やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2012年02月02日

王様 対 皇帝 第78回 4隻の巡洋艦の秘密


〜憧話 こころ王国 episode 2〜
王様 対 皇帝 第78回 4隻の巡洋艦の秘密 


「そ、その携帯電話がどうしたって言うんだ」

 携帯電話を掲げた王様に、痩せた刑事がちょっと不安そうに突っかかりました。

「さっきガルル皇帝は、ウチの丸蔵とマレンゴさんのことを、
詐欺師の才能があると褒めてくださいましたよね。
まあ、親としてみれば喜ばしいとばかりも言っていられませんが、
ここはそう、機転が利くという風に受け取っておきましょう」

 マレンゴが不思議そうに尋ねます。

「た、確かにこの部屋でそんな会話がありましたが、
あなたはどうしてこの部屋で起きたことを・・・」

 王様はデスクの脇まで歩を進めて説明を始めました。

「いやなに、種を明かせば他愛もないことですよ。
ほら、この受話器の下、ほらここです。
目玉クリップが挟んであるでしょう。
受話器が落ちずに電話が切れないようにしているんです。
先に王国にこの電話機から連絡した時から、
丸蔵がこっそりと私の携帯と繋ぎっ放しにしておいたんですよ。
だから私はこの部屋で起きた一部始終を知ることができたんです。
ゲッベルスさんの勇気も、ヒムラーさんの痛みも、マレンゴさんの誓いも、
そして、正一くんのことや心丸のことも・・・
もちろん、ガルル皇帝の、勇気ある覚悟もです」

 角刈りの刑事が怪訝な顔で王様の携帯電話を見つめています。

「こ、こんな洋上で携帯電話が繋がるはずないだろう。
あまりにも馬鹿げてる・・・」

「普通に考えればそうですな。
でも、あなたの考え通りだとしたら、
千年帝国は船の中から振込め詐欺なんかできません。
となれば、詐欺罪での逮捕なんてできないはずです。
ところがあなた方にお見せしたCDロムにもある通り、
実際には電話回線による犯罪は間違いなく行われていたのです。
では、一体どうして電話が繋がる、いえ、電話を繋げたのか。
ヒントは、あの4隻の巡洋艦にあるのではないかと、
ココロニアの科学技術庁長官は言っておりました。
どうですか、ヒムラーさん」

 ヒムラーがごくりと唾を飲み込んで、大きく頷きました。

「仰るとおりです。
本来、あの4隻の巡洋艦は相手を威圧するだけの飾りでもなければ、
先ほどのようにバリアを張る為の道具でもないんです。
今使用している臨時回線は非常事態の為の回線ですから、
出力を相当高く設定してありますので、
ここからココロニアくらいの距離なら問題なく届きますが、
架電室に数十本ある通常回線ではそういう訳にはいきません。
その上洋上から本土に向けての距離はココロニアの比ではありません。
この母艦から発した電波を本土に届かせる為には、
電波を繋ぐ中継ポイントが必要なんです。
そうそれが、4隻の巡洋艦の役割だったのです。
4隻が一定の距離を置いて1列に並び母艦からの電波を本土に繋ぐ。
言わばサッカーのパスや野球の中継プレーのようなものです。
しかし、既成の概念に囚われている警察では、
本来届かないはずの洋上など捜査の線上にすら上がってきません。
これこそが千年帝国がこれまで長きに渡り警察の網に掛かることなく、
悪事を重ねてこられた理由なのです」

「そう、科学の進歩というのは恐ろしいものです。
それを使う意思や目的によって善にも悪にも転じるのですから」

 頷く王様の横で刑事たち2人は、余りの突飛な発想に度肝を抜かれているようでしたが、そこに王様が意地悪そうな目つきで、更に追い討ちを掛けました。

「そうそう、科学と言えば最近の携帯電話も凄いもんですなあ。
何十ギガとかいうチップを入れるだけで何万枚も写真が撮れたり、
何時間でも録画や録音ができたりするんですからなあ。
ほら、こんな具合に・・・」

 刑事たちに向かって開かれた携帯の待ち受け画面には、録音中を示す赤いRのサインが点滅しています。それを見て刑事たちの顔が段々と青ざめていきました。

「丸蔵が電話をココロニアにしてから今まで、
この部屋での一部始終は、電話回線を通じてここに録音されています。
マレンゴさんの策略から押し寄せた帝国民による革命の成就。
そして、タカシくんとガルル皇帝の問答。
皇帝の心を搾り出したような告白から最後のメッセージまで。
私も涙を流しながら聴いておりましたとも・・・
もちろん、刑事さん、あなた方の発言もしっかり録らせていただきましたよ。
随分と乱暴な口調だったような気がしますが、そうそう、
誇大妄想狂だの、クズは所詮クズだのという発言もありましたな。
丸蔵に真面目に生きろと有難いご教授もありました。
おや?今の今まで気づきませんでしたが、
ガルル皇帝はなぜそんな格好をしているんでしょう。
自分からそうしたとは、私には到底思えませんが・・・
これは聞き漏らしておりましたかな?
どら、録音を巻き戻していきさつを聞いてみましょうか」

 そんな王様の台詞を聞くと、それまでガルル皇帝の首根っこをつかんでいた角刈りの刑事はすっかり慌ててしまいました。刑事は卑屈な愛想笑いを浮かべながら皇帝を立たせると、皇帝の服についている埃を払う仕草までして見せましたが、ガルル皇帝はそれを睨みつけるように制してから、王様に深々と一礼しました。

「ありがとう、熱田さん」

《つづく》


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posted by maruzoh at 08:40| Comment(0) | ◆王様 対 皇帝 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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