〜憧話 こころ王国 episode 2〜
王様 対 皇帝 第56回 最上階への援軍
「マレンゴさんっ!」
「おじさんっ!」
MARUZOHくんとタカシくんが、同時に叫びました。その声の先、ドスンという何かが倒れる大きな音がして、2人は思わず両手で目を覆ってしまいました。
「ガ、ガルル・・・」
震える声に、恐る恐る目を開けた2人が見たのは、そのマレンゴの僅か数10センチ横、壁際にひっくり返った大きな革張りの椅子でした。よく見ると、背もたれの丁度真ん中辺りに小さな穴が開いて、煙がうっすらと昇っています。
「ふはははは、どうだ、マレンゴ。
我輩の射撃の腕前は、大したものだろう?
それがわかれば、2度と変な考えは起こさぬ方がいい。
言っておくが、威嚇射撃は2度は無いぞ・・・
このピストルは、伊達でも、脅しでもない。
我輩の過去を守ってきてくれた切り札、
そう、紛れもない我輩の武器なのだから。」
人差し指で小型拳銃をクルクル回す皇帝を、マレンゴは歯噛みしながら睨み続けます。
「ガルル、貴様・・・」
皇帝が、言い放ちました。
「詫びと服従の言葉以外は、無用だ。
考えを改め、我輩流の国家運営の教えを
更に聞きたいと言うのなら別だが・・・」
「だっ、誰が貴様に教えなど乞うものか!」
また掴みかからんとしているマレンゴを庇うようにして、MARUZOHくんが間に割って入りました。
「ガルルさん。
先程の話を聞いて、ふと思ったんですが、
貴方は、最初からこの千年帝国を
数年間で沈めるつもりだったと・・・
それは計画に沿った行動である言っていましたが、
ひょっとしてこれが、初めての船ではないんじゃありませんか」
ガルル皇帝の頬がぴくぴくと痙攣しました。皇帝は、口の端を歪めて笑おうとしているのでしょうが、なぜでしょう、不思議と上手くいきません。
「ふ・・ふははは・・・
と、突然何を言い出すかと思えば、そんなことか・・・
そう、その通り。
ココロニアのお坊ちゃんの推察通りだよ。
我輩の乗る船は、これが2つ目だ。
最初の船は、もう10年以上の昔のことだ。
この千年帝国がこれから沈むのと同じ様に、
深い深い海の底に、沈んでいったのさ。
数々の証拠と、共にな・・・」
「な、なんだって・・・」
マレンゴが肩越しにまたガルル皇帝に掴み掛ろうとするのを、MARUZOHくんが必死に止めています。
と、その時です。廊下でドカドカと大きな足音がしたと思うと、入口のドアが凄い勢いで「バタンッ!」と開きました。
「それまでだっ!」
騒ぎを聞きつけた親衛隊でしょうか?だとしたら、もう一巻の終わりです。ところが、入口のドアに目をやったガルル皇帝は我が目を疑いました。いえ、MARUZOHくんも、タカシくんだってびっくりして目を丸くしています。タカシくんが思わず駆け寄りましたが、ガルル皇帝は身動きひとつ出来ません。
「ゲ、ゲッベルスのおじちゃんっ!
タケル兄ちゃんのお父さんっ!」
それもそのはず、タカシくんの言う通りそこには、ライフルを構えたヒムラーと、お徳用の胡椒の瓶を手にしたゲッベルスが仁王立ちしていたのです。
《つづく》
※本サイトの作品は、アルファポリス「webコンテンツ」、にほんブログ村「現代小説」ランキング、人気ブログランキング「現代小説」に参加しています。宜しければ、クリックお願い致します。

