〜憧話 こころ王国 episode 2〜
王様 対 皇帝 第3回 ガルル・ルイ=ナポレオン・ボナパルト
ココロニア宮殿の国賓用応接室には、様々な絵画や彫刻が所狭しと、それでいてセンス良く飾られています。もちろんそれらは、ココロニア国民である芸術家集団がこしらえたものです。どの作品も、生きる喜びに満ち溢れています。
その作品に囲まれて、皇帝がソファーにどっかと腰掛けています。そしてその脇には、サングラスに制服の屈強なボディーガードが2名無言で立っています。3人から醸し出されるピリピリとした雰囲気は、あたたかなココロニアの作品たちとは、どうにも「不釣合い」といった印象を受けます。
王様が執事長と共ににこやかに入ってきました。
「はじめまして。
ココロニア国王 熱田海蔵(あつたかいぞう)です。
今日は、遠方よりココロニアへようこそ」
王様は、笑顔で皇帝に握手を求め、皇帝もそれに応じました。
「我輩は、千年帝国代表、
ガルル・ルイ=ナポレオン・ボナパルト。
皇帝とお呼びください。
本日はご多忙のところを突然の来訪にも関わらず、
このような席を設けていただき感謝しております」
「ナポレオン5世・・さん、ですか?
ま、まさか本名では、ありませんよね・・・」
執事長の質問に皇帝が答えます。
「ははは・・・
どう見ても私は、日本人でしょう。
ナポレオン3世、シャルル・ルイ=ナポレオン・ボナパルトは、
バイタリティー、決断力、英知、風貌、
そう、その全てが、私と生き写しなのですよ。
しかし、ナポレオンの生まれ変わりというのも
誇大妄想めいて聞こえてしまいそうでしょう?
実の息子ウジェーヌ・ルイ・ナポレオン・ボナパルトは
アフリカ南部で戦死しておりますので、
私は5世を名乗らせていただくことにしました」
なんという自信。自分がナポレオンにそっくりというのならわからないではありませんが、ナポレオンが自分にそっくりとは、なんて厚かましくって、なんて自意識過剰なんでしょう。
「そ、そのガルルというのは・・・」
王様は、恐らくそうではないかな、と思いながらも、皇帝に尋ねてみました。
「うん、いいことを聞いてくださいました。
ナポレオン3世のシャルルというのは、どうも女っぽくていけない。
迫力が無い。そう思いませんか?
やはり、私は迫力を出す為に肉食獣的に、
ガルルルル・・・と」
「ガルルルル・・・とね」
やはり、王様の思ったとおりの回答でした。皇帝は、自意識過剰のナルシストの上に、かなり好戦的な人物、ということでしょうか。
「まあ、挨拶はこのくらいにしておいて、
早速、ビジネスの話に入りましょう」
皇帝は、ボディーガードを下がらせ、王様もそれに習い執事長を下げさせました。
コトリ
執事長が閉めたドアの音がして2人きりになると、皇帝は王様の方に身を乗り出しました。
「これから私が申し上げることは、絶対に口外無用です。
もし、この情報が他に漏れた場合、
それ相応の覚悟はなさってもらわねばなりません」
皇帝は、ゆっくりと話をつづけました。
《つづく》
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