やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2012年02月04日

王様 対 皇帝 最終回 夕焼けの海の再会


〜憧話 こころ王国 episode 2〜
王様 対 皇帝 最終回 夕焼けの海の再会 


 王国に収穫の秋が訪れました。自給自足を目指すココロニアでは、南側の山の斜面に棚田が広がっています。今日は農林水産大臣の指揮の下、その棚田の刈入れが行われる予定でしたが、どうにも小型コンバインの調子が悪いものですから、急遽呼び出された科学技術庁長官が調整に四苦八苦していました。王様も心配そうに覗き込んでいます。

「どうですか?
このコンバインには随分とお世話になりましたが、
やはりもう寿命なんですかな・・・」

 長官はオイルまみれの軍手で汗を拭って笑いました。

「いやいや、心配無用です。
こいつだってまだまだ現役を続けたがってますよ。
だいぶ難儀はしましたが、ここをこうして、こうすれば、
ほうら、この通り・・・」

 そう言って長官がキーを捻ると、コンバインはブルルンと元気なエンジン音を響かせました。その音はまるで、王国の仲間に「まだまだ若いモンにゃ負けんぞ」と訴えかけているようです。

「それはそうと王様。
千年帝国の巡洋艦に搭載されていた無線の中継機、
あれ、覚えてらっしゃいますか?」

 王様がちょっと首を傾げて、数ヶ月前のことを思い出しています。

「4隻の巡洋艦を1列に並ばせて、
洋上から本土に向けて電話回線を飛ばしていたという、
あれのことですか?」

「そう、その中継機です。
あれは帝国が独自に開発した技術なんだそうですが、
これが従来の同サイズの中継機に比べて格段の性能なんです」
 
「ほう、それは凄い。
しかも、独自の技術となれば・・・」

「はい、当然特許の対象になるべき発明です。
で、やはりそこは抜け目のないガルル皇帝ですね。
しっかり特許を出願していたそうです」

 それを聞くと王様はにっこりと笑いました。

「ということは、その資金も騙し取ったお金の賠償に使えますな。
もともと千年帝国は、お金の無駄遣いはあまりしなかったようで、
燃料や設備投資、それと生活に関わる出費以外の余剰金は、
そっくりそのまま海外の隠し口座に残っていたそうですから、
これでまず金銭的な償いの目処は立ったんじゃないでしょうかね」

「ええ、そうですね。
この発明はいろんな分野に応用できそうですから、
相当の収入が見込めると思いますね」

 長官はそう言ってから王様の顔を覗き込みました。

「で、ちょっと私なりに考えてみたんですが・・・
ひょっとしたら、ガルル皇帝はある時期から、
この特許がいずれお金になると見込んでいたんじゃないでしょうか。
だからこそ、母艦を沈めて帝国民を使い捨てにするなんていう建前で、
その実、犯罪に手を染めてしまって悔い悩んでいる彼らを
自分から解放してあげようとしたんじゃないかと思うんです・・・」

 王様も頷きます。

「確かにそうかもしれませんね。
いえ、そう信じましょうよ、私たちは。
私は信じますよ、あの日の皇帝の涙と覚悟を。
事実はたくさん出てくるとしても、真実はひとつなんです。
例え世間が彼を、どう言おうともね・・・」

 王様が口をつぐんでしまったとおり、千年帝国とガルル皇帝に対するマスコミの扱いは、それは酷いものでした。「卑劣な誘拐犯」「冷血な詐欺師」「金の亡者」「誇大妄想狂」と、ありとあらゆる誹謗中傷が紙面や画面を賑わせました。組織の規模からも警察の正式な取調べは、まだ相当の期間を要するとの発表があったにも拘らず、デマ、憶測の域を脱しないような、噂に毛の生えたような記事やレポートが大手を振って出版、放送されて、ガルル皇帝は稀代の詐欺集団の首謀者として極悪人の烙印を押されました。コメンテーターや有識者と呼ばれる人たちは、何の裏づけも無いままにガルル皇帝の全人格を否定し、連日罵詈雑言を浴びせ続けていたのです。
 ところが、「人の噂も75日」とはよく言ったものです。それから1月経ち、2月が経って、当局から捜査結果が事実として語られ始めると、当初の憶測や噂とは余りにもかけ離れた面白みの無い真実に人々は急激に興味を失ってゆき、やがてどこを探しても千年帝国に関する記事など見かけることもなくなってしまいました。

 千年帝国の噂も絶えて久しい秋も深まったある日、島の住民以外の乗客など滅多にない本土と本島を繋ぐ定期船に乗って、初老の男がMARUZOHくんを訪ねてきたと本島の役場から連絡がありました。本島とココロニアの間には公共の交通機関などありませんから、MARUZOHくんは、下校のタカシくんたちを迎えに行く玄さんのココロニア号に便乗させてもらって、その男に会いに行くことにしました。
 本島の船着場の岸壁、夕焼けに照らされて片手をひょいと上げる男の仕草を見て、MARUZOHくんはそれが誰なのかがすぐわかりました。

「よう、にいちゃん」

「お、親父さん。
マレンゴさんと仲良しのコックの親父さんでしょ?」

 そう、間違いありません。千年帝国母艦でタカシくんの入った麻袋をマレンゴが担いで、機関室から再び最上階へ向かう途中、大食堂のフロアで会った、あの口は悪いけれど人の良さそうなコックの親父さんです。

「あの時のお前さんは付け髭をしていたけど、
正直、あんまり似合っちゃいなかったな。
うん、お前さんは、髭は無い方が爽やかでいい」

 そういうと親父さんは大声で笑いました。

「親父さん、取調べは無事済んだの?
大丈夫?乱暴にされたりはしなかった?」

 MARUZOHくんがそう質すと、親父さんはぱたりと笑うのを止めて、小さな溜息をつきました。

「ああ、済んだよ、済んだとも。
あんまり楽しいもんじゃなかったが、警察は意外と紳士的だったよ。
まあ、俺の知ってることは洗いざらい話してきたが、
話せることなんざ、飯の分量とか、仕入れ値がいくらかぐらいだろ?
奴さんらにはあんまり参考にゃならなかったようだったよ。
で、直接犯罪とは関わりがないからって放免されてきたんだ」

「そりゃあ良かった。
親父さん、暫くゆっくりしていけるんでしょ?」

 笑顔で尋ねたMARUZOHくんでしたが、親父さんはなぜか目を伏せてもじもじするばかりで、ちっとも親父さんらしくありません。
 
「親父さん、どうしたのさ?」

「い、いや、なにね。
実は、お前さんとこの王様がさ。
最後に皇帝に掛けた言葉、艦内放送で聞こえちまったんだけど、
俺、帰る場所がねえんだよ、実際。
で、移住をさせてもらってさ。
コックとしてここで働かせてもらおうかな、なんてね。
ははは、ちょっと、虫が良すぎるよな・・・」

 親父さんの言葉を聞いてMARUZOHくんの顔が明るくぱあっと輝きました。実は王様もMARUZOHくんも、ガルル皇帝と約束した元千年帝国民のココロニア移住者第1号を今や遅しと待ち侘びていたのです。MARUZOHくんは親父さんの手を両手で握り締めて叫ぶように言いました。

「何言ってるんですか親父さん、大大大歓迎ですよ。
嬉しいなあ、ようこそココロニア王国へ!」

 あまりの歓迎振りに親父さんはすっかり面食らってしまいましたが、すぐに安堵の表情を浮かべるとMARUZOHくんに、とっても嬉しい大ニュースをプレゼントしてくれました。

「も、もう一つ伝えることがあるんだ。
託(ことづか)ってるんだよ、マレンゴから。
野郎は、副機関長だなんて役職が付いちまってるから、
俺なんかよりも多少時間は掛かるとは思うけど、
やっぱり直接犯罪と関わりがないってことで不起訴の見込みらしいんだ。
奴さんもココロニアに厄介になりたがってたんだけど、大丈夫かな?」

「ええっ?マレンゴさんも?
本当に本当?
いやあ、嬉しいなあ、ホント嬉しいなあ。
タカシくん、めちゃくちゃ喜ぶぞう」

 MARUZOHくんの心からの笑顔を目の当たりにしていると、親父さんは自分がとてもあたたかな気持ちになっているのに気づきました。そして、ここ数年も流していなかったはずの涙が、いつしか零れ落ちて自分の頬を伝っているのを知って、不思議な気分になりました。ちょっぴり照れ臭かったけれど、親父さんはすぐに、こんなのも悪くないなと思い直しました。

「さっそく王宮へ行って父と母に会っていただきましょう。
実は王国の調理担当の責任者は、ウチの母なんですよ」

「ええっ?お妃様が調理の責任者かい?
こりゃまた驚いたねえ。
でも、そうとなればここは俺もひとつ、
口の利き方を改めなきゃいけねえなぁ」

 親父さんの冗談にMARUZOHくんがぷっと吹き出した時、タカシくんとタケルくんが小学校の方から駆けて来るのが見えました。2人もMARUZOHくんを見つけて大きく手を振っています。

「MARUZOHさーんっ!」

「タカシくーんっ!タケルくーんっ!」

 夕焼けの海に重なり合った5人のシルエットがまるで影絵のようです。

「よおし、暗くなる前に船を出すぞ」

 玄さんが舫綱を解いて4人に声を掛けました。おどけたタカシくんが舳先で水平線を指差します。

「ココロニア号、全速前進!」

 徐々に大きくなるエンジン音の中、タカシくんの透き通ったボーイソプラノとタケルくんの笑い声が、真っ赤に染まった海にすうっと融けてゆきました。

          〜FTNE〜


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posted by maruzoh at 07:40| Comment(0) | ◆王様 対 皇帝 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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