〜憧話 こころ王国 episode 2〜
王様 対 皇帝 第9回 虹の卵とCD
その晩のタカシくんは、それはもう楽しくって楽しくって、お父さんから何度も「もう寝なさい」と言われても、なかなか寝付けませんでした。
タカシくんは、タケルくんと一緒にお風呂に入って、お母さん特性のカニ汁をたらふく食べると、将棋を教えてもらったり、お父さんの地質調査先で手に入れた日本各地の不思議な石を見せてもらったり、この間約束した、プレゼント交換をしたりしました。
布団の中でだって二人は、お父さんに聞こえないように、そのプレゼントのことを、こっそりと話し合っていました。
「タカシ、僕がもらった あの『虹の卵』な。
あれは、CDっていうやつかもしれないぞ。
CDってのは、音楽とか、絵とか、字とかが入っていて、
虹の卵とそっくりなんだ・・・」
実は、タケルくんには、本当のことがわかっていたのですが、目を輝かせているタカシくんのことを考えると、なかなか本当のことが言い出せずにいたのです。
「ええ?そうなの?
僕、海で見つけたんだ。
虹みたいにキラキラ光ってたから、
虹の卵だとばっかり思ってた・・・」
「CDは、パソコンなんかに入れて見るんだけど、
もし万一、万一だよ。
これがCDで、重要な書類とかだったら大変だから、
王国の大人の人に見せた方がいいと思うんだ・・・」
さすがに1年生のタカシくんと違って、タケルくんはしっかりしています。というか、普通の小学校1年なら、ゲームソフトなんかでキラキラのディスクには馴染みがあるのでしょうが、子どもが1人しかいない王国には、なんと、1台もゲーム機が無かったのです。
「でも、タケル兄ちゃんにあげるもの、
僕、他にはないんだもの・・・
お兄ちゃんからは、こんなに素敵な石、
もらっちゃったのにさ・・・・」
タカシくんは、半べそをかきながら、さっきから右手に握ったまんまだった石をもう1度、顔の前で開いてみました。それは、黒くてピカピカに光った古代人の銛の先についているような石でした。いえ、タカシくんのお父さんが、遺跡の地質調査をした時に出てきたというのですから、まさに、本物の古代人の銛です。
「よおし、じゃあこうしよう。
この虹の卵は、ぼくが一旦家に持ち帰って
何が入っているかをお父さんに確かめてもらう。
もし、本当の虹の卵だったら、ぼくがもらう。
もし、CDで、持ち主がわかったら、持ち主に返す。
どうだい?」
「本当の虹の卵だったらいいなあ・・・」
「ああ、ぼくも虹の卵ならいいなって、そう思ってる」
タケルくんは、CDがよっぽど重要な書類でない場合、例えばあれが、音楽や映画なんかだった時は、タカシくんに、「あれは、本物の虹の卵だったよ」と、言うつもりでした。本当にやさしい、いいお兄ちゃんです。
翌朝、タカシくんとタケルくんは、まるで本物の兄弟のように仲良く、王国から同じ船に乗って小学校へ登校しました。本当に 楽しそうに・・・・
しかし、この平和な物語は、この日の午後から恐ろしいほどの急展開を見せるのです。
《つづく》
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