〜憧話 こころ王国 episode 2〜
王様 対 皇帝 第62回 皇帝の出した条件
タカシくんは、ガルル皇帝のデスクまで進むと続けました。
「ガルルのおじさん。
あの子のお話をして。
あの、写真の子のお話を・・・」
ガルル皇帝は暫く無言でいましたが、やがてタカシくんに尋ねました。
「うん、いいだろう、話そう。
ただ・・、その前に条件がある。
一つだけ、おじさんからの質問だ」
タカシくんがきょとんとした顔つきで聞き入っています。
「さっき架電室でお前は言ったね。
ゲッベルスでさえ答えられなかった質問、
私とココロニア国王の大きな違い。
それが何かを簡単に答えられると・・・」
タカシくんはにこっと笑って、大きく頷きます。
「うん。
答えられるよ、簡単さ」
皇帝だけではありません。さっき架電室で玉の汗を流して思案した挙句、何も答えられなかったゲッベルスや、それを横で冷や冷やしながら見ていたヒムラーも、これには興味深そうに聞き入っています。
そんな大人たちの視線をものともせずに、タカシくんはシャンと背伸びをして言いました。
「ココロニアの王様には、
僕のお父さんや、源さんや、文部大臣さんや、
ほかにもお友達がいっぱいいて、
王様もお友達も、何をするにしても、みんな楽しそうなんだ。
そんなのって、仲間って言うのかな?
でも・・・
さっきまでのおじさんは、全然違った。
おじさんの周りには、いつもいっぱい人がいるけれど、
誰も楽しそうじゃなかったもの・・・
みんなおじさんを怖がって、仲間のふりをしていただけなんだ。
おじさん、教えてくれたよね?
シハイする者と、される者がいるって。
おじさんは周りの人を怖がらせたり、お金をあげたりして、
本当はよそを向きたい人たちを、
無理矢理おじさんの方に振り向かせていた。
でも、ココロニアの王様は違うんだ。
自分の方を向かせてるんじゃない。
みんなの向いている方、向きたい方を見ると、
いつでも、そこに笑ってる王様がいるんだ」
ガルル皇帝はタカシくんの言葉を聞くと、目をつぶったまま天を仰いで、深く、深く息を吸い込みました。そして、それを大きく吐き出してから、目尻の辺りを拳で拭いました。
「恐れ入ったな、返す言葉も無い・・・」
それから皇帝は、あの写真を取り出して少しの間眺めると、皇帝の真正面、デスクのマイクスタンドにそれを立て掛けました。
「約束だ、話をしよう。
正一と、そして、心丸の話を・・・」
《つづく》
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