうけっこう。
でもな、あんな家の周り1周くらいの散歩、
日常茶飯事朝飯前にできなきゃ、
河原の土手の花見なんか、夢のまた夢になっちまうぞ。
その為には、1に練習、2に練習、3・4がなくて、5に練習ってな」

 俺さまは、この間の恋愛指南の反撃とばかりに、じじいの十八番の台詞を冗談めかして言ってやった。ところが、じじいはなぜかすまなさそうに俺さまに言うんだ。

「そ、それなんじゃがのう、チビ・・・
練習しなきゃならんのは、よくわかっとるんじゃが、
今日はシロも用事があるとかで朝から出掛けているし、
なにより、わしゃあ、ちと疲れてしまってのう。
今日の練習は、その、お休みにしちゃいかんかのう・・・」

 じじいが俺さまに気を使ってやがる。どうやら俺さまは、じじいが目に見えて元気になってくのが嬉しくって、気がつかないうちに張り切りすぎていたのかもしれない。恐らく、シロが断りもなしに外出しちまったってのも、いつも1人で舞い上がってる俺さまに、無言のうちに「焦りは禁物。ちょっと頭を冷やしたほうがいい」って言てくれてるんだろうな。確かにそうなんだよなぁ。
 そんな風に思った気持ちが、俺さまに言わせたんだろうか?自分自身、信じられないくらいやさしい言葉が、口を衝いて出ていた。

「うん、そうだな。
じじいは毎日、本当に頑張ったものな。
たいしたもんだったよ。
休みか、それもたまにゃあ、いいだろ。
ここんとこぶっ続けの休みなしだったからな。
ほどほどにして、体いたわんなきゃな・・・」

 俺さまの返答にちょっと驚いたという表情を見せて、じじいは、ふふふと首を傾げて笑った。

「な、なんでえ、じじい! 
薄っ気味悪いじゃねえかよぉ」

じじいがまた、嬉しそうに、恥ずかしそうに笑う。

「ふふふ・・・ 
いやなぁ、実は、短気でせっかちなチビのことだからのう。
てっきりワシは、時間がないんだから頑張らなきゃ駄目だって、
そんな具合に言われるんじゃないかと、思っていたんじゃよ。
それが、随分とチビも大人になったもんじゃ。
上り調子の時こそ、なかなかああは言えるもんじゃないぞ」

 じじいは、俺さまに向って何度も頷いてみせた。

「な、何言ってやがるんだ、もうろくじじい!
俺さまはもう十分に大人のオス猫だって、何回も言ってんだろ」

「いやいや、褒めとるんじゃよ。
わしにとっちゃチビは、名前の通りチビのまんまだったんじゃが、
いつの間にか、わしを追い越していたんじゃなぁ・・・」

(あれ?この間もシロに、同じようなこと言われた気がするなぁ)

 俺さまには今日のじじいは、いつものシロと3にんでいる時とどこかがちょっと違うような気がした。どこがどうとは、はっきり言えないけれど・・・。

(そうだ、今日はシロもいないんだし、
ここはひとつ気になっていたあのことを・・・)

 実は俺さまには、この間からどうにも気になっていたことがあったんだ。例のミケちゃんの騒動があったろう?あの時、俺さまはじじいに冗談交じりにだったけれど、随分とひどいことを言ってしまったような気がしているんだ。そう、鎖で繋がれたじじいいにゃ、恋愛経験なんて無いのを承知していたくせに、「じじいの壮大なラブロマンスを拝聴できねえもんかな?」だなんて、俺さまはからかっちまったんだよ。その時は、大して気にもならなかったんだけど、時間が経つにつれてじじいがその後、悲しそうに言っていた「聞いてタメになるような話なんてない」って台詞が、ひとりになると頭の中で繰り返すんだよ。じじいに、きちんと謝らなきゃって、俺さまはその機会をうかがっていたんだけど、シロの奴が思った以上に練習熱心なものだから、ついつい機会を逃しちまっていたんだ。

「じじい、あの、実はさ・・・」

「チビ、実はのう・・・」

 俺さまが意を決してそう言ったのと、じじいがそう言うのが、思いがけずにぶつかり合っちまった。気まずい雰囲気で暫くお互いに顔を見合せたまんまだったけれど、俺さまがなかなか話し始めないないものだから、ようやくじじいが口を切った。ところがそのじじいの話ってのが、意外にも俺さまがじじいに謝ろうとしていた恋愛の話だったときたから俺さま、びっくりしちまった。じじいは、こんな風に話し始めたんだ。

「チビ、実はこんなわしにものう、かなり遠い昔なんじゃが、
未だにあれで良かったのかと悩んじまうような、
間抜けで、奇妙な恋の経験があったんじゃよ・・・」

《つづく》





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 児童小説 ケンと シロと そしてチビ


posted by maruzoh at 08:46| Comment(0) | ◆ケンと シロと そしてチビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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