やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













   【maruzoh's profile】
   maruzoh live.jpg

名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2012年01月01日

王様 対 皇帝 第63回 心丸と正一くん


〜憧話 こころ王国 episode 2〜
王様 対 皇帝 第63回 心丸と正一くん


「タカシくん・・・」

 それまで小僧だとかお前だとか呼んでいたガルル皇帝が、タカシくんのことを初めて名前で呼びました。

「写真の頃の正一は、小学3年生だった。
タカシくんより、少し上だな・・・
少年野球のチームに入っていてね、
朝から晩まで真っ黒になって野球ばかりしていたよ。
その写真はね・・・」

 そこまで言うと皇帝はちょっと言葉に詰まりましたが、またすぐにタカシくんに向かって語り始めました。

「その写真は正一が、
父さんの乗っている船が見たいって言うものだから、
夏休みに親子3人で心丸の上で写したものなんだ・・・」

「へえぇ、心丸ってこんなに大きな船だったの?
僕、小型の貨物船って言うから、もっと小さいのかと思ってた」

 写真の背景には真っ青な空と心丸の甲板と積荷が、どこまでも続いて写っています。

「載荷重量が1万トン以上の船をハンディサイズと言うんだが、
それ以下の貨物船は、みな小型というんだよ。
よくある小型は、載荷重量500トンから2500トンだから、
5000トンクラスの心丸は、小型の中ではかなり大きい方だった」

 載荷重量が1万トン以上もあってハンディサイズというのもおかしく思えますが、ULCCと呼ばれる超大型のタンカーなどは、載荷重量がなんと30万トン以上もあるのですから、それに比べてしまうとハンディサイズというのもわからない話ではありません。

「ふうん。
おじさんたちは、どんな物を運んだの?」

「そりゃもう、鉱石から穀物まで、
運べるものならありとあらゆる物を運んだよ。
なんたって貨物船は、中古の小型にしたって、馬鹿みたいに高いからね。
心丸はほとんどが借金だったから、仕事を選ぶ訳にはいかなかったんだよ。
でも、人がやりたがらない仕事を確実にやっていうちにね、
おじさんたちの会社は、少しずつ信用を得ていって、
お得意さんもだんだんと増えていったんだ。
最初のうちは借金を返すだけで精一杯だったけれど、
1年半くらい経つと少しずつ利益も出てきてね、
その頃2年生で野球を始めた正一にも
やっと新しいグラブが買ってあげられるようになったよ」

「おじさん、僕もね、
タケル兄ちゃんにキャッチボールを教わって、
今度の誕生日にはね、グローブ買ってもらうんだ、おじいちゃんに」

 タケルくんのお父さんのヒムラーはそれを聞いて、タケルくんのことを思い出したのか静かに目を閉じました。そして、それまでガルル皇帝に向け続けていたライフルを、少し迷った末、そっと自分の脇に下ろしたのでした。皇帝はそれには一瞥もくれずに、また、話を続けました。

「3年生になってね、
正一は、肩の強さと声の大きさを買われたんだろうな。
少年野球チームの監督から
4年生チームのキャッチャーにすると言われてね、
あいつ、本当に喜んでいたよ」

「すごいね、正一くん。
3年生でキャッチャーだなんて」

 皇帝は、静かに微笑みました。

「キャッチャーミットは、チームが貸してくれるんだけれど、
正一は、どうしても自分のミットが欲しいと言ってね、
タカシくん、君と一緒だ。
次の誕生日には、キャッチャーミットを買ってくれと、
おじさん、散々せがまれてね。
おじさん、買ったんだけれどね・・・
そのキャッチャーミット・・・
あんなに欲しがっていたキャッチャーミットだったのに、
正一は、1度も使うことは、なかったんだ・・・」

《つづく》



 ※本サイトの作品は、アルファポリス「webコンテンツ」、にほんブログ村「現代小説」ランキング、人気ブログランキング「現代小説」に参加しています。宜しければ、クリックお願い致します。

 人気ブログランキングへ  にほんブログ村 小説ブログ 現代小説へ


posted by maruzoh at 10:37| Comment(0) | ◆王様 対 皇帝 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

検索
 

title.gif
maruzohは、アートビリティ作家さんを、応援します!

●ご連絡先● 〒165−0023 東京都中野区江原町2−6−7
社会福祉法人東京コロニー アートビリティ事務局内
TEL 03−5988−7155/FAX 03−3953−9461
●営業時間● 平日 9:00〜17:20 / 土・日・祝日 休業日