やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2012年02月19日

ケンと シロと そしてチビ 第13回


ケンと シロと そしてチビ 第13回 


 土手沿いに連なる真っ赤な桜並木に負けじと、赤く染まったいわし雲の夕焼け空から、西風がざわざわっと吹いてきた。すると、めいめいの木々はその赤さを競うようにして、次々と赤く色づいた葉を川面(かわも)に降らせる。葉は、くるくるんと回ってから、やがて音もなく流れに乗る。夕焼けに染まった川の赤い中、そのまた赤い小舟は、揺られてどこまで行くのだろう。小舟は、1艘、また1艘と、旅立って行く。

 俺さまは土手の下、祠のすぐそばの河原で、小一時間もずっとこうして、この桜の葉の旅立ちに見とれちまっていた。きっとじじいも、こんな風景を何度となく見てきたんだろうなぁ。

(いけねえ、いけねえ。
ちょっとだけのつもりが、だいぶ日が落ちてきちまった。
さっさと桜の葉っぱを拾って帰らねえと、じじいにどやされるぞ。
そう考えるとじじいがあんまり元気が良いってのも、
へへへへ、こいつは考えものだな)

 俺さまは、苦笑いをしながら家路を急いだ。じじいへの土産の真っ赤に染まった桜の葉をくわえて。


「もう、じれったいのう、チビもシロも!
お前さんらは、全くわかっとらん」

 いったい どうしちまったってんだ?土手から帰った俺さまが、いつものように南天の木陰から覗いてみると、じじいの小屋の前であの仲良し2人組が、言い争いをしてやがるんだ。しかも、じじいがやけに力を込めて力説してやがるんだよ。

「わかってないのはじいさん、あんたの方だよ。
昔と今じゃ、時代が違うのさ。
もっとスマートに考えられないかなあ」

 おや?こいつも珍しい。シロときたら、じじいに食って掛かってる。

「何を言っちょる!
そんな言葉は、根性なしの腑抜けの言うことじゃ。
昔も今も真理はひとつ、根性あるのみじゃ」

 根性あるのみ?ははあん、こいつら歩行練習の練習方針で揉めてやがんだな?でも、この勢いなら じじい、いつ歩き出たってもおかしくない迫力だぜ。

「じいさん、そんな時代遅れな。
そんな錆付いたようなアナクロな精神論じゃ、
大きな目的は成就できやしないよ。
現代社会では、分析とそれに対する戦略。
これが肝心なんだよ」

 おいおい。今日のシロは、いつものスカしたシロとは一味違うぞ。じじい相手に一歩も引きやしない。ところが、一方のじじいだって、まさに絵に描いたような頑固爺そのものときてる。

「いいかシロ。
そんな、もやしみたいなインテリ風を吹かしてたら、
出来るものも、出来んようになってしまうわい。
この頭でっかちめが!」

(あんだけ世話を焼いてもらってるってのに、
そこまで言うかい、じじい)

 しかしこいつらったら、お互いが真剣過ぎるんだな。まるで噛み合っちゃいない。無意味で不毛な論争をいつまで続けるつもりなんだろう?こんな無駄なことやってんなら、早いとこ実戦練習した方が、いいんじゃねえのか?ははあ、そうか。お互い、引っ込みがつかなくなっちまったんだな?となれば、まぁ、結局頼りになるのは、俺さまってこった。仕方ねえなぁ。愛すべき馬鹿な頑固者ふたりのために、俺さまが一肌脱いで仲裁を買って出てやるとすっか。
 俺さまは南天の木陰からぴょんと飛び出すと、まだ睨み合ったままのふたりの間に割って入った。

「まあまあ、ふたりとも、もうちょっと落ち着けって。
お互いの言い分もあるだろうが、ここはひとつ冷静になってさ、
お互いの歩み寄りって奴も必要だぜ、なあ」

 じじいはゆっくりと、シロはすばやく、ふたりがいつものように時間差で俺さまに向き直ったんだが、これがまた、ふたりとも なんとも厳しい顔つきだ。

(な、何だぁ?なにか、様子がおかしいぞ・・・)

「チビったら、何をそんなに悠長に構えてるんだい?」

「全くじゃ。主役のお前がそんなにのんびりしてて、どうするんじゃ!」

 はあ?俺さまが主役?なんの主役だよう。あんなに熱くなってたのって、じじいの歩行練習の話じゃねえのかよ?

「ふ、ふたりとも、何言ってんだ・・・?」

 じじいは、情けないとでも言いたげに、ため息をついてからこう言った。

「知らぬが仏とは、このことじゃ。
チビ、お前が片思いしちょる、あのミケにのう、
駐在んとこのトラキチが、プロポーズしおったんじゃよ」

 え――――っ!な、何だってえ?俺さまは、頭をバケツでぶん殴られたような衝撃を受けて、同時にクラクラッと眩暈を覚えた。

「僕が裏の庭先を通りかかった時、偶然聞いてしまったんだよ。
だから、これから作戦を立てようってじいさんに言ってるのに・・・」

「いいかチビッ!」

 じじいは、シロの言葉を遮ると、ふにゃふにゃに脱力しちまった俺さまを抱き寄せた。そして、じじいは、信じられないくらいの力強さで、こう言い放ったんだ。

「遅れを取ってしまった恋はじゃな。
1に攻めて、2に攻めて、3、4がなくて、5に攻める!
これが鉄則、王道。いいか?死ぬ気で突撃じゃあっ!」

 さしもの理論派シロも、この迫力には口を挟むことが出来ない。俺さまは、じじいの大きく開かれた鼻の穴を、ただ見つめ続けていた。

《つづく》




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 児童小説 ケンと シロと そしてチビ


posted by maruzoh at 17:51| Comment(0) | ◆ケンと シロと そしてチビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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