やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2011年10月29日

ツノナシオニ 最終回 約束


ツノナシオニ 最終回 約束 


 サトルくんが僕の声に弾かれたように歩み出て、いきなり僕の手を握った。
 それにつられるようにして、百合子さんも、茂くんも、川崎さんも、みんなが集まってきたんで、僕の周りはまるで押しくら饅頭みたいになってしまった。
 力強く両手で握ったまま、サトルくんが言った。

「俺、誰にも言わないからさ、お前がオニだってこと。
クラスのみんなだって誰も言わないよ、絶対。
だからさ、いろよ、このまま。
帰るだなんて言わないでさ。
俺たちのクラスにいろよ、なあ、桃山」

 百合子さんも僕らの手の上に綺麗な白い手を乗せて続いた。

「そうよ、桃山君。
私、学級委員として、クラスの誰にもそんなこと言わせない。
昨日のは、クラスみんなの見間違いで、誰もツノなんて誰も見ませんでしたって、それで押し通しちゃうのよ。
もちろん、ここにいる父兄にだって言わせやしないわ。
もしこのことがばれることになったら、クラスみんなで集団家出をするって脅しちゃいましょ。
ほかには誰一人ツノなんか見てやいないんだし、全員で口裏を合わせれば絶対大丈夫よ。
だって、せっかく仲良くなれたのに、2か月ちょっとでお別れなんて早すぎるわよ」

「俺も言わないよ、絶対」

「私も言わないから安心して」

「俺たち、仲間だからな」

「みんなで桃山を守ろうぜ」

 狭い路地が、クラスのみんなの声でわんわんと唸っている。
 僕は頭がぐらぐらしてしまって、まるで夢の中にいるようだった。
 僕は幸せだった。
 本当に幸せだった。
 人間って、なんて素晴らしい生き物なんだろう。
 みんなに出会えて、本当に良かった。
 またまた僕の瞳から、大粒の涙がぽろぽろと零れてしまった。
 でも、僕はある決意をしていた。
 僕の真一文字に結んだ口に気がついたんだろう、お父さんが僕を見て、大きく息を吐いてから頷いた。
 先生は無言で、そんな僕らを代わりばんこに見た。
 そして僕は、産まれて初めて、こんなにたくさんの大人や子どもの前で、まるで演説をするみたいに話を始めたんだ。

「み、みんな、本当にありがとう。
僕、心からみんなに出会えて良かったと思ってる。
サトルくん、百合子さん、さっきの言葉、僕は本当に嬉しかったよ。
これからもずっとずっと、友だちでいてね。
先生、僕は先生が大好きだよ。
必ず手紙を書くからね。
それから、佐藤のおじさんや大人の人たちも、お父さんの話を最後まで聞いてくれてありがとう」

「も、桃山ぁ」

 サトルくんの消えちゃいそうな声がしたけれど、僕は続けた。

「僕は帰ります。
僕は、帰らなければいけないんだ。
なぜかって・・・
それは、僕がずっとみんなのことを騙してたからです。
僕は本当はオニだったのに、ツノがないことを良いことに、人間の振りをして、嘘をついて、みんなに近づいた。
ズルをして人間の世界に紛れ込んだんだ。
確かにツノのないオニと人間は見分けがつかないけれど、でも僕は、いつかは人間じゃないことがばれちゃうんじゃないかって、そんな不安がずっと心の片隅にあって、本当に心が休まることなんて、この2ヶ月間、1度もなかったような気がする。
でも、ズルをしたんだから、それは当たり前なんだよね。
もし僕が、これからもズルをし続けて、ずっとここに居て、先生やみんなと、もっともっと仲良くなってしまったとしたら、その不安は、もっともっと、どんどん大きくなってしまうだろうし、みんなの心にもきっと、同じように不安ややましさみたいな、こんなにいやな思いが膨れ上がってしまうに違いないんだ。
僕はこんなに良くしてくれたみんなに、そんな思いをさせたくない。
だから、僕は今日、お父さんと鬼が島に、帰ります。
でも・・・」

「でも?」

 僕は、百合子さんに笑いかけた。

「そう、でもこれは、サヨナラじゃない。
ここからを始まりにしようと、僕は思ったんだ。
島を出る時、お父さんは言ったよね。
太郎には、ツノナシオニだからこそできる何かがあるんじゃないかって。
僕はね、この人間の世界で、自分にしかできないことを見つけたんだ。
島で僕は、もっともっと、もっともっと勉強をしてね、今度は僕、正真正銘のオニとして、オニの僕として、オニと人間の架け橋になる為に、堂々とこの日本に、この街に、このクラスの先生とみんなの前に、いつか必ず戻って来てみせる。
今度は見せ掛けとか、外見で騙すんじゃなくって、その時の僕にツノがあったとしても、無かったとしても、僕、オニの代表として堂々と、正面から来てみせる。
だから、これはサヨナラじゃないんだ。
これからが僕とみんなの始まりなんだ。
僕、みんなに約束するよ」

 僕は自分が引っ込み思案だったことさえ忘れてしまっていた。
 洟を大きくすすり上げたサトルくんが、にこっと笑ってから、やけに大きな身振りでパチパチと拍手を始めた。
 百合子さんが涙を拭ってそれに続いた。
 田中さんも、宮本くんも、みんなが拍手をしてくれた。
 西原先生も、お父さんも、そして、トカゲ眼鏡の百合子パパも一緒だった。
 拍手は高く低く、それはまるで寄せては返す鬼が島の海辺の波の様に、いつまでも途切れずに鳴り止むことはなかった。

 僕の頭のてっぺんが、なぜか、ちょっとムズムズした気がした。

《おわり》





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  児童小説 ツノナシオニ

posted by maruzoh at 13:49| Comment(0) | ◆ツノナシオニ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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