やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2012年02月12日

ケンと シロと そしてチビ 第6回


ケンと シロと そしてチビ 第6回 


 俺さまは、次の日の朝も、調子がでなかった。ぐったりしている俺さまを見て、トーサンが、あの「ヤブ動物病院」に連れて行ってくれた。
 やたらと声ばかりでかくてひげ面。ちっともお洒落じゃないヤブセンセイのところには、なんとかショートヘアだの、よくテレビに出てるような小さな犬だのは、ほとんど来やしない。この病院は、名前が悪いのか、センセイが悪いのか、最近のペットブームとやらの恩恵は、ちっとも受けていなさそうで、いつのいつだって暇そう。だからいつも、着いてほどなく順番が回ってくる。

「おやおや珍しい、チビじゃないか。
今日は、ケンじいさんじゃないんだねえ」

「どうやら風邪を引かせちゃったみたいでねえ」

「このところ、急に冷え込みましたからなあ。
わしも、昨日から股引きをはいてるんですわ。
がっはっはっは・・・」

 今日もセンセイは、相変わらず下品で大声だった。こんなんじゃ、なんとかショートヘアなんて、急患以外は、来やしないよ。まあ、俺さまはこのセンセイ、嫌いじゃないけどさ。
 センセイは、大声とは裏腹に優しくなでてくれる。節くれみたいにごつごつした大きな手は、トーサンとも、カーサンとも、違ったやさしさがある。

「おや?これはいかんな。
肺炎を起こしかけとるなぁ」

 聴診器を当てて、センセイはちょっと顔を曇らせた。

「1本打っときましょう。
これでもひどくなるようだったら、入院コースだな」

 その後、注射器を見て暴れ出した俺さまをあの大きな手ががっしりと押さえ込んだ。身じろぎも出来なくなっちまった俺さまは、いつものように、いよいよ観念をした。

プスリ

(痛ててて・・・
センセイ、これさえなければ、本当にいい人なのになあ・・・)

 俺さまがようやく落ち着いてきたんで、やれやれ一段落といった具合でセンセイは、トーサンと話しを始めた。

「で、ケンの方の具合は、どんな風ですか?
食欲、ありますか?」

「それが最近、ちっとも飯を食わんのです。
おかゆみたいにして上げてるんですがねぇ。
耳もずいぶんと遠くなってしまったようで・・・」

「目の方はどうですか?」

「はあ。目もほとんど見えてないんじゃないでしょうか。
ですから、このところ毎日、ごろごろと寝てばかりです・・・」

 そう言や、確かに近頃のじじいと来たら、前にも増してよく寝てるんだよな。昨日だって俺さまがちょっと文句言っただけですぐにふて寝しちまったもんな。

「もう、18歳、ですか?
人間なら、わしやトーサンの親父くらいの年ですよ。
今年の冬は随分と寒いそうですし、
冬を越すのは、ちょっと厳しいかもしれませんな。
でも、よく頑張りましたよ、大往生です」

 それまでへにゃっとしてた俺さまの耳が、その言葉でピクンと立った。
ちょ、ちょっと待ってくれよ!
センセイ、それどう言う意味なのさ?
まさか、じじいが死んじまうって、あんた言うのかい?
わ、悪い冗談はよせよ。
だって、あんた医者なんだからさぁ、治すのが仕事なんだろ?
だったら、なんとか治してやってくれよ。
ほら、あんたが得意なさぁ、太〜い注射何本も打ってさ。
じじいを助けてやれよ、センセイよう!

「子どもたちが次々に巣立って、カーサンとまた2人きりになった頃、
ケンは、ウチに来たんですよ。
私らは、随分とケンに励まされて来た気がします。
しっかりと、しっかりと看取ってやりますよ・・・」

 トーサン、違うだろ?
昔話なんか、そんなの聞きたくないよ。
じじいを治してさ、また一緒に散歩に行ってやんだよ。
だってじじいったら起き上がりもしないから、ここ1年と来たら、
トーサンと日課の散歩にだって、全然行ってないんじゃないか。
 ホントに、死んじまうのかよ・・・
出鱈目だろ?
トーサン、嘘だって言ってくれよ。

「おや?チビ、涙が出てるようですな。
まずいなぁ、眼病でも併発したかな」

 俺さまの目からは、不覚にも涙が一筋、流れちまっていた。

《つづく》





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 児童小説 ケンと シロと そしてチビ


posted by maruzoh at 16:57| Comment(0) | ◆ケンと シロと そしてチビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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