やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2012年02月09日

ケンと シロと そしてチビ 第3回


ケンと シロと そしてチビ 第3回 


クシュンッ
クシュンッ

 くしゃみと鼻水が止まりゃしない。
どうやら、昨日のトーサンのバケツで風邪をひいちまったようだ。あのノラ野郎も前の晩、同じ攻撃を受けているってのに、ピンピンしてやがるってのが、どうにも気に食わない。長い飼い猫生活で、俺さまの野生がすっかり軟弱になっちまったんだろか?そう言えば、突進も軽くかわされちまったし、これはちょっと体を鍛えなおした方が良いかなぁ。

クシュンッ

 いやいや、意趣返しの作戦は体調を整えてからだ。まずは、この風邪を早いとこ治さなきゃ。それにしてもゾクゾクしやがる。トーサンもカーサンも出かけちまってるし、まだ秋の初めだからコタツも出ていない。

クシュンッ

(背中の毛が逆立ちそうなくらい寒い。
それに、トーサンとカーサン、早く帰ってきてくれないかなぁ。
ひとりっきりじゃ不安で叶わないや。
あ〜あ、せめて毛布とかホットカーペットなんか無いかなぁ)

 俺さまは、しばらく思案していたんだが、やがて、ひらめいた。

(あるじゃねえかよ、大きな毛布兼ホットカーペットが。
年がら年中小屋の中で丸まって、
寝てるしか能がないモウロクじじいという名の暖房器具が)

 俺さまは、くふふとほくそ笑むと、くしゃみをしながら玄関脇の日当たりのいい犬小屋の方へ歩いていった。
じじいは、案の定いつものように顔だけを半分出して小屋の中で寝ていやがる。

(へへへ、こいつは良いぞ。実にあったかそうだ)

 俺さまは、じじいに精一杯明るく声をかけた。

「よお、じいさん。ご機嫌よう」

 じじいの耳がぴくりと動いて、また、ぱたりと倒れた。もうろくじじい、また一段と耳が遠くなったのか?俺さまは、一つ咳払いをして、さっきより数段大きい声で叫んだ。

「よお、じじい!機嫌はどうだ?」

 じじいは、ようやっと首をもたげて、口の端からあぶくを出しながら俺さまに答えた。

「おう、その声はチビか?
どういう風の吹き回しじゃ?こんなところに・・・」

 このところ暫く話していなかったけれど、じじいもまた一段とモウロクしちまったみたいだな。

「そんなに珍しかないよ、俺さまがここに来るのは。
じじい、あんたがモウロクしちまって気がついてないだけさ。
この辺りは俺さまの縄張りだからな、毎日何回も通っているよ」

「そうかい、そりゃあ知らなんだ。
なにせ耳が遠くなっちまった上に、眼まで霞んできちまってなぁ。
てっきりお前は、裏のミケのところに入りびたりだとばかり思ってたわい」

 げげっ、モウロクじじいが愛しのミケちゃんのこと、何で知ってやがるんだ。焦った俺さまが口ごもっていると、また鼻がムズムズ、

「ハックシュンッ!」

 豪快にくしゃみが出ちまった。

「おや、チビ。風邪でもひいたかい?」

「あ、あぁ」

「寒いだろ、チビ。
ほうら、こっちに寄ってきな。
子どもの頃のようにあっためてやるよ」

 それまで俺さまは、いろんな言い訳を考えて、なんとかじじいのそばに潜り込もうと思っていたけれど、あまりにもあっさり、しかも、じじいの方からそんなことを言うもんだから、じじいに何かこう、心の底の本当の気持ちを見透かされてるような気がして、ついつい、強がっちまった。

「あ、あっためてやるだと?
冗談じゃねえ、じじいがモウロクするのもいい加減にしろ!
俺さまはもう3歳の立派なオス猫だぞ。
じじいは、ヒト様の心配より、自分の心配してりゃいいんだよ」

 じじいは、表情を変えずにしばらくいたけれど、やがて前足の上にあごを乗せて霞んでるはずの眼を閉じて言った。

「悪かったな。
そうか、チビも、もう3歳なんだものな。
子どもじゃないんだよな・・・」

 それと同時にじじいの半分立っていた耳が、また、ぱたりと倒れた。そして、俺さまの言い過ぎちまったかなという心配をよそに、じじいはやがてスースーと寝息を立て始めてしまった。

クシュン・・

 じじいに背中を向けた俺さまは、またひとつ、小さいくしゃみをした。

《つづく》




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 児童小説 ケンと シロと そしてチビ


posted by maruzoh at 08:20| Comment(0) | ◆ケンと シロと そしてチビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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