やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2012年01月07日

王様 対 皇帝 第69回 心丸 最後の日 その3


〜憧話 こころ王国 episode 2〜
王様 対 皇帝 第69回 心丸 最後の日 その3 


 風はだいぶ治まったもののまだそぼ降る雨の暗い空の下、心丸は岩礁地帯の中でも最大の難関に差し掛かろうとしていました。世界の海を渡り歩いたベテランの船員をして、「何度通ってもヒヤヒヤさせられる」と言わしめる難関中の難関の海峡の岩礁地帯です。

「船内を一回りしてくる・・・」

 最難関に突入する前にキャプテンは、各持ち場に破損等はないかの確認の為か、それともこの嵐の中、長時間に渡って奮闘した仲間に労いの一声を掛けようとでも思ったのでしょうか、帽子を目深に被り直して操舵室を出てゆきました。
 残った操舵士と無線士は、これからの難関突破にやや緊張した面持ちで、それぞれ前方と海図を睨んでいます。
その緊張が誘ったのでしょう。暫くして、「ちょっと喉が渇かないか?」という操舵士の問いかけに同意した無線士が、飲物を取りに室外へと席を外しました。その時でした。ガルルの眼になんとも形容しがたい光が宿ったことを、舵と海図を交互に見ている操舵士が気づくはずがありませんでした。
 ガチャリとドアの閉まる音を確認した後、ガルルは操舵士の死角から音も無く席を立つと、この部屋のドアの鍵を後ろ手に静かに掛けました。彼の眼は、鋭く大きく見開かれています。
 操舵士の背後に足音を忍ばせて近づいた彼は、一言「すまん」と呟きました。突然の耳元での声にハッとして振り返った操舵士は、次の瞬間、「うっ」という呻き声と共に、鳩尾の辺りを押さえてその場に屈み込みました。ガルルのボディフックが、操舵士の無防備の鳩尾に撃ち込まれたのでした。

「一仕事終えたら、すぐに縄は解く・・・
ゆ、許してくれ。」

 彼は操舵士の手足をロープでぐるぐる巻きにして、全く身動きの取れない状態にしてしまいました。操舵士は、身をよじりながら叫びます。

「き、貴様、狂ったか?
こ、この船をどうしようと言うんだ・・・
ま、まさか今から、引き返そうとでも言うつもりか?」

 彼は、黙ったまま舵を握っていましたが、意を決したように「よしっ」と一声低い声で小さく叫ぶと、思い切り舵を左に切りました。カラカラカラと舵が激しく回っています。それと同時に彼は、心丸の速度を急激に上げました。船が、ガクンと揺れます。

「な、なにをする気だっ!
ここいらは、もう、最難関地帯の入口だぞ。
水面下には、岩礁がゴロゴロしてやがるんだっ!
お、おいっ、止めろっ!止めるんだぁ!」

 操舵士は真っ青になって声の限りに叫びますが、ガルルはなおも速度を上げようとしています。ドアの丸い小さな窓から中を覗き見た無線士が、廊下にコップを放り投げてドンドンとドアを叩き続けています。

「お、俺は、この船を、この岩礁地帯に、沈める。
ここなら、時化で操舵を誤った事故として、
片付けることができるかもしれない。
こ、これしかないんだ。
俺たちに残された道は・・・
これしか、ないんだぁ!」

 彼は更に舵を左に回します。

「ば、馬鹿なっ!
舵を戻せっ!
速度を落とすんだぁ!」

 心丸の異常を察して他の船員たちも集まってきました。廊下はもう、大騒ぎです。船員たちはドアが開かないと見るや、数名で体当りを始めました。ドシン、ドシンと激しい音が続きましたが、10回も繰り返した頃、やっとのことでドアが破られて、船員たちが操舵室に雪崩れ込んできました。

「き、貴様ぁ!」

「そ、そいつを取り押さえろ」

 罵声と、幾本もの手が彼を取り囲んで、彼の体を舵から引き剥がそうとした丁度その時でした。ドカンという爆弾でも落ちたかのような大音響と共に、心丸の船体が数度に渡って大きく揺れました。船員は一人残らずひっくり返っています。そして、その後のガリガリガリという甲高い音。彼の描いた計画通り、心丸は、岩礁に衝突して、船底に大きな損傷を受けたのでした。
 緊急事態を告げるサイレンが、鳴り響いています。雲の切れ間からようやく覗いた太陽が、漂う靄を突き抜けるようにして、一様に放心している男たちの頬を神々しく照らし始めました。

《つづく》



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posted by maruzoh at 08:15| Comment(0) | ◆王様 対 皇帝 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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