やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2012年02月16日

ケンと シロと そしてチビ 第10回


ケンと シロと そしてチビ 第10回 


 最近、じじいの犬小屋は、とても綺麗だ。犬小屋の屋根。左の端から黄金色がだんだんと赤になっていく桜の葉がもう5枚も綺麗に並んでいる。俺さまとシロが毎日交代で土手まで行っちゃあ、桜の葉を拾ってきてるってわけだ。俺さまたちは、それをじじいに見せびらかしながら屋根に放り投げている。じじいは、「ヒトでなし」だの「恩知らず」だの、何だかんだぶつぶつ言ってはいるが、よっぽど色づいた葉っぱが見たいらしくて、前足を突っ張らせるようにして頭を上げて屋根の上を覗いてやがる。それがこの1日2日で随分と様になってきてる。こりゃ、本当にそのうち立てるよ。

 もともと犬も猫も寝るのが大好きだし、それに加えてじじいは歳なんだから、寝てるのが多いのは仕方がないとしても、最近は前ほど寝てばっかりと言うわけでもなくって、シロによく思い出話なんかをしてる。やっぱりシロは、俺さまと違って聞き上手なんだろうな。ちょっと癪だけど、奴はホントよくやってるよ。じじいの「世話係」「歩かせ係」としちゃあ申し分なしだ。気の短い俺さまじゃあ、ああはいかねえだろうなぁ。
 と、噂をすれば向こうから来るのはシロじゃねえか。

「よおシロ、ご苦労だな。
これから土手まで葉っぱ取りか?」

 そう、今日の河原への葉っぱ取りは、シロの番なんだ。

「ああ。じいさんが寝てる隙に行ってきてしまうよ」

「じゃあ、俺さまはのんびりとさせてもらうとするか」

「ははは、いつもの南天の木の陰かい? 
もう僕にもじいさんにもバレバレだよぉ」

「うるせえなぁ、いいんだよ。
俺さまは、あそこが気に入ってんだよ。ふんっ!」

「ははははは・・・」

 シロの笑い声がだんだんに小さくなったと思ったら、シロの奴ったら急にまじめな顔をして、俺さまの顔をきっと見つめた。

「チビは、この1週間くらいで随分と変わったね。
僕やじいさんともよく話すようになったし、
本当によく笑うようになった。
ノラの僕にだんだん慣れてきたってのもあるんだろうけど、
チビは、だんだんと変わってきたわけじゃなくて、
そう、あの肺炎でお医者のところに行ってから
急に変わったような気がするんだ・・・」

 俺さまは、ドキッとした。

「・・・・・・」

「言葉遣いは、相変わらず乱暴だけど、
なんか、やさしくなったよ、チビは。
僕に対して、そして、何より、じいさんに対して」

(ちくしょうっ、心臓がどきどきしやがる。
なんて答えたらいいんだよ。
ヤブ先生がトーサンに言ってたあのことは、
絶対にじじいに知られちゃならねえってのに)

「違ってたらごめん。
病院で、何かあったの?
例えば、じいさんのこととかで・・・・」

 俺さまは、地面に落としていた視線を思わずシロの顔に移して、まん丸の目でマジマジと見つめちまった。

(な、なんで分かるんだよ?)

「やっぱりそうなんだね。
僕らノラは、半分以上が野性みたいなもんだから
家猫に比べて随分とカンが働くんだよ。
いろんな世界や、いろんな猫や犬の人生を見てきているしね」

「・・・・・・・」

 俺さまは、何にも答えられない。俺さまが、視線をまた地面に落としかけた時、シロが言った。

「じいさん、もう、その・・・
い、いくらも生きられないんじゃないのかい?
チビはたまたま、それを、知ってしまったんじゃ・・・
そ、それで・・・」

 次の瞬間、俺さまは叫んでいた。

「こ、このノラ野郎! 
テ、テキトーなこと、ぬかすんじゃねぇっ!
バッカヤローッ!
そ、そんな簡単に、じ、じじいが・・・
じじいが、し、死んでたまるかぁっ!」

「チ、チビ・・・」

 我慢し切れずに俺さまの瞳から涙が溢れ出して、辺りがすべて滲んで見える中、シロが俺さまの肩を抱くようにしたんだけれど、俺さまはシロをドンと突き放して言った。

「い、いいかシロ。
二度とそんな話、俺さまやじじいの前でしてみろ。
じ、じじいの世話係は、即刻クビだからな。
そして、とっとと、ここから、で、出てってもらうからな・・・」

「チ、チビ・・・」

「だ、大丈夫だ、絶対。
うん、絶対にじじいが死んだりするわけねえ。
慌て者のヤブ先生のカン違いに決まってる。
だ、だから、シロ・・・
二度と、そ、そんな話・・・
そんな話を、する・・ん・・じゃ・・ない・・・」

 しつこいシロがまた、俺さまの肩を抱いてきた。でも、もう涙まみれの俺さまには、シロを突き放すだけの力は、湧いてはこなかった。シロがポツリと言った。

「ああ、もう2度と、口にしたりしない、誓うよ。
僕らふたりの胸に、しまっておこう」

《つづく》





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 児童小説 ケンと シロと そしてチビ


posted by maruzoh at 07:59| Comment(0) | ◆ケンと シロと そしてチビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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