〜憧話 こころ王国 episode 2〜
王様 対 皇帝 第30回 皇帝の暴露
ガルル皇帝はまだ気づいていません。
皇帝の肩越しの船窓から見えるココロニアの船団に・・・
ゲッベルスは考えました。ガルル皇帝が振り返ってあの船団を発見したとすれば、勘のいい皇帝のことです。すぐにココロニアの船だと気がついて、部下に攻撃命令を出すに違いありません。でも、そうなったらココロニア船団に勝ち目はありません。もし漁船ばかりのココロニア船団が、武装した千年帝国の母艦や護衛艦に勝てるとすれば、それは相手の虚をつく奇襲以外に方法はないのです。
となれば、ガルル皇帝を今、絶対に振り返らせてはいけません。できる限り発見と攻撃命令を遅らせなければならないのです。
ゲッベルスは、ガルル皇帝の意見を敢えて否定して、話を長引かせようと考えたのですが、先ほどの皇帝の問いに対して、どうにも気の利いた答えが浮かびません。
と、その時です!背後に何か気配を感じでもしたのでしょうか?目の前のガルル皇帝が、なぜか後ろを振り向こうとしているではありませんか。慌てたゲッベルスが、叫ぶように言いました。
「あ、あんたとココロニア国王とは、
すべてが全く、全く違うんだ!」
危機一髪、成功です。ゲッベルスの言葉に反応したガルル皇帝が、顔を引きつらせてゲッベルスを睨みつけました。
「ほう、面白い。
腰抜けゲッペルスが、また我輩に意見するのか?
では、聞かせてもらおうじゃないか。
我輩とあの熱田との違いってやつを」
「あ・・あうう・・・」
根拠があって言った訳ではありません。とにかく皇帝を振り返らすまいと言った言葉でしたので、ゲッベルスは脂汗をたらすばかりで何も応えられません。そんなゲッベルスに向かってガルル皇帝は言いました。
「ゲッベルス、大体貴様は、あの王国気取りのココロニアのことを
どれだけ知っていると言うのだ。
貴様ごときが知り得る情報は、当然我輩も知っておる。
しかしだ、どうだ、こんなことは知っているか?」
ガルル皇帝は得意げに、そして実に下品な目つきでにやりと笑って、ゲッベルスら3人を次々に見回して続けました。
「王国の資産、権利関係は、
全てあの熱田が一人で握っているのだ。
いいか?よ〜く聞け。
あの芸術家集団の版権すらも、
あの熱田が一人で握っているらしいのだぞ。
熱田はな、空想じみた絵空事や青臭い人生訓話で、
あの世間知らずの芸術家連中をいい様に抱きこんで、
その収益の全てを搾取しておるのだ。
あの温厚そうな仮面を引っ剥がすと
稀代の詐欺師が顔を出すというお話だ」
あの人のよさそうなココロニアの王様に限って、そんなことはとても信じられませんでしたが、ココロニアの内情をあまり知らないゲッべルスとヒムラーには、反論のしようがありませんでした。
3人の中、ただひとりタカシくんだけが、燃えるような視線でガルル皇帝をじいっと見据えていました。
《つづく》
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