やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2012年02月21日

ケンと シロと そしてチビ 第15回


ケンと シロと そしてチビ 第15回 


カサリッ カサリッ

 土手沿いの小道いっぱいに積もった桜の葉を踏む度、乾いて寂しげな音が静まり返った河原に響く。桜の木は、紅く染め上げた葉のもうそのほとんどを脱ぎ捨てて、時折吹く北風に枝を震わせている。川は、静かに、とても静かに流れていた。

「もうすぐ、冬なんだなあ・・・」

 口を衝いて出てしまった俺さまの独り言は、寒そうに立っている桜の木には、どんな風に聞こえたろう。

カサリッ

 その時、俺さまの背後で足音がしてようやく待ちビトが現れた。

「ごめん、ちょっと遅れてしまったようだね。
最近じいさんんが随分と張り切っているんでね」

「いや、いいんだシロ。
週に1度の定例の報告って言ったって、
じじいのいないところで忌憚の無い話をしようってだけなんだから。
そんなしゃっちょこ張った大袈裟なもんじゃないよ。
で、早速だけど、じじいの調子の方は、どうだ?」

 シロは時折見せる仕草、遠くを見てから足元に目を落としてふっと笑うようにして俺さまに言った。

「ミケちゃんの一件以来、なぜか大張り切りなんだよ。
なんと、今朝から、2、3歩くらいなら歩けるようになったんだ。
ヨロヨロして、酔っ払ったみたいな歩き方だけどね。
でも、寝てばっかりだったあのじいさんがだからね。
春には、本当に、ここまで来られるかもしれないよ」

「そ、そいつは、確かに凄げえや・・・」

 俺さまは、正直そう思った。

「だろ?本当に凄いんだよ、最近のじいさんったら。
僕の教育係もまんざらでもないだろうってことで、
ここは、待遇のアップを訴えたいところだけどね。
ははははは・・・」

 出会いは最悪だったし、未だに理解できないことは多いけれど、俺さまは最近知らず知らずのうちに、シロに対する感じ方が変わってきたことに気づかされていた。自分に正直になって見つめなおすと、シロのナチュラルな奔放さ、素直さに比べたら、つっぱってるばかりで周りの視線を気にしすぎる俺さまは、どう見たって生ぬるい家猫の枠から飛び出すことができていないだなんて、そんな風に思うようになっちまってる。シロのこのナチュラルさは、どうやら周りにも感染していくらしい。

「シロ。あ、ありがとうよ・・・」

 多少つかえちまいながらも俺さまにしては妙に素直に、そんな台詞が吐けたのも、その影響なんだろうなぁ。でも、ちょっと効果があり過ぎたかもしれない。俺さまは、その素直さのまま、自分でも思いがけないことを口走っていた。

「じじいとシロ、お前らふたりが楽しそうにしてる時ってさ、
なんとなく俺さまが割って入りにくい時があるんだよ。
こう、ふたりにしか分からない世界って言うか、
俺さまには入り込めない間というかさ・・・
これがきっと気が合うってことなんだろうな。
じじいは、お前が大好きなんだよ。
だから、じじいは頑張るんだよ感謝するよ、シロ」

 シロは俺さまからの感謝の言葉に驚きながらも、慌てて首を横に振った。

「違うよ、チビ。全然、違うんだ。
君は、大きな勘違いをしてるよ。
僕はもちろん、何処の誰だって決して入り込めないのは、
チビとじいさん、君らふたりの間なんだよ。
だから、やっぱりこの特訓の成果だって僕の力じゃないんだ。
本当は、みんな、チビの力なんだよ」

「・・・・・・」

 俺さまが素直に感謝してるってのに、シロの奴ったら一体何を言い出しやがるんだ?素直じゃねえなあ。どこが俺さまの力だってんだよ。

「じいさん、本当にチビのことが可愛いんだよ。
だから、あんなに頑張っているんだよ。
チビの期待に応えたいんだよ。
この間も言ったろう?
じいさんにとってチビは、本当の子どもなんだよ。
その子どもが自分の世話を焼いてくれるのが、
じいさんには、たまらなく嬉しいんだと思うんだ。
名前の通り小さかったチビがすっかり大人になって自分のことを案じてくれる。
それが、本当に嬉しいんだよ、親としてね・・・」

 俺さまの頭の中に、肺炎の高熱でうなされていたときの幻影、空き箱の中で声を枯らして泣いていたあの日の情景が、また浮かんでは消えた。

《つづく》





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 児童小説 ケンと シロと そしてチビ


posted by maruzoh at 08:10| Comment(0) | ◆ケンと シロと そしてチビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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