やさしいあなたに、そうでないあなたにも。
                        いろんなあなたに、こころの言葉。













   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町
誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪

2011年10月22日

ツノナシオニ 第25回 存在


ツノナシオニ 第25回 存在 


 もうお父さんのことを物珍しいような目でみる大人は、誰もいなかった。
 あれだけうるさかったアパートの前の路地はシーンと静まり返って、あのトカゲ眼鏡でさえ、少し唇を突き出すようにして、お父さんの話に聞き入っている。
 そのトカゲ眼鏡に、お父さんが尋ねた。

「佐藤さん、あなたがさっき仰った、ツノや尻尾のような余分なものがついていたり、本来あるべきものが欠けているのは人間ではなく、生物として不完全な不良品や欠陥品だというお話、あれはまさに思い上がり、驕りたかぶった発想、西原先生のいう通りの差別以外の何物でもありません。
ところが、あれこそが今の人間社会の傲慢さや冷たさ、危うさや脆さを、実にストレートに言い表している言葉だったのではないかと私は思うんです。
いやいや、失敬しました。
傲慢なのは人間社会だけではありませんでしたね。
私たちオニの社会だって、人間社会と何ら変わりはありません。
傲慢で冷徹、危険で脆弱、それに軽佻浮薄で付和雷同」

 なぜか目を閉じて俯いてしまったトカゲ眼鏡から視線を大人たちに戻して、お父さんは話を続けた。
 
「みなさんは、先程私が話したオニ社会のツノの話を、なんて馬鹿馬鹿しい話だとお思いになったことでしょう。
全く無用なものに、誰もが躍起になっているんですからね。
ところが、私たちオニからすれば、みなさんがせっかくの綺麗な黒い髪の毛を金色に染めたり、大変なお金をかけて無理やり痩せようとしたり、手術によって目や鼻の形を変えるなんてことの方が、よほど不思議です。
幼稚園や小学校への遊ぶ時間や寝る間までを惜しんでの受験勉強なんてのも、全く理解ができません。
いえいえ、勘違いをしないでください。
私はけっして人間社会が間違っているなどと言いたいのではありません。
私が言いたかったのは、誰かの作った無意味な価値観や尺度に、人間やオニは振り回されないで生きるべきだ、ということなのです」

 みんながみんな、黙ったままだった。

「3ヶ月程前までの私たちオニの社会にいた時の太郎は、佐藤さんの言葉を借りるならば、ツノのない欠陥品と呼ばれていました。
ところが、人間社会に出た途端、太郎はなんら欠陥はない普通の、そう、正常な人間の子どもに転じたのです。
それが今度は、あろうことか私の出現と失態によって、太郎はまた人間の社会でも欠陥品とされてしまいました。
でも、太郎は3ヶ月前も、今も、そしてきっと明日も、ずっと変わらずに太郎のままなのです。
内面も、外面も、何ら変わることのない、世界でたった1人の太郎のままなのです。
あのはにかんだような笑顔も、ちょっぴり泣き虫なところも、相手を思いやることのできるやさしさも、太郎は何ひとつ変わっていないのです。
それなのに太郎の立ち位置は、振り子のように正常と欠陥の間を左右に揺れるのです。
変わってしまったのは、価値観や尺度の違う環境と、それに伴う周囲の目だけだと言うのに。
太郎には何の罪もありません。
何一つ罪はないのです。
これは、太郎1人に限った問題でしょうか。
いえ、これは決して太郎1人だけの問題ではありません。
同じことが、オニと人間の社会、ひいては国と国の間や人種、文化や思想にも言えるのではないでしょうか。
価値観や尺度は時代の流れによってまさに千変万化、時代により猫の目のようにめまぐるしく変わり、いえ、意図的に変えられてきました。
しかし、それぞれの人やオニ、1人1人の本質、根っこの部分は、時代の趨勢によってそんな簡単に変わってしまうものではありません。
これまで時代は私たちに、自らにとって都合のいい価値観や尺度を押し付け、それを受け入れることを強いてきました。
しかし、そんな欲得づくの薄っぺらな権力に私たちの存在価値そのものが、この存在自体が揺らぐはずなどないのです。
 私たちは1人1人は、時代や国家、そして種族に流されること無く、疑問を持ち、自らの目で見て、交わり、そして自ら判断すべきです。
 私たちは、誰もが一人残らず、そういう心を持っているはずなのです」

 お父さんの長い話が終わろうとしたその時だった。
 さっきまで僕たちが隠れていた路地のタバコ屋さんの角の向こうから、何かが近づいて来る気配がした。
 そしてそれは、徐々に大きくなって角の辺りまできたけれど、その足音は1つや2つではなかった。

《第26回へつづく》




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  児童小説 ツノナシオニ

posted by maruzoh at 12:34| Comment(0) | ◆ツノナシオニ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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