やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2011年12月20日

王様 対 皇帝 第51回 マレンゴの策略


〜憧話 こころ王国 episode 2〜
王様 対 皇帝 第51回 マレンゴの策略 


 マレンゴが、後ろ手で、こっそりと押したスイッチの下には、「エマージェンシー」、つまり「緊急事態」というラベルが貼られていました。
 緊急事態ですって?これはもう只事であるはずがありません。はたしてこれは何の為のスイッチで、マレンゴは、一体何を企てているのでしょうか。
 もしや、冒険小説にありがちな、自爆装置では・・・
だとしたら、早く逃げないと大変なことになってしまいます。
 いえいえ、ご安心ください。実は、このスイッチ、そんなに物騒な代物ではなさそうです。と、言うのも、マレンゴがスイッチをカチッと入れたと同時に、皇帝執務室のあるこの最上階以外の母艦と巡洋艦に設置された全てのスピーカーから、「ガリッ」というノイズ音が聞こえてきたのです。どうやら、この「緊急事態」というのは、不測の事態の時の為のガルル皇帝から全艦に向けての緊急放送のスイッチだったようです。

「オホンッ」

 マレンゴが、ちょっと緊張して、咳払いをすると、

「オホンッ・・・」

「・・ホンッ・・・」

「・・ンッ・・・」

 その咳払いが、母艦中、巡洋艦中に響いたので、千年帝国の大方の人たちは、「おやっ?」と思い、それまで取り掛かっていた作業やお喋りを中途で止めて聞き耳を立てました。

「ガルル皇帝、あんたは今、言ったな。
ナポレオンもどきのあのお気に入りのポーズは、
実は、その胸のポケットの拳銃を握っていたからで、
その理由は、あんたが今まで誰も信用していなかったからだと」

 突然皇帝を「あんた」呼ばわりする声に、放送を聞く全ての人がドキッとしました。特に客室でタカシくんたちを捜していた親衛隊などは、俄かに色めきたちました。

「あの声の主は、副機関室長のマレンゴに違いない!」

「あの野郎、ついに尻尾を出しやがった。
皇帝侮辱罪でひっ捕らえてやる」

「皇帝執務室だ、急げっ!」

 各階に散っていた親衛隊員が、最上階の皇帝執務室目指して、鋼鉄の階段に向かって勇んで走り出しました。
 でも、マレンゴはどうして自分たちの居場所を知らせるような、こんな馬鹿な真似をしてしまったのでしょう。これでは、親衛隊に向かって「さあ、捕まえに来てください」と言っている様なものです。

「ふはは、笑止千万!」

 ところが、その忠実なはずの親衛隊でさえ、その耳を疑い、その足、気力をも鈍らせてしまうような、そんな思いもよらない話が、まさか皇帝自身の口から全艦中に向けて発せられようと誰が考えたでしょう。

「ふははははは、言ったさ。
言ったとも、マレンゴ。
我輩は誰も、そう、誰一人として信用は、せん。
ふふ、過去に一人だって信用した者はおらんし、
それは、これからとて同じことよ。
我輩が信用できるのは、この自分自身だけだ。
だからこそ我輩は、この銃を、常に握り締めているのだ」

「でも、あんたは、常に言ってたろう?
陸(おか)で食い詰めて乗船してきた俺らは、みんな仲間だって。
大小の違いはあれど、みな脛に傷持つ者同士、
多少のリスクを犯してでも、その仲間を守る為に
皇帝と帝国民、俺ら千年帝国は、全力を尽くそうと・・・
みんなで、俺らのやり方で、幸せになろうってのは、
ありゃあ、全部嘘だったって言うのか?」

 マレンゴの怒鳴るような声に皇帝はにやりと顔を歪めて応えました。

「ふはは、丁度いい、冥土の土産だ。
マレンゴ、さっき小僧に話した話を、貴様にもしてやるとしよう。
この世の中の仕組み、道理についてな。
いいか?この世の中には、常に2種類の人間が存在する。
支配する者とされる者、つまり、皇帝たる我輩と帝国民たる貴様らだ。
そして、いいか、支配される帝国民は、
支配する我輩を生かす為だけに存在している。
言い換えるなら、喰う者と喰われる者だ。
巨大な鯨を生かすには、大量のオキアミが必要という訳だ。
しかし鯨は、決してオキアミ1匹1匹に情けなどかけんものだ。
わかったか?ふはは、ふはははははははは・・・」

 静まり返った母艦、巡洋艦のスピーカーに、狂ったようなガルル皇帝の声が響き渡って、やがてそれは海原の中に消えていきました。
 本当にこれが、信じていた皇帝の言葉でしょうか・・・
何の前触れもなく、降って湧いたような突然の衝撃に、帝国民の誰もが混乱してしまっています。親衛隊員たちの足取りは鈍り、階段の途中で歩を止めるものもいます。この船に乗船する帝国民の誰もが、今まで感じていた漠然とした不安が言葉となり、そしてそれがみるみる形になっていくような、そんな心の痛みを感じて、みな肩を落とし俯いてしまいました。

「おじさんっ!」

 静寂を裂いたのは、いつもの通りその場にそぐわないタカシくんの明るい声でした。

《つづく》



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posted by maruzoh at 08:29| Comment(0) | ◆王様 対 皇帝 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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